はじめに
日本では近年、日本人と外国人が結婚する「国際結婚」が増えています。 また、グローバル化が進む現代では、日本国内で外国人同士が結婚する または 海外で日本人同士が結婚する「異国結婚」や、急な海外転勤も珍しいことではありません。 こういったことが起きた場合、国によって国籍についての考え方が違うため、生まれた子供の国籍がどこになるのか迷うことがあるかもしれません。
そこで今回は、世界で採用されている国籍付与の考え方について調べました。
国籍付与の考え方
まず、世界各国の国籍付与の考え方は、大きく2つに分かれます。 1つは、「両親の国籍は関係なく、その国で生まれた子供には生まれた国の国籍を付与する」という考え方で、もう1つは「出生地は関係なく、両親の国籍を重視して子供に国籍を付与する」という考え方です。
出生地主義・生地主義
1つ目の「両親の国籍は関係なく、その国で生まれた子供には生まれた国の国籍を付与する」という考え方を「出生地主義」または「生地主義」と言います。 アメリカ・カナダ・ブラジル・メキシコをはじめとする北米・南米に多い考え方で、世界のおよそ20%が出生地主義を適用しています。 出生地主義を採用しているA国において、どちらともA国籍ではない夫婦の元に出生した子供がいた場合、両親の国籍に関係なく子供にはA国籍が付与されます。
但し、出生地主義を採用している国の多くは外交官のように外交特権を有している者の子供にはこの制度を適用していません。 したがって、どちらともA国籍ではない外交官の夫婦の元に出生した子供は、A国で生まれたとしてもA国籍は付与されません。
血統主義
上記の出生地主義とは反対に、「出生地は関係なく、両親の国籍を重視して子供に国籍を付与する」という考え方を「血統主義」と言います。 但し、子供の父母がわからない・父母が無国籍であるなど、子供が無国籍になる可能性があるときについては、子供が無国籍となるのを防ぐために、補足的に出生地主義を採用している国が多くあります。
血統主義は大きく2種類に分けられます。
父系優先血統主義
父母の国籍が異なる場合、母の国籍に関わらず父親の国籍を子供に付与するという考え方です。 この場合、B国籍の父親とC国籍の母親の間に生まれた子供は、出生地・母親の国籍ともに関係なく父親と同じB国籍となります。 インドネシア・スリランカ・イラン・イラクなど、アジアの一部(特に中東)で適用されている考え方です。 以前は日本と韓国もこの考え方を適用していましたが、それぞれ廃止しています。
父母両系血統主義
この考え方は、父または母いずれか・または両方がD国(=父母両系血統主義を適用している国)の国籍を持っていれば、生まれた子供にも出生地に関係なくD国籍を付与するという考えです。 日本のほか、中国、韓国、イタリアをはじめ、多くの国がこの考え方に基づいて子供の国籍を決定しているため、世界的に見ると最もポピュラーな考え方と言えます。
日本の場合、日本国籍を持たない両親の元に生まれた子供についても両親と同様に在留資格申請が必要となります。決められた日までに申請を行わないと不法滞在になってしまうので、忘れずに行ってください。
また、フランス、ドイツ、オーストラリアをはじめ、条件付きで父母両系血統主義を採用している国もいくつかあるので、該当する方は条件の確認が必要となります。
日本では国籍の選択が必要
日本では国籍を複数持つ「重国籍」が認められていない為、国際結婚で出生した人や出生地主義で国籍を付与されたなど、さまざまな事情で重国籍となっている人は、日本の国籍と外国の国籍、どちらを選ぶかを決められた日までに選択しなければいけません。もしも決められた日までに選択しなかった場合、法務大臣から催告が行われます。この催告に応じないと、最悪の場合は日本国籍を失うことになります。
2022年4月に法改正が行われたため、現在は誕生日によって選択の期限が異なります。
・2002年4月1日までに生まれた方 →22歳の誕生日までに(法改正前のルール)
・2002年4月2日~2004年4月1日までに生まれた方 →2024年3月31日までに
・2004年4月2日以降に生まれた方 →20歳の誕生日までに
国籍の選択で日本国籍を選んだ場合、 ①「外国国籍の離脱(国籍法14条2項前段)」または②「日本国籍の選択宣言(国籍法14条2項後段)」のいずれかを行う必要があります。 ①を行った場合は重国籍が解消されますが、②を行った場合には国籍の選択義務の履行はされているものの、もう一方の外国籍を離脱する努力(国籍法16条1項)を行う必要があります。
外国籍を選んだ場合、 ①「日本国籍の離脱(国籍法13条)」または②「外国の法令による外国国籍の選択(国籍法)」を行い、日本との重国籍を解消します。
最後に
国籍のルールについて、世界には大きく分けて2種類あることがお分かりいただけたかと思います。 今回は分け方について調査しましたが、日本や中国のように重国籍を認めていない国、オーストラリアやアメリカのように重国籍を認めている国など、国籍の持ち方についてのルールも細分化されているほか、国籍の決定年齢も国によって異なります。 日本では成人年齢引き下げによって、国籍の選択期限が2年早まる法改正が行われました。世界各国でも法改正は行われるので、関係する国の国籍に関するルールについては知っておく必要がありそうです。
また、2019年にはトランプ前大統領が出生地主義の撤廃を検討していました。こういった検討が行われて、急に国籍付与の考え方が変わってしまう可能性もあるので、国際結婚や異国結婚で子供を産むことを考える際にはその可能性も視野に入れる必要がありそうです。