食品の安全性を確保するために、食品衛生法をはじめとした様々な法規制が存在します。
特に昨今では、食をとりまく環境変化や国際化等に対応すべく、従来から求められる環境整備や衛生確保のみならず、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理や、東京オリンピック・パラリンピックの開催や食品の輸出促進を見据え、国際標準との整合性を図るなど整備が進み、より安全が担保されていることが求められます。
また、食品を取り扱うと言っても、その営業形態は、調理、製造、処理、販売に分類され、それぞれに応じた許可や届出を各行政へ提出しなければなりません。
今回は、そのうち、飲食店の開業に向けた各許可と届出について紹介いたします。
保健所への提出
食品営業許可申請
いわゆる「営業許可」と呼ばれるもので、仮に許可が下りる前に営業してしまうと、食品衛生法違反に該当してしまいます。基本的にどのような飲食店であっても必要です。
まずは、お店を開く予定の最寄りの保健所へ事前相談しましょう。相談時期は、工事の着工前で問題ありません。
というのも、業態によって法令で求められる設備が違うこと、また各都道府県によって条件・内容に差異があり、仮に工事の完了後に設備不足などが発覚した場合には、すべてをやり直さなければならない恐れもあるからです。
お店の設計図などを用意して保健所へ相談し、設備不足などの指摘があれば、工事に反映することで対処可能です。
次に、実際の申請についてです。申請にあたり、下記の資料を用意します。
営業許可申請書
営業施設の大要・配置図
食品衛生責任者設置届
登記事項証明書(※法人の場合)
水質検査成績書(※貯水槽、井戸水を利用する場合)
注意すべき点は、お店ごとに「食品衛生責任者」の資格を持っている人が必要ということです。
食品衛生責任者になるためには、栄養士や調理師などの有資格者、もしくは、食品衛生責任者養成講習会を受講する必要があります。
食品衛生責任者養成講習会では、1日かけて衛生法規、公衆衛生学、食品衛生学を学びます。各都道府県で定期的に実施されているため、併せて保健所に確認し、申請前までに食品衛生責任の資格を取得しましょう。
警察署への提出
深夜酒類提供飲食店営業開始届出
いわゆる「深夜営業許可」と呼ばれるもので、「深夜0時以降も営業」し、「主にお酒を提供する」ときに必要な届出で、深夜0時以降も営業するバーやスナック、居酒屋などが該当します。
言い換えると、「深夜0時以降も営業」したとしても、「主に食べ物を提供する」ときは不要です。しかしながら、「主にお酒を提供する」に該当するかどうか判断が難しいため、念のため最寄りの警察署に確認したほう良いでしょう。
なお、どこでも深夜営業を行ってもいいわけではありません。例えば、住宅地で深夜営業することが認められていないように立地条件も関わってきます。テナントを借りる際に、併せて不動産業者へ確認することをお薦めします。
また、こちらも食品営業許可と同様に、必要となる設備や部屋の大きさなどの条件が存在します。工事が完了した後に発覚してしまった場合、手直しが必要となるため設計図面や内装計画を持って警察署に事前に確認しましょう。
次に、実際の申請についてです。申請にあたり、下記の資料を用意します。
深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
営業の方法
飲食店営業許可証
店舗図面
住民票
登記事項証明書と定款(※法人の場合)
メニューのコピー
上記のほか、警察署によってテナントの賃貸借契約書などの提出を求められることがあります。
風俗営業許可申請
パチンコ店、マージャン店やゲームセンター、インターネットカフェ、キャバクラやホストクラブなどは、風俗営業店と呼ばれます。風俗営業店を営業する場合には、いわゆる「風営法」の許可を得なければなりません。
なお、風俗営業は、基本的に午前0時を超えて営業することができません。
飲食店で風俗営業店に該当する場合は、以下の3種類です。
料理店、社交飲食店
キャバレー、待合、料理店、カフェ、その他設備を設けて客の「接待」をして客に遊興又は飲食させる営業
※接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」とされており、飲食行為に通常必要とされる以上の会話やサービス行為を指します。
低照度飲食店
喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客席における照度を10ルクス以下として営むもの
※ルクスとは、明るさの単位で、10ルクスは上映前の映画館の明るさと同程度となります。
区画席飲食店
喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むもの
これらに該当する場合は、風営営業許可が必要となり、深夜営業許可と同様に、立地条件と構造設備の条件が定められています。
消防署
防火管理者選任届
飲食店に限らず、不特定多数の人が集まる施設では火事を未然に防ぐため、防火管理者の選任が義務付けられております。
しかしながら、全てのお店が該当するわけではありません。お店の収容人数(客と従業員)が30名を超える場合に限り、言い換えれば、小規模なカフェやラーメン店などでは、防火管理者を選定する必要ないのです。
もう少し詳しく説明すると、防火管理者は、「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」に分類されます(※甲種>乙種)。
これは、お店の延床面積が関係しており、面積が300平米以上の場合は「甲種防火管理者」を、300平米未満の場合は「甲種防火管理者」、もしくは「乙種防火管理者」であることが求められます。
甲種防火管理者の方が対処できる施設の幅が広く、反対に、乙種防火管理者は、規模の小さい施設に限定されます。
防火管理責任者になるためには、各都道府県で実施されている防火管理責任者講習を受講する必要があります。
甲種と乙種で講習の内容に差はあれど、「防火管理の意義及び制度」、「火気管理、施設・設備の維持管理」、「防火管理に係る訓練及び教育」、「防火管理に係る消防計画」を1~2日かけて学習します。
受講が必要となる場合は、事前に講習会の日時を確認し、届出に備えましょう。