会社を設立することにした際、真っ先に考えるのは、会社名、会社の住所、役員のメンバー、そして資本金ではないでしょうか。
このうち、「資本金をいくらにしたら良いのか?」これは多くの起業家が悩む問題です。
資本金は1円からOK!
会社法制定以前の商法においては、株式会社の設立には1,000万円以上、有限会社の設立(※)には300万円以上の資本金が必要であると定められていました。そのため、株式会社を設立したい場合は、1,000万円という大金をどう調達するかが大きな課題となっていました。
しかし平成17年7月26日に交付された会社法では、この最低資本金制度が撤廃されました。これによって、資本金1円のいわゆる「1円会社」も設立が可能になりました。
※現在、有限会社を新たに設立することはできなくなりました。
実際には資本金1円の会社というのはそうそう見かけませんが、1万円や10万円での会社設立は多くあります。昨今多いITやコンサルなどの事業での起業であれば、設備や仕入れが不要で元手が少なくてもスタートしやすいためかと思います。
さて、それではいったい資本金はいくらにしたら良いのでしょうか?
でもその前に、資本金ってそもそもなんなのでしょう?
資本金ってなに?
以前、増資のご相談にいらした社長さんに「現在、資本金はいくらですか?」と伺ったところ、「現在すっかり苦しい状況でして、資本金は0円になってしまいました。」と言われたことがあります。その社長さんは、資本金=会社の全財産、と思われていたようです。
資本金は、会社の現在の残高のことではありません。「これまでに株主が会社に対して払い込んだお金」=「出資したお金の額」のことです。
例えば会社設立時に株主となる人が300万円出資し、その後、増資によって200万円増やした場合、資本金は500万円になります。仮に、設立時に出資したお金の300万円を使い切っていて貯金がなくなっていても、資本金が減るわけではありません。
資本金はいわば、入れ物のようなものです。資本金300万円の会社の場合、300万円という入れ物に300万円分のお金が入った状態で会社がスタートします。経費として使った分はなくなり、利益となった分はプラスされ、会社のお金は上下しますが、増資や減資をしない限りは、入れ物の大きさ自体は変わらないのです。
そしてこの入れ物の大きさは、信用の大きさでもあります。資本金があるということは、それだけ出資できる人がいる、会社の体力がある、というふうに見なされますので、信用度が上がるのです。
資本金はどうやって決めるの?
さて、ではいったい資本金はいくらにすれば良いのでしょうか?
考え方としては、売上が順調に上がり始めるまでの期間の必要経費分を用意しておく、というのがセオリー通りと言えるでしょう。
物やサービスを売り上げて利益が出ない限りは、資本金以外には会社の収入源がありません。そんなとき資本金が少ないと会社のお金がすぐに底をついてしまい、事業が続けられなくなってしまいます。
個人経営のような場合は、一時的に社長が自分のポケットマネーを出して凌ぐことになりますが、会社としては社長から借金をした扱いになって負債が増えてしまいます。
できればそのようなことにならないよう、せめて初年度の必要経費分くらいを資本金として用意できると良いかと思います。
なお、資本金が1000万円未満の場合は、設立から2期分は消費税が免除となります。逆に言えば、1000万円以上であればこの免除は受けられませんので、資本金額を1000万円前後で検討されている場合には、その点も考慮しても良いかもしれません。
また、許認可が必要な事業を行う予定の場合には、資本金が要件になっている場合がありますので、事前に確認しましょう。
結局、いくらがいいの?
上記のとおり、資本金の適正な額というのは各企業によって異なります。
ただ、ときどき「それなりに格好がつく資本金っていくらですか?」という質問を受けることがあります。あまりそういうふうに資本金額を決めるのはオススメではありませんが、固いこと言わずに率直に答えるとしますと、ざっくりと300万円や500万円くらいかなと思います。
300万円は、以前の有限会社の最低資本金額でもありなんとなく格好がつきますし、元手があまりかからないタイプの業種であっても、300万円くらいあるとまずは落ち着いてスタートできるのかなと思いますので。