無から有を生み出すアイディアは無尽蔵~100万個ある日本の良いところを世界に発信する起業家の発想とは【起業インタビュー第44回】|起業サプリジャーナル

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無から有を生み出すアイディアは無尽蔵~100万個ある日本の良いところを世界に発信する起業家の発想とは【起業インタビュー第44回】

公開日:2017.10.17

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日本には100万個の良いところがあるはずなんです――

「日本の文化を世界に発信する」という経営理念のもと、2006年に創業した株式会社LA DITTA。「毎日が楽しくてしょうがない」と語る同社代表の小里博栄さんに、現在行っている様々な事業と起業のきっかけについてお話を伺いました。

 

小里 博栄 氏(コサト ハクエイ)
株式会社LA DITTA代表取締役、シンガポール経済新聞編集長。1971年神戸生まれ。神戸カナディアン アカデミー卒(国際バカロレア・ディプロマ取得)。ロンドン(LSE)大学卒(心理学)、オックスフォード大学院卒(社会福祉学)。英税理士。英ヴァージングループ、ダイソンの日本市場進出・マーケティングを経て、(株)LA DITTA創業。
創業11年、インド事業は10年。インド、シンガポール、日本、欧州などでグローバルに事業を展開する。イベント業、コンサル業、飲食業、各方面のスペシャリストの代理プロデュース業を進めている。約15のプロジェクトを同時進行。インド最大の「クールジャパンフェスティバル」(15万人来場)を5年開催、年末にはムンバイ6年目、デリー初開催予定、計25万人規模になる見込み。母校神戸ミカエル国際学校では60周年時(2006年)理事長を務め、日本の国際学校の最年少理事長となる。最近ではソーシャル・エントレプレナーとしての活動もスタート。世界初となる募金貯金箱「Me For The World」を開発。ミスワールドジャパンの審査員、グッドデザイン賞受賞。執筆と講演も行う。現在京都、シンガポール在住。娘は8歳、UWC SEA Dover校在籍。

 

日本文化を発信する手段とは

小里さんが手がける事業は現在15個ほど。イベント業、コンサル業、飲食業を柱に、多方面で活躍している小里さんに事業の説明をいただきました。

様々なお祭りをプロデュース

「クールジャパン・フェスティバル」

2012年より開催している、日本のカルチャーや企業をインドに紹介するイベントです。現地で開催する日本のイベントとしては最大規模を誇り、例年、ムンバイで実施し15万人を動員、今年は、デリーでも同時開催し、計25万人を目指しています。日本の食や文化、ポップカルチャー、家電や日用品など多くを紹介するクールジャパン・フェスティバルは、現地メディアにも度々紹介いただき、日本インド間の交流の活性化に一役買っているものだと自負しています。今年は、タレントの武井壮さんとミスワールドジャパン2016のPRIYANKA YOSHIKAWAさんの2名がアンバサダーとして就任し、クールジャパン・フェスティバルを盛り上げてくれるでしょう。

「アイ ラブ アイルランド・フェスティバル」

アジアで開催するアイルランドのイベントでは最大級の規模です。もともと5万人を動員するイベントでしたが、僕たちが携わり10万人規模となりました。アイルランドのナショナルデー(聖パトリックの祝日)である3月17日に、東京の代々木公園で2日間開催し、食や音楽だけでなく、エコやスポーツを取り入れ、またアイルランドのシンボルカラーである緑を身にまとい、周辺の店舗や企業にもご協力いただき、街全体が緑一色に染まるお祭りです。

「オイスターフェスティバル」

東日本大震災の復興支援として始めたことがきっかけです。三陸地方の牡蠣の養殖施設が被災し、ほぼ全施設が操業停止に追い込まれてしまいました。そこでアイルランドの「ゴールウェイ国際オイスターフェスティバル」で開かれる牡蠣の早むき選手権を日本で行い、日本と海外の牡蠣生産者を繋ぐことで、もう一度三陸の牡蠣を盛り上げようとしたんです。

今では、牡蠣の生産者だけでなく、オイスターバー業界、卸業者へと広がりをみせ、ついに一般社団法人日本記念日協会より、毎年9月第3日曜日が「牡蠣むきの日」と認定されるまでになりました。

 

自社で得たノウハウを活かしたグローバル展開のサポート

上場企業や中小企業などのインドなどの海外進出のお手伝いをさせていただいています。最近ですと、日本の伝統文化である畳の縁の部分を使用したバッグのマーケティングとブランディングを大阪にある企業様から任せてもらっています。現代の日本住宅の洋風化により畳に触れる機会が減っているなか、軽くて丈夫かつ、様々な模様がある畳の縁に注目し、今では、アジアや欧米、ヨーロッパと世界中に輸出しています。

