外国人は、在留資格の範囲内で、定められた在留期間に限って在留活動(就労等)が認められています。
したがって、外国人を雇用する場合は、在留資格の有無、在留資格の種類、在留期限を確認し、就労の可否を判断する必要があります。
仮に、それらの確認を怠り、就労させてしまった場合、外国人の不法就労を手助けしたという「不法就労助長罪」に該当し、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれの併科」という罰則を受ける可能性があります。
そのほか、他の外国人従業員の在留申請に悪影響を及ぼすこと、外国人の不法就労は社会的問題に発展するケースも多く、社会的信用の失墜にも繋がるなど影響の範囲は多岐にわたるでしょう。
しかしながら、外国人雇用を敬遠する必要はありません。多言語を扱えること、日本人には無い知識・技術を有していること、バイタリティーに溢れていること、など会社にとって外国人雇用が有利に働くことが非常に多いことも確かです。
優秀な外国人に働いてもらうためにも、正しい雇用のルールを押さえた上で採用に臨むべく、ここでは在留カードから就労できるかどうか、を解説いたします。
在留資格制度
日本では、外国人の出入国を管理する方法として、「在留資格制度」を採り入れています。
アメリカ、フィリピン、韓国なども同様の制度を採用しており、数種類の「在留資格」をあらかじめ規定し、これらの在留資格に合致しない外国人の上陸を認めないこと、在留を認めないこととしています。
「在留資格」とは、外国人が日本で行う活動や身分・地位を類型化したものを言い、これを一般的にビザと呼んでいます。
例えば、「日本の大学、短期大学、高等学校、専修学校に通って教育を受ける」という活動には、「留学」という在留資格が、「日本の企業で経営者として事業の経営を行う」という活動には、「経営・管理」という在留資格がそれぞれ付与されます。
現在、日本では29種類の在留資格が規定されており、在留資格に当てはまらない場合には、外国人の上陸を認めないこと、在留を認めないこととされます。
また、在留資格一つひとつに、就労できるかどうか、どのような仕事なら就労できるか、などの特徴があります。
パスポート
パスポートとは、所持人の国籍及び人物を証明し、また、発行国に帰国できることを約束し、渡航先国に対して、入国、滞在についての便宜供与を依頼する国家の公文書で、おおまかにいえば、国際的に通用する身分証明書のことです。
パスポートを紛失すれば身分を証明できませんし、有効期限が切れてしまえば、身分証明書としての役割を失います。
パスポートの再交付や更新は、発行元の国や、日本にある大使館、領事館で可能です。外国人を雇用・管理する場合、常に有効なパスポートを保持しているように注意してください。
在留カード
入管法に基づく法務省出入国在留管理庁が行う情報の把握と、外登法に基づく市区町村が行う情報の把握を一つにまとめ、在留状況をこれまで以上に正確に把握することを目的に在留カード制が導入されました。
在留カードとは、中長期わたり適法に在留する外国人に対して交付する証明書で、交付を受けた外国人は在留カードの携帯義務が生じます。
在留カードの交付を受ける外国人は中長期在留者に限られます。言い換えれば、中長期在留者ではない場合、在留カードを保持していません。
在留カードの交付を受けない外国人とは、具体的には次の①~⑥を指します。
① 「3月」以下の在留期間が決定された人
② 「短期滞在」の在留資格が決定された人
③ 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
④ ①から③の外国人に準じるものとして法務省令で定める人
⑤ 特別永住者
⑥ 在留資格を有しない人
在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否が記載されています。
常に新しい情報が反映されていることが求められますので、記載事項に変更が生じた場合には、出入国在留管理庁もしくは、市区町村にて所定の手続きが必要です。
なお、偽変造防止のためのICチップが搭載されており、カード面に記載された事項の全部又は一部が記録されます。
就労の可否の判断
新規で採用、雇用を検討される場合は、下記に留意してください。
1、有効なパスポート、在留カードを保有していること
パスポート、在留カードが確認できない場合、採用・雇用を控えていただくことをお薦めします。
“パスポート、在留カードを紛失している”、“有効期限が切れている”、“在留カードに穴が開いている”などの場合は有効ではあるとはいえません。
また、パスポート、在留カードの有効期限満了について、国や行政機関から通知が無いことに注意してください。
在留カードの有効期限が切れてしまえば、その日から不法滞在に該当しますし、就労を継続させた場合、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
受け入れる企業としては、雇用期間中、外国人のパスポート、在留カードが常に有効であることに留意ください。
補足①
在留カードの代わりに、「特別永住者証明書」を保有している外国人がいますが、就労に制限はありません。また、「特別永住者証明書」の携帯義務はありません。
補足②
在留カード、特別永住者証明書の偽変造が問題になっています。下記サイトより、偽変造されていないかについて確認が可能です。
※在留カード等番号失効情報照会
2、在留カードの記載欄である就労制限の有無を確認する
29種類ある在留資格を把握し、それぞれの就労制限を理解することは難しいかと思います。
そのため、在留カードの記載事項の「就労制限の有無」から、一先ず、その可否を判別することとなります。
■就労制限の有無の記載が“就労制限なし”の場合
業務内容、労働時間に制限はありません。該当する在留資格は、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」です。
■就労制限の有無の記載が“就労不可”の場合
原則的に就労できません。ただし、資格外活動許可を受けている場合に限り、一定の制限の下、就労できる可能がありますので、在留カードの裏面に記載のある資格外活動許可欄をご確認ください。
①「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」
週28時間の労働に限り、就労が認められます。もっとも、週28時間の労働時間は、複数の勤務先の合計の就業時間であることに留意ください。業務内容に制限はありません(風俗営業を除く)。該当する在留資格は、「留学」、「家族滞在」、「特定活動」などです。
なお、在留資格「留学」の場合、学則に定められた長期休暇の期間に限り、1日8時間まで労働時間が拡充されます。言い換えれば、学則に定めの無い長期休暇の場合は、労働時間が拡充されないため注意ください。
②「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」
パスポートに添付された資格外活動許可書をご確認ください。
■就労制限の有無の記載が“在留資格に基づく就労活動のみ可”の場合
それぞれの在留資格で定められた範囲にて就労が可能です。就労時間に制限はありませんが、業務内容に制限があります。
■就労制限の有無の記載が“指定書により指定された就労活動のみ可”の場合
パスポートに添付された指定書(別記第7号の4様式」をご確認の上、就労の可否を判断します。該当する在留資格は、「特定活動」です。
さいごに
本当に就労させてもいいのか不安、分からない、など少しでも疑問点や迷いがあれば、行政に相談してもいいと思います。
近時では、外国人雇用について行政も注力しており、地方入管や、厚生労働省の外国人雇用サービスセンターのほかに、新たに外国人在留支援センターが設置されるなど、様々な相談窓口が用意されています。
外国人雇用がすでに当たり前になりつつある一方で、知らずに不法就労に加担していた、というケースも増えています。
十分に注意を払い、正しい雇用のルールを押さえた上で採用に臨んでください。