「いい商品をつくったのに、届けたい消費者に届かない」
その壁にぶつかった経営者たちの、なんと多いことでしょうか。
そんなときに的確に、よりよい情報を届けるための策がPR戦略です。
しかしどんなオシャレなデザインにしても、いいコピーを考えても、発信をする人が誰かで影響力が雲泥の差になることも珍しくありません。
現代の社会においてスマートフォンを見ない日はないでしょう。
そんな時代だからこそ「インフルエンサー」という言葉を耳にしたことはありませんか?
情報発信の影響力は、今やマスメディアだけではなく個人も行うことが十分可能です。
人から人へ情報が動く時代だからこそ、目を反らせない存在の〝インフルエンサーたちのプラットフォーム〟を持つ、FISM 株式会社 CEOの銭本さんにインフルエンサーマーケティングの最新情報を取材させていただきました。
FUNDAMENTAL/ INNOVATION/ SUSTAINABILITYの理念の会社を作るまで
プロフィール紹介 銭本 紀洋氏 プロフィール
FISM 株式会社 代表取締役/CEO
立命館大学在学中に株式会社ライフルーツを設立。大学生向けSNSの運営やフリーペーパーメディア事業を手掛ける。その後、ブログ等を活用したインフルエンサーマーケティング事業を行う。
2015年4月、FISM株式会社を創業し、代表取締役(CEO)に就任。
>まずは企業理念について、お聞かせいただけますか?
はい。弊社では、事業を通じて、
FUNDAMENTAL
社会が抱える課題の根本的な解決に貢献する
INNOVATION
社会的意義のある大きな価値を創造し革新を起こす
SUSTAINABILITY
社会の永続的な発展においてなくてはならない存在となる
ということを企業理念としています。
FISMは私にとって2社目の起業で、1社目は大学2年生のときに友人たちと10名ほどで学生向けSNSの運営やフリーペーパーの発行を目的とした学生ベンチャーを立ち上げました。
なかなか上手くいかず、会社のキャッシュも底をつき、みんな就職活動を始める時期になり、ひとりになってしまったのですが、私は代表者として銀行借入れの連帯保証人にもなっていたので辞めるわけにもいかず…(笑)
とりあえず広告代理業と呼べるほどのものでもないですが、そのような事業を行って食いつないでいました。
>学生時代にそんなに辛い経験をされたのですね…。
今振り返って客観的にみると、辛そうにも見えますが、あまり辛かった記憶はないですね。わりと楽観的でした。
こんな状況ですが、人のご縁には恵まれ、その頃からタレントやモデルなど、今まで関わることの少なかった職種の方々とも交流が増え、こういった出会いが、今のインフルエンサーマーケティング事業を始めるきっかけにもなったと思います。
当時、芸能事務所に所属していない読者モデルの方に、クライアントの化粧品を紹介してもらったのですが、それが20万円ほどの広告費に対して300万円くらいの注文が、彼女のブログに貼ったURLからありました。
>それは絶大な効果ですね!
そうですね。今は正直このような反響はあまり見受けられないのですが、当時は珍しくもなく、ブロガーを集めているだけで、クライアントからのオファーは増えていきました。
25歳くらいの頃、1日2,3時間の稼働でしたが、エスカレーターに乗ったように勝手に売上は伸びていき、そのあたりから自分の事業に違和感を持つようになりました。
もちろん悪いことをやっていたとも思っていませんし、クライアントにも喜んでいただいていたと思います。
なんというか、このような成り行きで始めた事業だったので、そこにはビジョンも理念もなかったんですよね。
前置きが長くなりましたが、その頃から、なんのために起業家になったのか改めて思い返し、心の奥底にあった想いを言語化したものがこの企業理念です。
消費は「価値観」を定量的に説明する上でわかりやすい指標になる
>そこから2015年4にFISM 株式会社様を立ち上げられたのですね。
はい。私が28歳のときに、COOの白枝と共同創業しました。
>3つの理念のもとに、事業でインフルエンサーマーケティングを取り扱っていらっしゃるのはなぜですか?
