日本に滞在する外国人も、日本人と同じように社会保険に加入しなければなりません。
会社に所属している外国人の場合、会社が社会保険の手続きをしていることから、あまり問題になりませんが、留学生などのように自身で社会保険の手続きをしなければならない場合、手続き自体を失念しているケースがあります。
ビザの申請では、この社会保険の手続き状況も審査に含まれますが、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更申請時に、これらの書類は必須ではありません。
※後日、入管から書類の提供を求められることもあります。
一方で、「留学」から「特定技能」への変更申請には、国民健康保険、国民年金保険の加入・支払い状況を示す資料の提出が必須です。
今回は、特に支払いモレが多い国民年金保険を支払っていなくても特定技能が取れるかどうか解説します。
国民年金保険とは
まず初めに、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本人、外国人は、公的年金に加入しなければなりません。
公的年金とは、自身や家族の加齢、障害、死亡などから生じる生活上のリスクに備えるべく、あらかじめ保険料を納め、必要な時に給付を受けることができる、いわば社会全体で支える国の保険です。
多くの方は、老後に受け取るお金、というイメージを持っていますが、そのほかにも、生涯を負ってしまったとき、家族を亡くなってしまったときにも、給付を受けることができます。
次に、この公的年金の加入については、その方の職業から第1~3号被保険者の3種類に分類され、それぞれ加入する年金制度、加入方法、保険料の納付方法が異なります。
なお、たくさんの年金制度に加入することで、税制優遇を受けられる、万が一のリスクのときに多くの給付を得ることができますが、最低限、国民年金と、第2号被保険者にあっては、厚生年金、共済年金には加入しなければなりません。
このうち、留学生は、第1号被保険者に分類されることから、国民年金に加入することとなりますし、第2号被保険者だったが会社を退職した場合には、第1号被保険者に加入する手続きを行うこととなります。
国民年金保険の手続
第1号被保険者が国民年金に加入する手続きは、住まいの市区役所、町村役場や年金事務所にて行います。
※年金事務所は、公的年金制度を運営している日本年金機構が、全国約300か所に設けています。
このとき、保険料を納めることが経済的に困難な場合には、後述するように保険料が免除または納付猶予することができます。
あらかじめ手続しておく必要があるため、20歳以上で新たに来日した場合は、来日してから速やかに、第2号被保険者だったが会社を退職した場合は、会社を退職して速やかに住まいの市区役所、町村役場や年金事務所に出向きましょう。
つぎに、国民年金保険の支払い方法についてです。
第1号被保険者の保険料は、月額16,540円です。保険料の納付期限は翌月末ですが、保険料をまとめて前払いすると保険料が割引されます。
口座振替、クレジットカード、納付書での納付など支払方法は様々ありますが、納付書での納付を選択している場合、4月頃にまとめて納付書が届きますので、紛失しないように保管し、それぞれの期日までにコンビニなどで支払うようにしください。
特定技能の申請で必要となる書類
特定技能の申請では、「被保険者記録照会回答票」、もしくは「国民年金保険料領収証書の写し(過去2年間分)」が必要です。
被保険者記録照会回答票は、年金事務所で発行することができ、自身の現在までに加入していた年金制度、厚生年金に加入していた方はその時の会社名、加入期間および加入月数などが詳細に記載されております。
また、こちらの書類から未納分を知ることができます。
学生納付特例とは
先ほど述べた通り、保険料を納めることが経済的に困難な場合には、保険料が免除または納付猶予することができます。
代表的なものは、学生納付特例制度です。
学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられており、本人の所得が一定以下の学生が対象となります。
猶予は、国民年金保険料を支払わない、という点では未納と同じですが、手続きを踏み支払わないことを認められているため、その性質が異なります。
なお、猶予を受けていることは、被保険者記録照会回答票からも知ることができます。
お金が無いから支払わないと勝手に決めつけるというのと、年金事務所へ相談し、免除、猶予してもらうのでは入管の心象も大きく違います。
必ず、年金事務所へ相談するようにしましょう。
免除・猶予できず、どうしても未納の場合
在留申請では、未納が無い状態が望ましいです。
国民年金保険料を支払えない場合、可能な限り、免除・猶予制度を活用することをお薦めしますが、どうしても未納という状態もあるかと思います。
その場合、「次の更新時までに未納分を支払う」という誓約のもと、許可を得ることもあります。
もちろん、絶対に許容されるわけではありませんが、多くの留学生が国民年金を未納としている現状、このような形も認めているものと考えられます。