疲弊している世の中を変えたい。メンタルヘルスケアのビジネスチャンスとは 【起業インタビュー第53回】|起業サプリジャーナル

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疲弊している世の中を変えたい。メンタルヘルスケアのビジネスチャンスとは 【起業インタビュー第53回】

公開日:2017.12.19

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昨今、労働問題が大きく取り上げられており、例えば、長時間労働から生ずる過労死自殺の現状と対策を取りまとめた「過労死等防止対策白書」を厚生労働省が昨年末にはじめて作成・発表しました。

同白書では、職場のメンタルヘルスケア対策の状況にも触れられており、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は半数を超えていると記載されています。また、不安や悩み、ストレスの内容別で見ると、「仕事の質・量」(65.3%)が最も多く、次いで、「仕事の失敗、責任の発生等」(36.6%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」(33.7%)となっています。

「ストレスを相談できる人の有無」では、相談できる人がいる(90.8%)と高いものの、相談相手別に見ると、「家族・友人」(83.2%)、「上司・同僚」(75.8%)となり、次いで「産業医」(8.1%)という結果です。
詳細は、厚生労働省のHPにある「平成28年版過労死等防止対策白書」をご覧下さい。

上記で述べたように産業医の活用が不十分であるなか、産業医と企業のマッチングサービスである「産業医紹介センター」を運営し、またご自身の原体験から、日本を良くしたいという想いを持ってその課題解決にあたる、株式会社Miewの刀禰真之介社長にお話を伺いました。

 

刀禰 真之介氏
明治大学政経学部を卒業後、デロイトトーマツコンサルティング株式会社(現 アビームコンサルティング株式会社)に入社。その後、UFJつばさ証券株式会社(現 三菱UFJモルガンスタンレー証券株式会社)、株式会社環境エネルギー投資等を経て、2011年3月に株式会社Miewを設立。現在、東京大学大学院薬学系研究科ファーマコビジネス・イノベーション教室後援「 医療産業イノベーターズスクール」を受講中。

 

疲弊している世の中を目の当たりにして

起業のきっかけを教えてください。

サラリーマン時代に、コンサルティングから投資銀行、ファンドと会社のお金に関わる仕事を一通り経験しました。

ファンド在籍時に、事業を仕掛けるということに興味を持ったこと、弊社の株主かつ取締役でもあるサムライインキュベートの榊原さんに「2号ファンド創るから投資先になってくれない?」と言われたことが起業のきっかけです。

 

なぜ、メンタルケアの事業に参入しようと思ったのですか。

20代の頃、在籍していた会社が外資系やファンドということもあって、がむしゃらに働いていたんです。毎月400時間は働いていました。当時はそれが普通だと思っていたんですよ。1年ごとの契約更新なので、毎月、毎日結果を出し続けないといけませんし、一瞬でもミスをしたらクビでした。

長時間労働に関して鈍感だったとはいえ、それでも仕事が辛いと思ったことがないのは、楽しかったからなんです。

しかし、ある時、とうとう体調を崩しました。メンタルではないですけどね。原因不明で。今の健康な僕がいるのは、その時に医者の弟が助けてくれたからなんですね。そういう原体験があったので、医療分野に貢献していきたいなと思ったのが参入の端緒です。

起業して理解したことは、僕みたいな働き方に鈍感な人間がいる一方で、長時間労働や働き方の多様化などに対して、ストレスを抱えている人が増えているということが分かったんです。

 

ストレスとはどういったものでしょうか。

例えば、以前、うちで採用したエンジニアがメンタルをやられてしまったことがあるんです。理由を聞くと開発手法の対立から、人間関係が悪化してしまったとか、プライベートの内容もありました。

語弊がある言い方かもしれませんが、少し前の日本では考えられないような些細な出来事と思われることにすらストレスが発生しやすくなっているんです。

産業医の先生に聞いた話によると、朝の通勤時にスマホでニュースを見るといった行為は、その時間だけで20年前の1日分の情報量が入ってきているのと同じということでした。人間の脳の容量は進化していないのにそれだけの情報量が入ってきたら、パソコンで例えるとフリーズするようなものだと言われ、なるほどと納得しました。

