今回インタビューを受けていただいたのは、司法書士としてご活躍されている碓井孝介先生です。先生に司法書士と経営者の関係性についてお話を伺いました。
碓井孝介司法書士
1984年北海道札幌市生まれ。司法書士。
司法書士とは
司法書士とは、不動産登記や商業登記の業務を主としながら、成年後見制度や簡易裁判所における訴訟代理や供託業務を行います。
商業登記は、会社の名前や所在、役員等を公示する制度です。登記することにより、その記録は一般の方に公開され、取引の相手側が安心して取引できるようになります。
司法書士とのつながり
―どのような形で司法書士への依頼が多いのでしょうか。―
税理士からのご紹介が多いです。会社を作ろうと思っている方は、どこへ行ったらわからないと思います。会社経営をしていく上で、真っ先に思い浮かべるところだと税金ですね。ただ税理士でも業務範囲があります。会社を作るための登記というのは司法書士の分野なのです。そこでお客様とつながります。もちろん逆のパターンもあります。設立後の税務がわからないということで、税理士を紹介することもあります。
―経営者の方が士業との係わり合いを持つ場合どういった形でしょうか。―
他にも士業というのは弁護士や社会保険労務士、税理士、行政書士、中小企業診断士等、たくさんいらっしゃいます。会社を作ろうと決意されたのであれば、なにかしらの士業の方一人でも良いので、つながりを持つことをお勧めします。
会社を運営すると税務や法律・労務等で困ることがあると思いますが、相談できる士業が一人でもいることで、他の分野の場合でも様々な士業のご紹介を受けることができます。
―司法書士への依頼はどういったものがありますか。―
会社設立後に会社の内容を変更しようとすると登記が必要になります。すると司法書士がその変更登記をします。簡単な登記であればご自身でやってしまう方もいらっしゃいますが、難しいものは司法書士に依頼がありますね。この場合も税理士からのご紹介が多いです。司法書士は会社の内容に変更があったときに関わります。しかし税理士の場合ですと、いろいろな税務の相談が発生する可能性があるので顧問になることが多いようです。つまり司法書士は点で、税理士は線で関わります。
簡単な登記であればご自身でやってしまうこともありますが、依頼することで新たな発見をすることができます。例えば、変更したい箇所以外のところも実は変更しなければいけない、そんなこともありますね。
また、司法書士に依頼が多い仕事は、本店移転とかですね。起業される方の多くは、はじめ自宅を会社所在地にしますが、軌道に乗ると会社を移します。そのときにも登記が必要です。
あとは増資関連です。募集株式発行にも登記は必要ですから。
募集株式発行とは
募集株式発行とは、新たに株式を発行して資金調達する手段です。
いずれもやはりご紹介の案件が多いです。反対に飛び込みで依頼が来る案件は身を構えてしまいます。飛び込みということは、顧問税理士等いない会社ですから少し不安になってしまいます。士業側から見たら何かしらリスクを負っている会社なのではないかのか、と思ってしまいます。
―会社設立での注意点は?―
法人でよく、合同会社をつくろうとしている方が多いですが合同会社は株式会社とは異なり、持分会社というものに区分されます。
【イメージ】
株式会社 |
持分会社(合同会社) |
株式(所有と経営が分離) |
持分(所有と経営が一体) |
A、B、Cが所有 D、Eが経営 |
A、B、Cが所有 A、B、Cが経営 |
Aが亡くなった・退社した場合・・・ 株式は相続・譲渡される →事業は承継される →経営に支障はない |
Aが亡くなった・退社した場合・・・ 持分は払い戻しされる →残りのB、Cが出資額をAに払い戻す →経営に支障あり |
株式会社の場合だと、例えばその方が亡くなってしまった場合に相続が発生します。しかし持分会社の場合は、その方が亡くなった際に、会社からお金を払い戻すことになります。つまり事業承継に困難を極めます。また持分会社の場合、例えば3人でスタートし、1人がやめるとなった場合、同じく持分の1/3を払い戻ししていくことになります。持分会社(合同会社)の設立は安いけど、そういったリスクを知らないかと思います。合同会社は家族とか資産管理会社とかは相性良いですが、他人と一緒に経営するにはあまり向かないのです。こういったことは、設立前に士業へ相談することをお勧めします。合同会社から株式会社に変更することは可能ですが、ものすごく大変です。
法律や税務、労務など、会社を運営するとたくさんの疑問点が発生すると思います。ネットや本で情報を得ることも大事なことですが、その際は、ぜひ士業を頼ってください。
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