こんにちは。社会保険労務士の小西広宣です。
今回は、社長の労災保険についてお話します。
社員と同じ仕事をしていても…
建設業や農林水産業などの業種で、人数規模があまり多くない事業所では、社長も社員と同じ仕事をしている場合があると思います。ところが、そのような場合に負傷した場合でも、社員であれば労災保険が使えますが、社長の場合は原則的に使えないことになっています。
これは、労災保険の性質が「使用される者」の業務上の事故に対して補償するものであり、「使用する者」に対して補償するものではないからです。
そうは言っても…
経営に関する仕事をしているときならともかく、社員と同じ仕事をしているときに関しては、社員と同様、労災保険が使えるようにしたいという思いの社長さんはいらっしゃると思います。
じゃあ、どうすればいいんだろう…
そのような場合、労災保険の特別加入という制度を利用することができます。
特別加入の対象となるのは、常時使用する労働者の人数が以下の条件に当てはまるときです。
• 金融業、保険業、不動産業、小売業を主要な事業にしている場合…50人以下
• 卸売業、サービス業を主要な事業にしている場合…100人以下
• 上記以外の事業の場合…300人以下
そして、主要な事業の業務に従事している役員や家族従事者に対して適用されます。(経営の業務に専念している場合は使用できませんので、注意が必要です。)
保険料はいくらだろう…
通常の労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の場合は、4月~翌年3月の賃金の総額に業種別の保険料をかけて算出しますが、特別加入の場合は、加入する側が3,500円~25,000円のうち、指定されている16種類の金額の範囲で給付基礎日額を決定します。給付基礎日額は、1日当たりいくら稼ぐかを目安として決めるので、社長等役員の場合は、1ヶ月の報酬を30で割った額のうち、指定の額に近いものを給付基礎日額として決めればよいと思います。
4月~翌年3月まで入るのであれば、「給付基礎日額×365(1年の日数)×該当する業種の保険料率」の式で算出された額が1年間の保険料となります。
気を付けることは何だろう…
中小事業主が特別加入に入る際は、労働保険の事務を、労働保険事務組合に委託する必要があります。労働保険事務組合とは、その名の通り、労働保険の手続きを事業主に代わって行う団体です。
商工会議所で労働保険事務組合を運営しているところもありますし、労働保険事務組合に委託をしていない場合は、お近くの労働保険事務組合に問い合わせすると良いでしょう。
このような制度をぜひ活用し、安心して仕事ができるようにすることをぜひおすすめしたいと思います。