行政手続きのオンライン化の流れ
近年急速に行政手続きのオンライン化が進められています。
これは、2001年のe-japan戦略において、「2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続をインターネット経由で可能とする。」と定められたことを受け、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等を制定し、基盤整備が進められたことから動き出しています。
その後、政府は、国・地方公共団体に対する申請・届出等手続におけるオンライン利用率を2010年度(平成22年度)までに50%以上とするIT新改革戦略を掲げ、申請・届出等の電子化に取り組んだ結果、オンライン利用が浸透しはじめました。
2014年度(平成26年度)以降は、世界最先端IT国家創造宣言に基づき策定されたオンライン手続の利便性向上に向けた改善計画に基づき、オンライン利用によるメリットを国民・企業等と行政の双方が享受することを目指して、「改善促進手続」を中心に、国民・企業等に理解と協力も求めつつ、行政サービスと事務処理の改善に取り組んでいます。
改善促進手続
「取組に当たっては、改善効果がより大きいものから効果的・効率的に進めるため、 ア 国民・企業等が広く利用するオンライン手続のうち、利用頻度が高い年間申請 等件数が100万件以上のもの及び主として企業等が反復的又は継続的に利用する手続であってオンライン手続の利用率の向上を引き続き図るべきもの 、イ 総務省の「申請手続に係る国民負担の軽減等に関する実態調査結果に基づく勧告(一般手続関連)」(平成 25 年 11 月)の対象となっている手続のうちオンライン手続の負担軽減に関するものとして、別表に掲げる手続を、「改善促進手続」と位置付け、社会保障・税番号制度の導入を勘案しつつ、利便性の向上とオンライン利用の拡充・定着に重点的に取り組むものとする。」と記載されています。
そして、改善促進手続としては、下記のようなものが列挙されています。
1 登記(計5手続)
・不動産登記の申請
・不動産登記に係る登記事項証明書等の交付請求等
・商業・法人登記の申請 など
2 国税(計 15 手続)
3 社会保険・労働保険(計 32 手続)
・概算・増加概算・確定保険料申告書
・雇用保険被保険者資格取得届
・健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届
・健康保険被扶養者(異動)届、船員保険被扶養者(異 動)届
・国民年金・厚生年金保険老齢給付裁定請求書
・労働保険の保険関係成立届
・就業規則(変更)届
・新規適用届 など
4 自動車登録(計1手続)
5 その他
会社設立手続きのオンライン化
こういった流れの中、商業登記の申請に関して、下記のような記事が出ています。
「経済産業省は日本のビジネス環境の改善策をまとめた。法人設立に必要な手続きを一括してオンラインで可能にする方針を打ち出し、関連法改正に向けて法務省と調整する。」
経済産業省としては、先進国の中で競争力が低下している現状を踏まえ、環境改善を進めて起業を呼び込みたい考えです。
詳細は、日本経済新聞夕刊2017/5/10付へ。
平成27年度における行政手続オンライン化等の状況
また、「平成 27 年度における行政手続オンライン化等の状況」(平成28 年12月22日、総務省)では、下記のような結果が出ています。
【国の行政機関が扱う申請・届出等手続のオンライン化等の状況】
・オンライン利用が可能な申請・届出等手続 2,645 種類(前年度比 24 種類減)
・ オンライン利用率 47.3%(前年度比 1.9 ポイント増)
・改善促進手続におけるオンライン利用率 43.3%(5 億 5,235 万 9,761 件中 2 億 6,131 万 6,784 件、前年度比 2.1 ポイント増)
行政手続きのオンライン化により新たなサービスの創出
例えば、社会保険・労働保険のオンライン申請が可能となったことで新たなサービスが生まれています。
jinjer労務(株式会社ネオキャリア)
【特徴】
- 従業員情報とあわせて、扶養家族、住所変更、社会/健康保険などの情報を一元管理。人事データベースとしての役割も可能。
- 手続項目を可視化し、シンプルに進捗管理することで漏れなく手続き完了。WEB上で記入できるので、各書類がオンラインで作成可能。
- 従業員用マイページにより、各メンバーはWEBで必要項目の入力完了。その後、担当者が各事務所に伺うことなく、WEBで手続/申請が完了までサポート。
Smart HR(株式会社SmartHR)
【特徴】
- 社会保険・雇用保険の手続きを自動化、書類を自動作成し、役所への申請もWebから行える。
- 人事情報の変更履歴もデータベースで管理。手続きの抜け漏れも防ぐことができる。
- マイナンバーの収集・管理にも対応。従業員はマイページから提供できる。
また、平成29年4月20日 、厚生労働省が「社会保険・労働保険のオンライン申請の拡充 及びバックヤード連携について」 との資料を出しています。この資料において、「デジタルファーストの原則に立ってオンライン申請利用率の大幅な改善を図る」との考えが記載されています。