冒頭
日本再興戦略2016において、成長産業の一つとして注目されている分野「スポーツ」。老若男女問わず、誰もが楽しめるスポーツに今テクノロジーが新しい未来を創っていることをご存知でしょうか?SportsTech最前線!日本のスポーツの未来をつくる注目のスタートアップが一同に渋谷に集結したイベントのレポートをお届けします。
Wake up!とは?
アーリー・ミドルフェーズの国内テクノロジースタートアップを中心としたブランディングイベントプラットフォーム。株式会社ネットジンザイバンク(2018/3/19より『for Startups株式会社』へ社名変更)が企画・運営している。
・株式会社ネットジンザイバンク(2018/3/19より『for Startups株式会社』へ社名変更)
⽇本から世界で勝てるスタートアップ企業を1社でも多く輩出することを⽬的に2016年9⽉に創業。
国内No.1成⻑産業⽀援プラットフォームの実現を⽬指して、『for Startups』というビジョンのもと、国内外を代表するVCとの協業モデルを特徴とし、国内有⼒スタートアップ企業を中⼼に累計70名以上のCxO/役員の参画を⽀援。
※実績として『Japan Headhunter Awards』にて最⾼の名誉である『Headhunter of The Year』を2年連続で受賞。また、2015年より『SLUSH TOKYO/SLUSH ASIA』を4年連続で協賛・運営サポート等、今後もマーケットの発展に貢献。
会場の紹介〜 Plug and Play shibuya powred by 東急不動産 〜
Plug and play shibuyaは、渋谷におけるイノベーション創出の更なる活性化を図る為、渋谷を中心に再開発を進める東急不動産(株)と、シリコンバレーを本社に世界12ヶ国、26拠点を構える世界トップレベルのグローバル・ベンチャーキャピタルPlug and Playが協業し、アクセラレーションプログラムを実施するインキュベーション施設です。2017年7月にスタートをした同施設では、プログラムの参加者のほか、イノベーションを求める大企業やベンチャー企業が有料会員として参加でき、将来性のあるスタートアップと様々な企業が施設内で自由に交流できる場を提供することで、日常的にビジネスマッチングや協業が生まれる仕組みをつくっています。
登壇者ピッチ。2018年注目のSportsTechベンチャーの紹介
イベントの前半では、今回の登壇企業が、スポーツにどんなテクノロジーを掛け合わせたサービス・事業を展開しているのかのプレゼンテーションが行われました。まずは、2018年注目のSportsTechベンチャーをご紹介します。
株式会社meleap CEO 福田浩士氏
AR(拡張現実)技術を使ったスポーツ「HADO(波動)」を展開。これまでのスポーツの概念にテクノロジーを掛け合わせた「テクノスポーツ」という新しいジャンルをHADOを通じて展開していく。幼少期、男子であれば誰もが憧れた、かめはめ波や波動拳をARの技術を使って新ジャンルのスポーツとして実現をしてくれた企業。
株式会社Xenoma CEO 網盛一郎氏
東大発のベンチャー企業として、スマートアパレル「e-skin」を展開。伸縮性の高い素材を使った同社のウェアは、軽くて着心地が良く、洗濯も可能な普通の服でありながら、内部のセンサーを搭載してユーザーの動きなどの情報を認識できるスマートアパレルとなっている。そこから取得できる「データ」を武器に、今後数多くの企業とのビジネス創出が見込まれる企業。
株式会社Link Sports CEO 小泉真也氏
草野球やサッカー、バスケットなど、大人になってスポーツを楽しむスポーツチームの管理者の手間や時間を大幅に削減することにより、チームスポーツをより楽しく、より活発に継続することを可能にするスポーツチームマネジメントアプリ「TeamHub」を展開。スポーツの中でも分かりやすくビジネスとして動いている分野ではなく、スポーツをする人たちの「手間」に目を向けたソリューションが斬新かつ新しい。現在は、スポーツを支える人に焦点を当てたニッチメディア「AZrena」も展開。
株式会社電玉 CEO 大谷宜央氏
日本の伝統的な遊びであり、玩具であるけん玉をアプリを通じて対戦出来るようにした次世代のけん玉「電玉」の企画・製造を展開。センサーを搭載したIoTけん玉をスマートフォンアプリと連携させて遊ぶ。海外ではKENDAMAとして注目もされているけん玉を、クールな遊びとして国内・海外に対して発信していく企業。
株式会社BONX 取締役CFO 峯岸孝次氏
