技能実習生とは?
日本の工場や畑、牧場などで、たまに外国の方を見かけることがあります。
彼らの多くは『技能実習生』と呼ばれる、各国の送り出し機関の厳しい審査を勝ち抜いて日本にやってきた優秀な若者です。
彼らは出身国の発展に必要な技術や技能・知識を日本で学び、出身国へ持ち帰ることを目的として働いています。
トラブルなく実習を終える技能実習生がいる傍ら、ニュースで技能実習生が起こすトラブルや、技能実習生が苦しんでいる様子が報道されることがあります。
技能実習制度とは?
1993年に生まれた、発展途上国が必要としている技術や技能・知識を各国の送り出し機関から送られてくる技能実習生に学んでもらい、技能実習生の出身国の産業発展に貢献してもらうための制度です。
技能実習は最長5年間、受け入れ企業が作成した技能実習計画に基づいて行われます。
令和4年6月末現在における在留外国人数296万1,969人(特別永住者含む)のうち、32万7,689人が技能実習生となっており、在留資格別で見ると永住者の次に多い在留資格です。
令和3年6月末からの1年間で来日した技能実習生の出身国はベトナムが半数以上を占めており、続いてインドネシア、中国が多くなっています。
技能実習生を守るためのしくみ
技能実習生は日本人労働者と同じように扱うこととなっています。
そのため、日本人労働者労働者と同様、労働時間は原則として1日8時間、週40時間まで、最低賃金を下回らない給与、社会保険・労働保険に加入し、適用されることが保証されます。
これとは別に、技能実習生向けの保険も用意されているので、保険に加入して万一の病気やケガでも補償を受けることが可能となっています。
また、技能実習生の生活に最低限必要なもの(家具等)や住居は受け入れ先で用意することとなっているため、技能実習生が住居に困ることはありません。
技能実習受け入れ企業には実習生の日常生活全般の指導や管理を行う『生活指導員』を配置することが義務付けられています。生活指導員の業務には技能実習生の相談に乗ることも含まれていますので、何かあれば生活指導員に相談することも可能です。
上記事項が守られていないと感じた場合や、その他法令違反と思しき行為を受けたと感じた場合は、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に通報・申告することができることとなっており、相談に応じる体制も整備されています。
このように、労働面でも精神面でも技能実習生をサポートする体制が整えられているため、実習生は安心して日本で生活できるようになっています。
それでも起きてしまうトラブルの事例
失踪
令和4年の上半期だけで、3,798人の技能実習生が失踪しています。
失踪にも『急に国に帰りたくなった』、『パワハラが辛い』など様々な理由がありますが、法務省の調査によると、失踪理由の7割が『低賃金』となっています。
最低賃金を下回る低賃金は法令違反ですが、最低賃金を下回らない低賃金は技能実習生側の想定を下回った場合に出てきがちな理由です。
受け入れ企業側と技能実習生側で賃金に大きな相違がありそうな場合は、賃金制度について詳しく説明するなど、相違をなくすことが大事かと思います。
ハラスメント行為
多いトラブルとして、パワーハラスメントが挙げられます。
日本語が通じないことを理由に『体で覚えさせる』ために暴力をふるう、外国人だからと人種差別を行う、暴言を浴びせてうつ病を発症させるなど、ハラスメントには様々な事例があります。
技能実習生は日本人労働者と同じように扱うルールとなっているので、外国人だからと不当な扱いはせず、『うまく伝わるように教える』『伝わらなかった場合、どこが伝わらなかったのか確認する』というように、指導担当者は技能実習生に寄り添って指導することが大切かと思います。
犯罪
高い志を持って日本にやってくる技能実習生が多い一方で、その中にはどうしても犯罪に手を染めてしまう技能実習生もいるようです。
技能実習生は前述した通り優秀な人材なので、最初から犯罪を目的として日本へ来る方はほぼいないと考えられます。
犯罪に手を染めてしまった技能実習生も、元を辿ると『低賃金』や『職場で受けるストレス』が原因のこともあります。
犯罪に手を染めてしまったのは本人に原因があるのは勿論ですが、もしそういったトラブルが起きてしまった場合は受け入れ企業に問題があることもあるので、一概に本人だけが原因とは言いづらいでしょう。
トラブルを防ぐためには
技能実習生は言葉も文化も違う異国で働くということもあって、多くの不安を抱えています。
時にはその不安がトラブルに繋がってしまうこともあります。
トラブルを防ぐためには双方の信頼関係が不可欠です。
例えば、日頃から受け入れ企業全体で技能実習生を気に掛けることによって、いざという時に相談しやすいという安心に繋がります。
2022年現在、ZoomやSkypeなどのリモートで面談できるツールが整備されているので、ネット環境を持っている技能実習生とであれば入社前に面談することが可能となっています。
例えば、受け入れ企業が技能実習生に対して雇用条件通知書を詳しく、嚙み砕いて説明することによって、労働条件についての『こんなはずじゃなかった』を避けることができます。
そして、雇用契約書を取り交わした後でしたら、技能実習生が抱いている不安や疑問を直接受け入れ企業に質問し、回答を得られることによって不安や疑問が解消できるようになるのではないでしょうか。
上記のように、トラブルを避ける方法はいくつかあります。
ここに記載していない方法でもトラブルを避けることができると考えられます。
一番は、受け入れ企業側と技能実習生側の双方が歩み寄り、信頼関係を築くことだと考えます。