25歳からFISMを設立するまでの3年間、事業として何をするのかについてもすごく悩みました。中途半端にいろんな新規事業を企画してみたり、始めてみたり…
その頃、ちょうど日本でも「インフルエンサー」という言葉が使われ始め、その表現を聞いたときに、むしろコンプレックスとも感じていた自分の事業に対して、少し違った見方が出来たんです。
「インフルエンサー」という言葉の定義について、一般的にはSNSでフォロワーが多い人のことを指すと思いますが、おそらく「第三者に影響を与える個人」というのが正しい定義だと思います。
つまり、SNSの普及以前から、友達が一人でもいて、何かしらの影響を与えていたら、広義ではインフルエンサーと呼べるのではないかと思っています。
この影響の与え合いと言いますか、人と人との繋がりやコミュニケーションの相関性を研究することで、新しい社会を創造できるのではないかと考えました。
今私たちは、マーケティングという分野で、この研究成果を活かしていますが、このような経済活動だけでなく、例えば、交友にしても教育にしても、私たちの生活は、生まれた土地、通った学校、就職した会社など所属する「コミュニティ」に影響を受けています。
これまでは国や市町村など、物理的距離をベースに発展したコミュニティが強い影響力を持っていたと思いますが、インターネットの発達、とくにSNS以降は、精神的な距離というか、趣味趣向や哲学などの近い人たちが互いに影響し合ってコミュニティが生まれているように思います。
そういった背景の中で、「消費」というのは、その人の「価値観」を定量的に説明する上でわかりやすい指標だと思っており、私たちはまずインフルエンサーマーケティングに注力することにしました。
>インフルエンサーマーケティングをする上で、特にお得意の業界はどちらでしょうか?
現状だと、美容コスメ、アパレル、食品のメーカーさんなどが実績も多く得意としています。
対象国も日本だけでなく、中国、台湾、香港、東南アジアなど海外でも展開させていただいています。
価値観やライフスタイルからコターゲッティング出来るのがインフルエンサーマーケティングならでは
>時代はリアルからどんどんネットが中心の社会になり、広告もSNSを活用することにフォーカスされてきました。あらためて銭本さんのお言葉で、インフルエンサーマーケティングの価値をお聞かせいただけますか?
インフルエンサーマーケティング自体は、消費者とのリレーションを構築したり、情報伝達するための一つの手段に過ぎないと思っています。
インフルエンサーマーケティングに価値があるのではなく、どのようなマーケティング戦略を描くのか、その設計次第でインフルエンサーマーケティングの持つ役割も価値も変わってきます。
ただ、特徴という意味では、価値観やライフスタイルという観点からコミュニティごとにターゲッティング出来る数少ないマーケティング施策だと思います。
先程、私がこのような事業を始めた頃、20万円の広告で300万円の売上げは珍しくなかったとお話しましたが、その商品たちは、私の把握している限り、ほぼ残っておらず、数年前から見かけなくなりました。
当時はすごい費用対効果だと言われていましたが、今振り返ってこの現状見ると、本当にそうですかね、という疑問もあります。
目先のROASだけで費用対効果を測って、媒体選定していても、そのような媒体は競合他社も同じように出稿できるので、そういう媒体だけを追いかけていても差別化にならないんでしょうね。
最近では、LTV(Life Time Value)という言葉もよく使われるようになりましたが、当時は聞き馴染みがありませんでした。
良くも悪くも、ハッタリが効きにくい市場環境になっていると思うんですよね。
こういった背景において、ターゲットとなるコミュニティを代表するインフルエンサーを通じてリレーションを築いていくことは効果的だと考えています。
>フォロワーは購入できる時代ですが、改めてインフルエンサーのどのようなところを意識してチェックされていらっしゃるのでしょうか?
このような視点でインフルエンサーマーケティングを行うためには、前提として、起用するインフルエンサーがどのようなコミュニティに対して影響力を持っているのか把握出来ている必要があります。
私たちは、そのために『SPAD』というシステムを開発し、インフルエンサーのプロファイルだけでなく、フォロワーの属性を機械学習で解析することで、そのあたりを可視化出来るようにしています。
そうしていると、誰がフォロワーを購入しているか、なんとなくわかるんですよね。
そういうフォロワーに感じられる価値というのは、やっぱり極端に下がるので、お願い出来る案件も減ります。
そもそもフォロワー単価○○円みたいな発想もおかしいと思うんですよね。
マーケティング的な視点で考えると、フォロワーの単価が高いか安いかは、そのフォロワーがそのクライアントにとってターゲットかそうじゃないかによって決まるべきで、一律で同じ単価というのはナンセンスだと思います。
たしかに、これまではそういうことを調べる術がなかったので、仕方なかったところもありますが、最近では弊社だけでなく、そういった分析をしている会社も増えつつあるので、実施される際はこのあたりを意識されることで可能性が広がると思います。
>なるほど。ご回答をありがとうございます。
目指すは「新しい世界地図」を描くこと
>最後に、FISM株式会社様が目指されていることは何でしょうか?
これらの数値をもとにグラフ上に分布していくと、近い属性を持った人たちが同じようなところに固まり、ひとつひとつが村のように見えてくるんですが、今後は世界中のインフルエンサーを対象に研究していきたいと考えています。
ここで得られる世界規模のデータを元に同じようにマッピングすることで、価値観やライフスタイルが多様化するこれからの時代にふさわしい「新しい世界地図」を描きたいと思っています。
>本日はありがとうございました!
ありがとうございました。