 

海外で広がる和食

「Sushi and more(スシアンドモア)」

インドで寿司店をオープンさせるとは誰もが考え付かなかったでしょう。2011年にムンバイにてインド初の寿司のテイクアウト専門店としてオープンし、今年で5周年を迎えます。現在では、インド国内で4店舗展開し、デリバリーやケータリング事業まで拡大しました。

 

起業のきっかけとは

いくつかの事業についてご説明いただきましたが、そもそも、なぜ起業を目指すようになったのでしょうか。

1995年1月17日に起きた、阪神淡路大震災が大きなターニングポイントだったのは確かです。

神戸で生まれ育った僕は、その後ロンドン大学、オックスフォード大学に進学し、震災当時はイギリスで税理士として働いていました。震災のニュースを耳にし、その10日後に帰国したのですが、目の前に広がる光景には故郷の姿がどこにもありません。とにかく驚きと不安を感じさせる焼け野原を見て、いつ、なにがあるかわからない、そう思ったんです。また同時にこれからの人生を見つめ直し、楽しく生きよう、そしてインパクトを与える何かをしよう、と考えたんです。

思いついてから行動に移すまでは早かったです。自分で言うのも恥ずかしいですが、イギリスの大手税理士事務所を躊躇無く辞めることができました。そして6ヵ月後にはタイで会社を興し、語学学校、出版業を経験。その後、日本へ帰国し、ヴァージン・グループ、ダイソンにて日本市場開拓のためのマーケティングを行っていました。マーケターとして働きながら、ヴァージン・グループの会長であるリチャードブランソンが何十万人という雇用を生み出すのを間近でみて、様々な国で同様に雇用を生み出そうと思いました。

また、日本には100万個のいいところがあるはずなんです。それは日本の道徳教育や、食、風景、旅、温泉、美などいくつでも挙げられます。僕はイギリス企業が日本向けのマーケティングした経験があります。そのノウハウを活かして、日本のいいところ、日本の文化を海外に発信できるのではないか、そう思い、日本でLA DITTAを設立しました。

 

阪神淡路大震災が小里さんにとって、人生を変えた大きな出来事だったということですか。

そうですね。おそらく、神戸の姿を見ていなかったら、今もロンドンで税理士のままだったのではないでしょうか。それだけ衝撃的な出来事でした。だからこそ、人生を全うしようと、楽しく生きようと決めたんです。決意した1995年1月末日から今日まで、毎日を楽しく過ごしていますね。

 

海外へ進出するリスクをどう捉えるのか

インドでの寿司店をオープンするときに、緻密な戦略などを立てた上で進出を決めたのでしょうか。

特に決めていませんでした。経済が自由化されたばかりでマザーテレサが存命の頃のインドを何度か訪れたのですが、ファーストフード店や飲食チェーン店などが何もない状態でした。ましてや寿司屋なんかありません。そういった何もないところに魅力を感じて、漠然となにかしようと思ったんです。

ちょうどそのときに、インドにあるフォーシーズンズホテルが和食を提供するということが決まり、その食材の供給のお手伝いをさせていただくことになりました。同時に、和食の知名度が低いインド国内でどのように普及させていくかを検討することになったんです。市場を形成するために調理学校で和食を作ったり、寿司コンテストを開催したりと、できることを地道に行いました。

やがてインドでも和食が話題になり始めたのですが、それは富裕層が嗜む高級なものでした。そういった背景から、インド人の中間層でもおいしい寿司が食べられるようにと思い、「Sushi and more(スシアンドモア)」をオープンしました。

 

今では同店舗も6年を迎えたわけですが、その間のリスクなどはどのように考えていましたか?

リスクを取るということに関して、日本人はネガティブに捉えている印象があります。確かにインドでは、食材の調達や、衛生管理、マーケティング、気候、災害などの抱えている問題は6年間の経営のなかでもたくさんありましたし、6年間でノウハウを得てコントロールできる部分はあるものの、今でも課題は多いです。

しかし、リスクを取るということはもっとポジティブなものだと思います。言葉にするのが難しいですが、「やるリスクよりやらないリスクの方が高い」ということです。

インドで事業を始めて10年経った今になって分かったことは、インドだったら何でもできるということです。

スズキ自動車の鈴木修会長や、パナソニックAPインドの麻生英範社長と同じ考え方ですが、インドで事業を興すなら10年、15年は続ける必要があります。継続的にビジネスできるかどうか、忍耐力が問われ、乗り越えればなんとかなる国がインドでした。

