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外国人労働者への給与支払時の注意点

公開日:2019.02.19

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元日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏の逮捕は、世間に大きな衝撃を与えました。

同氏は複数の容疑により逮捕されていますが、その中の1つには、為替相場の変動による個人的に被った損失を日産自動車に肩代わりさせようとしていたことが含まれています。同氏は日産自動車から円貨で役員報酬を受け取っていましたが、生活基盤のある海外で使うためドルに両替する必要があり、その過程で損失が生じたということが損失付け替えの背景にあるようです。

カルロス・ゴーン氏の場合は経営者としての役員報酬ですが、外国人労働者を雇用する場合にも、同様に、どの通貨で給与を支払うのかということや、支払い方等が問題になることがあります。

 

給与は円貨で支払わなければならない

 この点、我が国の労働基準法には給与について「通貨払い」の原則があります。給与を支払う際、社宅の提供や定期券の交付などあらかじめ現物給与で労使の合意がなされている場合を除き、給与は必ず全額を現金で支払わなければならないということです。すなわち、商品券や電子マネーなどで給与を支払うことは許されません。

これに加え、通貨とは「日本円」に限られると法的には解釈されています。外国人労働者の希望があったとしても、ドルや人民元など外国の通貨で支払うことはできません。実務上の現実的な対応としては、会社から本人へは、いちど日本円で確実に支払った後、本人が外貨に両替するのを必要に応じ会社がサポートするという形になるでしょう。

 

給与は直接本人に支払わなければならない

 労働基準法には給与について「直接払い」の原則もあります。これは、給与は必ず労働者本人に支払う必要があるという意味です。

外国人労働者から、給与の一部を母国の親族宛に送金してほしいと頼まれる場合があります。確かに、対応してあげることが本人のためになるかもしれませんが、法令順守という観点はもちろんのこと、送金未着など何かあったときのトラブル防止のため、やはり一度全額を本人に支払った上で、必要に応じ送金手続をサポートするという形が良いでしょう。

 

給与を預かる場合も注意が必要

 さらに、労働基準法には給与について「全額払い」の原則があります。これは、社会保険料や源泉所得税など、法律上の根拠がある場合を除き、使用者による勝手な給与の天引きは許されないということです。

罰金や強制貯蓄などが許されないことはもちろんですが、本人から「帰国時まで生活費以外の給与を預かっておいてほしい」という希望があった場合も違法となってしまいます。

ただし、この論点に関しては例外があり、会社と労働者代表が労働基準法の定めに基づき「労使協定」という協定書を取り交わせば、本人の希望による社内預金は合法となります。ですから、もし外国人労働者の給与の一部を会社が預かる場合は必ず労使協定を結ぶようにしましょう。

 

まとめ

 外国人労働者への賃金支払いも、日本人労働者への賃金支払いと同様に、労働基準法のルールに沿って行わなければいけません。ルールを守ったうえで、必要に応じ、外国人労働者の希望に応じて便宜を図るという形がバランスの取れた対応ということになるでしょう。

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投稿者について
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榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。