IT化によって便利になってきているのと同時に、世の中に溢れる情報量が人間のキャパシティを超え、ストレスに変換される人も一定数増えてきているんです。

 

社会的課題とビジネスチャンスとは

起業した当初からメンタルケアビジネスを思い描いていたのでしょうか。

実は試行錯誤しながら今のメンタルヘルスケアに重点を置くようになりました。

医療分野の頂点にいるのは医師です。ですから、当初は医師を主軸においた戦略を立てていました。具体的にいうと、医師という人材を活かしたビジネスです。

そこでまず医師の人脈形成を目的に、医学論文を扱ったサービスを作ろうとしました。それが今の学会専用電子書籍「KaLib(*杏林舍様と共同で提供)」です。

今までも多くの方がこの学会系のITサービスに挑戦したらしいんですが、みなさん失敗されていました。医師はセンシティブな方が多いですから・・・。医師学会と上手に付き合うことが非常に難しいんです。

 

なるほど。刀禰さんはどのようにサービスを作ったのでしょうか。

僕の場合は医師学会と直接お付き合いをせずに、学会と親密な杏林舍様とうまくお付き合いさせていただきながら医師へのタッチポイントを作ったんです。

実はこういったヒントや情報は、医者である弟や弟の奥さんからもらっています。

 

では、「Avnenir産業医」という産業医と企業をマッチングするサービスはどういった発想でうまれたのでしょうか。

先ほど述べたように、昨今のIT化もあいまって、ストレスを抱える現代人が今後も増えていくだろうと思ったんです。

精神疾患で一番多い症状はうつ病です。そして、うつ病の平均完治期間が2年というデータがあります。

しかしながら、会社勤めの場合、休職期間が定められていますね。企業により休職可能な期間は違っていて、長い企業で18ヶ月(1.5年)。短い企業ですと3ヶ月程度のところもあります。

3ヶ月であろうが、18ヶ月であろうが、症状が完治していないのに、復職しろと言われても、それは難しい。

昨今これだけ、労働問題が取り上げられてきているのは、うつ病等の増加といった社会的な課題が顕在化しているということです。だったら、事前に救済する仕組みを考えようと思って、それが産業医を提供できるサービスでした。

ですが、産業医の中でも、メンタルケアに詳しい先生が非常に少ない、という課題があったんです。理由としては、かつての健康診断ではメンタルチェックは重要視されていなかったからです。

産業医をやりたいという先生は多いんです。しかし、メンタルケアに関して知識が乏しい。一方、企業側も産業医の先生と上手く協調することで、事前救済で離職者・休職者を減らしたい。

この2点にビジネスチャンスは広がっていると思って、今のマッチングサービスがあります。

 

メンタルケアに関する産業医の知識が乏しいという課題に対してはどう対応していますか。

僕たちのサービスを運営するにあたって、紹介する産業医の質を担保する必要があります。ですから、やり方を標準化したり、産業医のレベルアップについて力を入れています。

また、僕たちと先生方の間では「医師のプロとして判断するところはしていただく、その代わり、わからないときは聞いてください」という体制を採っております。先生方がわからないときにいつでも相談できる、メンタルヘルスケアのプロであるクラウドティーチャーを配置しています。

また、コンプライアンスを含む法令に関して、医師は法律の専門家ではないですから、必ずしも詳しい訳ではないのです。従って、そのようなナレッジについては弊社がフォローしておりますので、一人ひとりの産業医のクオリティーは保障できるのです。

さらに、うちが紹介する産業医は、対労働者という観点だけではなく、対企業、対個人に対して企業全体のことを考えながら健康な組織の構成を考えるコンサル型の産業医です。

一番、重要な視点は産業医の先生が、「産業医としてのキャリアを構築し、企業を本当に救いたい」と心から思っていること、そして、コミュニケーションに長けていることです。それ以外のナレッジについては、元々レベルの高い方々ですから、直にキャッチアップして頂いております。

 