ウェアラブルの次のトレンドとして注目されている、ヘッドホンとウェアラブルを合わせた領域「ヒアラブル」。同社が製造・展開するBONX GRIPはアウトドアアクティビティに最適なBluetoothヘッドセットとして、国内・海外での認知を拡大している。同社独自のアプリを通じて、グループ内で会話をしながらアクティビティを楽しめ、スノーボードや、自転車といったこれまでアクティビティ中に会話が出来なかったシーンでも、仲間と会話をしながらスポーツを楽しめる。
株式会社ookami 尾形太陽氏
スポーツライブエンターテインメントを提供するアプリ「Player!」を展開。スポーツの試合情報をリアルタイムで配信し、興味を持つユーザー同士でコミュニケーションができるライブチャット機能、スポーツニュースサイトを閲覧できるニュースリーダー機能を備えている。さらには普段TVなどでは報道・配信されることのなかったアマチュアスポーツや学生スポーツなどのニッチな情報も配信。親御さんやOBOGといった競技者を応援する層に向けても価値ある情報を配信している。
SportsTech最前線!経営陣たちのクロストーク 〜パネルディスカッション書き起こし〜
イベントの後半は、登壇者6名を交えたパネルディスカッション。業界の前線でチャレンジを続ける経営陣たちの生の声に迫りました。今回はその一部をご紹介します。モデレータは本イベントの主催・企画でもある、NET jinzai bank 泉友詞氏。
①SportsTechの今後と課題について
泉氏:今回、参加者の皆さまには事前に聞きたい項目をアンケートで取っていますが、その中でも圧倒的に聞きたい項目として多かった「SportsTechの今後と課題」についてお伺いしたいと思います。まずはHADOの福田さん、どうでしょうか?
福田氏:はい、この質問とても答えやすいです!まず僕らのビジネスでいうと新しいスポーツをつくっている側ですね、そのために新しい技術や新しいデバイスを使用しているんですけど。今後については「誰もが持っているプラットフォームがどう変化していくのか?」という点が1つあります。今僕らのビジネスの中でインパクトが大きいのがスマートフォンです、スマートフォンの性能が上がっていくとそれに技術を掛け合わせて出来ることが増える、じゃあ次のスマートフォンに代わるデバイスは何になるのか?というものかなり大きいかなと思っています。例えば、次はホロレンズやGoogleグラスなどがくるのか。そこが新しいスポーツ競技やスポーツと技術を掛け合わせた体験のタネに影響してくると思います。
あと、僕がもう1つ注目しているのが「乗り物」。乗り物が今後どう進化していくのかで、その乗り物を使ったスポーツを作りたいなと思っています。更に、その先にいくと「宇宙に行ってスポーツする」事にもチャレンジしたいなと思ってまして、無重力で出来るスポーツもつくりたいなあ、なんて思っています。
泉氏:宇宙、フロンティアテックと呼ばれる領域だと、昨年は100億近く資金調達をする企業が出てきたりなど、確かに注目度は高いですよね。注目度の高さでは、ウェアラブルという領域も急成長していると思いますが、BONXの峯岸さんはどう考えてますか?
峯岸氏:基本的には、我々は既存の出ている技術を活用しているという側面が大きいですけど。IoTという文脈では、ビックデータ連携・AI化というのは避けて通れないと思っています。データというのはクラウドベースのものに蓄積されていくので、我々でいうとコミュニケーションの中で生まれる音声データをどれだけAIとして活用出来るか、例えばそれをドキュメント化して解析するのか?はたまた、ボイスピッキングに繋げていくのか?そういった方向に向かっていかないと、スポーツという文脈だけだと大きく爆発するというのは、少しハードルが高いかな、と感じています。
泉氏:なるほど。スポーツに関しては、国自体が「成長産業にしていこう」と声をあげている訳ですが、その辺に対してはLink Sports小泉さんは、どうお考えでしょうか?
小泉氏:僕らの展開の場合はまだ「紙からのリプレイス」だったりもするので。それこそ、福田さん・峯岸さんが話していたIoTより、もっと手前の話しで、やはり医療とスポーツって1番(テクノロジー化が)遅れている現状の中で、スマートフォンが出てきて誰もが使えるデバイスが普及していくと変わっていくだろうな、と感じているのがまず1つ。
2つ目に、国絡みという話しだと、やはり「法」が変わるというのが実は1番チャンスだと思ってます。例えば、サッカー日本代表の本田圭佑が先日スポーツベッティング企業への出資をしていましたが、日本でいうと競馬・競艇・競輪など、何兆円と動いている競技がありますがベッティング出来る対象種目がそれしかない。それが1つ変わるだけでもスポーツ自体も一気に盛り上がりをみせると思います。
②今後の事業拡大ストーリー(どうやってマネタイズ・事業拡大していくのか?)
