平成28年12月20日に厚生労働省が公表している、「同一労働同一賃金ガイドライン案」についてまとめてみました。
今後この案をもとに、法改正の立案作業を進め、本ガイドライン案については、関係者の意見や国会審議を踏まえて最終的に確定されます。法律の制定プロセスに入る前にガイドライン案を作成・公表するという点が特徴的です。
項目ごとに、問題とならない事例と問題となる事例が記載されています。
概要
下記のような項目により構成されています。
1 前文
2 有期雇用労働者及びパートタイム労働者
(1)基本給
①基本給について、労働者の職業経験・能力に応じて支給しようとする 場合
②基本給について、労働者の業績・成果に応じて支給しようとする場合
③基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しようとする場合
④昇給について、勤続による職業能力の向上に応じて行おうとする場合
(2)手当
①賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合
②役職手当について、役職の内容、責任の範囲・程度に対して支給しよう とする場合
③業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊作業手当
④交替制勤務など勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当
⑤精皆勤手当
⑥時間外労働手当
⑦深夜・休日労働手当
⑧通勤手当・出張旅費
⑨勤務時間内に食事時間が挟まれている労働者に対する食費の負担補助 として支給する食事手当
⑩単身赴任手当
⑪特定の地域で働く労働者に対する補償として支給する地域手当
(3)福利厚生
①福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室)
②転勤者用社宅
③慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障
④病気休職
⑤法定外年休・休暇(慶弔休暇を除く)について、勤続期間に応じて認め ている場合
(4)その他
①教育訓練について、現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実 施しようとする場合
②安全管理に関する措置・給付
3 派遣労働者
【参考海外判例】
内容
目的と趣旨
「本ガイドライン案は、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を 確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものである。同一労働同一賃金は、 いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用 労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの である。 」
「我が国から「非正規」という言葉を一掃することを 目指すものである」との記載もあります。
基本給
例えば、問題となる事例として下記のようなケースがあげられています。
<問題となる例>
「基本給について労働者の職業経験・能力に応じて支給しているE社において、無 期雇用フルタイム労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの職業 経験を有することを理由として、Xに対して、Yよりも多額の支給をしている が、Xのこれまでの職業経験はXの現在の業務に関連性を持たない。」
「基本給について労働者の勤続年数に応じて支給しているB社において、有期雇用 労働者であるXに対し、勤続年数について当初の雇用契約開始時から通算せず、 その時点の雇用契約の期間のみの評価により支給している。」
手当
例えば、賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合 には、無期雇用 フルタイム労働者と同一の貢献である有期雇用労働者又はパートタイム労働者に は、貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、貢献に 一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない、とされています。
福利厚生
例えば、福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室) について、無期雇用フルタイム労働者と同一の事業場で働く有期雇用労働者又はパートタイ ム労働者には、同一の利用を認めなければならない、とされています。
参考ページ
詳細については、厚生労働省のWebページをご確認ください。
厚生労働省の厚生労働省同一労働同一賃金特集ページにその他の情報も掲載されています。
関連条文
・労働契約法20条
・パートタイム労働法8条
・労働者派遣法30条の3