法務省が難民受け入れ拡大を検討しているとの報道がされています(時事通信)。しかし、今回日本政府が「拡大」を検討しているのは、出身国での迫害を逃れて隣国等に避難している難民(例えばタイにいるビルマ難民)を改めて日本が受け入れるという「第三国定住」枠に過ぎません。
そもそも日本の難民認定率は他国に比べて極端に低い状況であり、典型的な難民と言えるロヒンギャ族やシリア人ですら大半が難民不認定となっています(難民支援協会「日本に来るのは「偽装難民」ばかりなのか?難民認定、年間わずか20名の妥当性を考える」)。
難民認定者数について
2017年の難民認定率は、なんと0.2%。2017年の難民申請の処理数1万1361人(同年の申請者は1万9628人)に対し、難民認定を受けた人はたったの20人でした。難民認定は受けられないものの人道的配慮のため在留が認められた45人を加えても65人しか保護されず、保護率は0.6%に届きません(法務省入国管理局「平成29年における難民認定者数等について(速報値)」)。
難民ビザ!?
時に、難民認定を受けていないにもかかわらず「難民ビザを取った」と称する人がいます。なぜでしょうか?
それは、適法な在留資格を有する人が難民申請をした場合、法務大臣が難民申請について結論を出すまでの間「特定活動」の在留資格が与えられ、難民申請から6カ月を超えて以降は就労を許可する取扱いがなされているからです。これを「難民ビザ」と通称する人が散見されますが、難民認定された人や人道上在留が特別に許可された人に与えられる「定住」や「特定活動」の在留資格とは全くの別物であることに注意が必要です。難民申請者に与えられる「特定活動」の在留資格は、法務大臣が難民認定について判断を下すまでの間の期間限定のものに過ぎません。仮に難民申請中に就労許可を受けることができたとしても、99%以上の人は難民認定されないのです。
残念ながら今の日本で難民申請を行ったとしても、難民不認定処分・難民不認定に対する異義棄却裁決ののち就労許可を取り消され、あるいは退去強制令書に基づき入管に収容されて家族とも離れ離れになるなど、思いもよらない過酷な境遇に追い込まれるケースが少なくありませんので、注意が必要です。
また、適法な在留資格を有する人が難民申請をした場合でも、留学の在留資格で日本に滞在する人が退学や卒業の後に難民申請を行った場合や、技能実習生が実習先から失踪したのちに難民申請を行った場合にも、原則として就労が許可されない取扱いになりました。(法務省入国管理局「難民認定申請を考えている留学生の皆様へ」 、同「難民認定申請を考えている技能実習生の皆様へ」)
このように、日本で難民申請をしたとしても圧倒的多数の人が難民不認定処分を受け、就労できなくなってしまいます。
難民申請者の雇用について
では、難民申請者を雇用することは避けたほうがよいのかというと、決してそういうわけではありません。
難民申請者の中には、出身国で政治活動や社会運動に参加していた人や、高い教育を受けて専門的な職業に従事していた人など、バイタリティーあふれる人が少なくありません。また、避難先にわざわざ日本を選んでいるだけあって、日本社会に対するあこがれや愛着の念を持つ人が多い印象を受けます。難民申請者の熱心な仕事ぶりに感銘を受けて入国管理局への嘆願書の作成に喜んで協力してくださる雇用主もいます。その人に対する迫害のおそれがなくなって出身国に帰ったのち、日本での人間関係を生かして新たなビジネスを立ち上げる元難民もいます。もちろん人それぞれではありますが、職場で有望な働き手として活躍している難民申請者は大勢います。
その人が就労可能な在留資格を持っているかどうかを在留カードの記載により確認することはもちろん必要ですが、難民申請の結果を待ちながら日本で働いている人を職場の仲間として受け入れることには大きな意味があります。