厚生労働省は令和2年1月23日、介護施設を運営する事業者が職員寮などを建てる場合、かかった費用の3分の1を補助する方針を決めた。2020~23年度の措置とのことである。この方針は外国人の担い手を拡大する意向がある。従来、外国人労働者が住宅を借りようとしても「保証人がいない」と断られるケースが多く就労の促進妨げとなっておりました。外国人の受け入れ拡大への補助の方針には、介護現場の深刻な人手不足がある。
3分の1を補助する対象は食事、排せつなどの介助を24時間態勢で受けられる特別養護老人ホームや自宅で生活できるようリハビリをする介護老人保健施設などで、職員のための寮やアパートの建設、改修を後押しする。
深刻な介護業における人手不足
介護分野は、近年深刻な人手不足を受けて様々な仕組みでの外国人労働者の受け入れが始まりました。しかし、一向に人手不足解消にはいたっておりません。2019年の特定技能1号での介護人材の受け入れは6万人を予定しており、期待されています。
この6万人のボリュームについて他の仕組みと比較してみます。
- 在留資格「技能実習」(2017年11月施行)
介護分野の技能実習の受け入れは、2018年5月に誕生したばかりです。2018年10月末時点で介護技能実習生は247人となっています。
- 在留資格「特定活動(EPA)」
経済連携協定(EPA)は、介護分野における外国人材の受入れ制度として2008年に開始されています。以来、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3国から受け入れてきました。 このEPA介護福祉士候補者には在留資格「特定活動」が付与されますが、2017年度の実績では752人です。 そしてEPA介護福祉士候補者のうち、2016年度の介護福祉士試験合格者の数は104名となっています。
- 在留資格「介護」(2017年9月施行)
介護福祉士試験の合格者が対象の在留資格「介護」の取得者は、制度導入直後であることもあり2018年10月時点で177名となっています。
介護福祉士試験に合格すれば、永住への道も
2019年の改正では、介護分野では特定技能2号が認められませんでした。
しかし介護福祉士試験に合格すれば、特定技能1号から「介護」への在留資格変更が可能となるようです。
特定技能1号で5年働かなくとも、3年働いた後に介護福祉士試験に合格すれば、在留資格「介護」への変更が認められる方向で議論が進んでいます。
介護福祉士試験への合格はなかなかハードルが高いですが、合格することができるだけの優秀な人材は、その後、日本に永住して介護職を全うする道が開けることとなります。
期待される【介護分野における特定技能ビザ】の運用方針のポイント
ここで期待される【介護分野における特定技能ビザ】の運用方針のポイントをまとめておきます。
1|介護業における受入上限人数について
介護業分野における特定技能ビザによる外国人就労者の受け入れ見込みは最大6万人で、これが上限となります。
政府の試算では、介護分野では向こう5年間で30万人の人手不足が生じるため、6万人程度の受け入れでは焼け石に水との指摘もあり、事業者間で限られた外国人枠の奪い合いになる可能性が高いです。
もし在留資格「特定技能」をもつ外国人従業員の雇用をお考えなのであれば、様子見されるよりも早めに人材の確保に乗り出した方が良いでしょう。
2|在留資格「特定技能1号」を取得した外国人がすることができる業務
身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)の仕事をすることができます。 訪問介護などの訪問系サービスの仕事をすることはできません。
3|特定技能1号をもつ外国人を雇用する会社に求められる条件
1 受け入れる1号特定技能外国人の数は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすること
2 協議会の構成員となること (特定技能ビザの出入国管理局への申請時にも、協議会の構成員になったことの立証は不要とされています。)
4|特定技能1号をもつ外国人を雇用する形態
フルタイムの直接雇用に限られ、派遣会社からの派遣は受け入れできません。