外国人労働者の受け入れ拡大の方向性を受けて、企業の従業員が加入する医療保険(健康保険)について令和2年4月1日から、保険が使える扶養家族の条件は「日本国内に住んでいる人」に限定されました。
改正法は、企業の健康保険組合や中小企業向けの全国健康保険協会(協会けんぽ)の加入者の家族を扶養家族に認定する際、「日本国内に住所を有する」ことを要件に加えるというものです。
現行法ではこの「日本国内に住所を有する」の要件がないため、外国人労働者が海外に残した家族(妻や子)も収入面の要件を満たせば扶養家族となることが可能であり、扶養家族が母国で治療を受けた場合、自己負担分を除く医療費は健保組合や協会けんぽが負担することになっています。
企業に雇用される従業員は国籍に関係なく、健康保険組合や協会けんぽが運営する健康保険に加入し、被保険者として保険料を支払います。被保険者の配偶者、両親や祖父母、子ども、孫らは被保険者の仕送りで生計を立てているなどの条件を満たせば、海外に住んでいても保険を使うことができます。
保険を使えるということは具体的には、下記の①②のように日本の社会保障が使えるということです。
①被保険者が外国人でも日本人でも、海外に住む扶養家族が来日して治療を受けた場合の自己負担は原則3割で済む。
②海外で治療を受けた時は、一度全額を自分で支払い、保険適用分について払い戻しが受けられる「海外療養費制度」が使える。
改正法が施行されると、技能実習生や新たな在留資格「特定技能1号」などで日本に来ている外国人従業員が海外に残した家族には保険が適用されなくなります。
これは今後の外国人労働者の増加の影響による医療費の懸念を受けての改正です。
結果として、令和2年4月以降、これまで使えていた健康保険証が使えなくなる人がでてくることが予想されます。
そこで、健康保険の改正の内容と、今から行っておくべきことについて、解説をいたします。
この制度の導入は今年の4月からでもう2か月を切っています。
外国人を雇用している会社は対応が求められます。
単に健康保険から外さざるを得ないだけではなく、新たに母国の社会保険を検討しなければならないからです。
社内にいる外国人の方の扶養状況をチェックしてください。もしも海外に住む被扶養者がいる場合、その方には先に4月から被扶養者から外れる旨を伝える必要があります。
また法改正によるものだということをしっかりと伝えないと不要なトラブルを招いたり、退職してしまったりと問題が起きるでしょう。
同様に日本人であっても、海外に住所を持つ家族が扶養者になっている場合は、その目的を確認してください。留学など認められているもの以外の理由であれば、施行日以後は社会保険の被扶養者から外すことになります。
目的というのは、外国において留学をする学生・海外赴任中に生まれた子供や結婚した配偶者など・ワーキングホリデー、青年海外協力隊などの目的があれば(ビザや出生・婚姻の証明書類で確認)国内に住んでいなくても被扶養者になれます。
また、経過措置として、これらの改正によって被扶養者でなくなる者であって施行日(2020年4月1日の予定)時点で保健医療機関に入院している者の被扶養者等の資格については、入院期間中は継続することができます。
その他、特別な事情がある場合には、都度保険者が判断をすることになりますので、協会けんぽまたは健康保険組合に相談をするのが良いでしょう。
ちなみに、会社としては、この改正によって被扶養者の要件を満たさなくなる者について、扶養削除の届出を行わなければなりません。この届出は、施行日前でも受理されることとなっていますので早めに手続きを行うと良いでしょう。
以上説明しましたように、海外に居住する方は原則として健康保険の被扶養者ではなくなります。外国人のケースが多いと考えられますので、自社の外国人従業員にはその旨を事前に通知して理解を得ることが重要になってきます。