泉氏:スポーツ自体のマーケットサイズは大きいので、そこをスタートアップがテクノロジーの領域で拡大していく・創っていくことが重要かと思いますが、電玉大谷さんはその中でも「けん玉」という切り口が特殊じゃないですか?今後の事業拡大に関しては、どのようにお考えでしょうか。
大谷氏:まあ、特殊、、ですね。「けん玉」というとかなりニッチな領域ですが、実はグローバルで見たときは競技人口も多かったりと、市場としても魅力的な数字も取れる場所だと思っています。まずは、そこにテクノロジーを取り入れて、けん玉の技が解析出来て・これまでけん玉で出来なかった遊ばせ方をちゃんと創って・それを発展させる事が出来れば、1つ新しいスポーツの在り方として確立出来るんじゃないかと思っています。
泉氏:日本の文化で有りつつ、グローバルで人気があるというモデルが「けん玉」だと思うのですが、事業拡大にフォーカスした時には、まずどんな事から取り組んでいこうとされているのでしょうか?
大谷氏:海外での浸透や人気とは別に、IT的には発展しているようで実はしていないというのがけん玉の現状です。テクノロジーやメディアに関してはまだまだこれからなんですね。
逆に言えば、そこをブルーオーシャンだとも思っていて、まずはメディアを確立して、けん玉界隈の人たちがまずはコレを見るんだ!というものを作り上げて、そこにたどり着いた人達が電玉に繋がって、新しい遊び方を知るという認知の導線を拡げます。
あと1つやりたいのが、ダーツライブ(※) 的な拡げ方ですね。ダーツも元々はハードであったものが、インターネットを通じたソフトを取り入れて、今はダーツバーや飲み屋に置いてあったりとそこで遊びの認知を拡げていますが、それと同じ様な発展の仕方をさせようと考えています。海外だと、飲んで、けん玉をやって盛り上がる文化があるのですが、日本だと、まだまだ伝統的な遊びとして、カチャンカチャンみたいな印象があると思うので(笑)そこをまず、「けん玉ってクールじゃん!」という印象に変えたいですね。
※専用のICカードとネットワークを利用した新しいダーツの総合サービス、またはそのサービスが楽しめるダーツマシンの総称(コトバンクより引用)
泉氏:アマチュアスポーツをコンテンツにしているookami尾形さんはどうやってその辺り(事業拡大)を考えていますでしょうか?
尾形氏:ここは結構明確にありまして、ウチはコンテンツベースのメディアなので、重要なのはコンテンツです。プレゼンでも話しましたが、スポーツの中でもまだまだ未開拓な領域って結構あると思っています。それが学生スポーツやユーススポーツなんですけど。プロ野球やJリーグの速報は、どこでも見れますが、息子や娘の試合を追いかけたい!って欲求は解決出来てるのか?とかOBOGが母校の試合を追いかけたいという欲求など。TVやスタジアムでも解決出来ていなかった、もっと言うとパソコンでも解決出来ていなかった「未開拓なコンテンツの領域で集客をする」ことを考えていて、この1年でそこが出来たなとも思っています。
(中略)
泉氏:今独自のプロダクトをそれぞれがお持ちの中で、他の企業との協業・アライアンスに関しては、積極的な姿勢なのか?消極的な姿勢なのか?その辺りを経営視点でお話聞きたいと思っているのですが、Xenoma網盛さんいかがでしょうか?
網盛氏:ウチはそもそもe-skinを着ただけでは何も出来ないので、アプリに繋げなければいけないんですね。そういったソリューションを自社でつくる選択肢は無くはないのですが、ある種僕らの立場である大学発スタートアップという立場上、「汎用的な技術」なんですよ。これが致命傷で、スタートアップは絶対汎用的な技術やんない方が良いですよ。
一同:(笑)
網盛氏:だって、何に使えるか分からないじゃないですか?僕もそこは半ばマゾ的にやっていますが、具体的なサービスに必要なサプライチェーンを全て自社でつくる訳にはいかないので、そこを持っているところと組む、と。現在でいえば、HUGO BOSS社もそうですし、医療機関の会社と認知症患者のシャツも作っていますし、まだ公表出来ないのが後2-3ありますが、更にそこからサービスを展開するにはサーバーの会社やアパレルの会社など・・なので、僕ら何でもかんでも協業でやっています。
会場フォトレポート
総勢70人近くの参加者を集め、大盛況のイベントとなった当日をフォトレポートでご紹介。盛り上がりをみせるSportsTech市場、是非今回紹介された企業のデバイスやアプリを手に取って、その魅力に触れてみてはいかがでしょうか?
イベントの乾杯は、今回登壇者の中で最年少となったookami尾形氏がつとめる
イベント終了後の交流会の様子①
イベント終了後の交流会の様子②
アプリと連携して遊べるけん玉「電玉」
電玉を体験してみる参加者(左)とCEO大谷氏(右)
今回イベントの企画・司会をつとめたネットジンザイバンク泉氏