医師向けのキャリア支援についても力を入れてますよね。

そうです。「医師の働き方改革支援」という支援サービスも行っています。

2017年現在、日本では医師についても、「働き方改革」は厚労省含め、激論を重ねております。我々としては、医師も長期的なキャリアパスを考える中で、子育て、親の介護、シニアでの仕事がテーマになっており、医師にとっては「医師のための働き方改革支援会社」という位置付けで貢献したいと考えております。

その中でも産業医は子育てやシニアに最適です。

産業医は、例えば、子育てをしながらでも続けられるので、キャリアを中断しなくて済むというメリットがあります。セカンドキャリアを考えると、産業医という選択肢はピッタリなんです。子育てがひと段落着いたら、今度は病院を紹介するというかたちですね。

ですから、うちは女性の産業医が多いことが特徴の一つとして挙げられます。

僕たちが目指すメンタルケアAIプラットフォームは、産業医の先生と協調が前提となってるんです。今後、リリースするメンタル予防AIサービス「ELPIS(エルピス)」は、メンタル不調になるかもしれない社員を事前に察知し、企業の人事部と産業医が協調して、予防する仕組みです。加えて、企業が社員のメンタルマネジメントできる体制を支援するITサービスです。

ちなみに、「ELPIS(エルピス)」の語源は、ギリシャ神話のパンドラの箱に最後に残ったものなんです。「ELPIS(エルピス)」は2つの意味があり、一つは「予兆」、もう一つは「希望」です。

我々は「ELPIS(エルピス)」を通じて、社員の不調を「予兆」し早期予防を施し、企業や社員の希望となるようなサービスを提供していきたいと考えております。

 

確固たる信念は日本のタメになること

これからどのような成長戦略を描いているのでしょうか。

医師、企業それぞれのニーズに合ったものをしっかり提供できるサービスにしたいと思います。

例えば、産業医を集めるというフェーズは軌道に乗ったので、次は産業医のバージョンをアップするプログラムを強化したいと思います。

また、メンタルヘルスを予防するデータがあるので、これを活かす方法を企業に提案したいですね。

2017年7月、株式会社デジタルアイデンティティ(現在、株式会社オーケストラホールティング)さんと業務提携し、うちのデータ、ノウハウを活かしたオンラインメンタルカウンセリングサービスの提供をすることを発表しました。メンタル失調が軽度な場合、ユーザー自身がクラウドにいる産業医や精神科医のもとに直接足を運ぶカウンセリングを受けることが難しい場合が多いため、ネットとリアルを結び、スマホやタブレットでいつでも利用できるサービスです。

 

今後の目標を教えてください。

上場を一つの目標としています。

僕の根底にあるものは、日本のタメ、世界のタメになることを成したいという信念です。

メンタルヘルスケアそれ自体が今の時代に要求されるものであり、なくてはならない存在になりつつあります。そのためのプラットフォーム作りであり、その先には海外展開もあり得ると考えています。

メンタルヘルスケアが必要な方と人口は比例します。日本に400万人弱の精神疾患の患者がいるということは、中国には3000万人いるんです。また、メンタル疾患予備軍の人の割合は、約10%程度。日本で言うと、1000万人近くいて、中国だと1億人いる可能性があるということ。これを予防するとなると、潜在的に大きな市場があるということになります。

 

あとはやりたいことの一つとして、投資家に戻るという選択肢も将来的にはあります。

ファンドや投資銀行にいたときより、起業家として経験を詰めたので、起業家目線かつ投資家としてのバリューを出せると思うのです。

時代に要請されるようなストーリー作り、特にエクイティ・ストーリーが描けている人って少ないんですよ。また、自分の業界のことしか知らない方が少なくないかなと。

例えば、人材業界出身なら、人材周りしか知らないって人が多い。医療分野への参入は医師や医療関係者や医療コンサルやっていた人が多い。 でも、僕はいろいろな業界について見てきたし、ストーリー作りのお手伝いや戦略を考えたりすることは好きだし、貢献できると思うのです。

僕を突き動かす動力は、「日本のタメになることを成したい」、「社会的に価値あるものを生み出したい」といった想いです。メンタルヘルスケアのプラットフォームがきっと社会的に意義のあるものになると信じています。

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