ヨガや、瞑想、数字のゼロの概念、仏教を生み出したインドは、0から1を生み出すのが得意なのかもしれません。そういった空気に満ち溢れています。行ったことがある人はご存じだとは思いますが、インド人はポジティブで元気です。一昔前はアメリカンドリームと言っていましたが、インディアンドリームがそこにあります。スラムの子供たちも目を輝かせています。

リスクは何にでも存在します。震災が起きたら、なにもしていなくても全部無くなってしまいます。やらないリスクとやってみるリスク、どちらを選択しますか。

 

面白いアイデアはどのように生まれるのでしょうか。

こういうものがあればいいのではないか、というのは常に考えています。インドで日本のお祭りが無いから作ろう、寿司店が無いから作ろう、なにも無いからつくろう。とにかく、やろうと思ったらすぐに取り掛かります。今考えているのは、京都の素敵な方にヒントをいただいた「ミス日本茶」の大会です。ミスワールドジャパンのスポンサー、審査員に携わっている経験と、世界中を席巻している日本茶からヒントを得ました。無いから作るという点では、チャンスは広がっていると思っています。

 

日本のいいところを輸出し続ける

最後に、今後やりたいことを教えてください。

楽しく過ごすためにはどうするか、人生を全うするにはどうするか、を考えた結果、「日本のいいところを発信」しながら、多くのことにチャレンジすることでした。今後もそれは変わらないです。

最近ですと、シンガポールで「フライパン食堂」という揚げ物がメインの新しい飲食店を始めました。揚げ物は世界各地で食べられていますが、シンガポールで一般的に提供されているトンカツは、2000円くらいと高価なものです。もっと低価格で、気軽に食べてもらいたいと思ったことがきっかけでした。

レストランではなく、フードコートで提供し、なるべく現地の食材を調達することで900円程度と価格を抑えつつ、おいしいものを提供できました。海外の日本食レストランですと、味が物足りなく、高価なお店であることがしばしばありますから、このビジネスモデルをさらに海外へ広げることも視野に入れています。

また、今年完成した「ME FOR THE WORLD」という自分のために貯金しながら世界のために募金する世界初の募金貯金箱を普及させていきたいですね。

イギリスの慈善団体が発表する世界寄付指数によると、日本は111位とかなり低いことが分かります。僕は日本には寄付する文化、特に自身が生活する地域での「相互扶助」が過去には、存在したと認識しています。ただこれだけ、日本に寄付する文化が根付いていないとなると、具現化、習慣化されていないだけではないのか、そう考えたんです。

「ME FOR THE WORLD」を自宅に置いたところ、小学生の娘はおよそ70%を募金に入れました。つまり、親と子のコミュニケーションがある家庭内で募金する環境があれば、貧困などに苦しむ世界中の人たちのことを日常的に意識するようになり、慈善の心を育むようになります。毎日を過ごす家という場所で、目の前に「ME FOR THE WORLD」があったら、世界に目をむけつつ、自分への投資(将来)を考える機会を与えられるのではないでしょうか。

今後フィンテックと連携できるのではないかと模索しており、世界に大きな経済効果を生み出すソーシャルビジネスになる可能性を秘めていると捉えています。

ME FOR THE WORLD―「For Me」へは自分への貯金、「For The World」へは世界への募金をする貯金と募金が一体となった募金貯金箱

 

編集後記

忙しそうに世界各国を飛び回る小里さんの印象を、従業員の方に伺うと「休んでいるところを見たことがないです、ただ楽しそうに仕事されています。」とのことでした。また、LA DITTAが新しいお祭りを開催することが決まりました。さらに忙しくなるLA DITTAの新しい試みに目が離せません。

グレート・ブリティッシュ・ウィークエンド

12月8日(金)~10日(日)@六本木ヒルズ

在日英国商業会議所などの協力のもと、日本最大のイギリス・フェスティバルを開催します。イギリスを代表する企業や、ブランドが集まり、音楽や文化、食などをイルミネーションが輝くクリスマスシーズンに合わせて紹介する「グレート・ブリティッシュ・ウィークエンド」は、子供から大人まで楽しめるイベントになっています。

 

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投稿者について
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竹澤 駿

2017年に行政書士登録と同時に、行政書士法人jinjerの立ち上げに参画し、現在に至る。 外国籍の方の就労ビザの取得支援に特化し、サービス業を中心に一部上場企業から中小企業までの幅広い顧客を持つ。年間約300件の申請を手がけ、昨今は法改正のあった「特定技能」へも対応し、人材会社の新規事業の立ち上げ支援も実施。

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