みなさんこんにちは。行政書士の宗岡です。
平成30年11月30日から公証人法施行規則が一部改正され,株式会社や一般社団法人の定款認証の方法が変わりました。
本日は,本改正のポイントや手続の変更点について,個人が株式会社を設立する際の定款認証を例に解説します。
この度の改正により,法人成立の時に実質的支配者となる者の氏名・住所・生年月日及びその者が暴力団員等に該当するか否かの申告が義務となり,定款の認証の際に「実質的支配者となるべき者の申告書」を一緒に提出しなければならなくなりました。
この申告をしない場合や暴力団員等に該当する者が実質的支配者となる場合,その法人について公証人は定款の認証をすることができなくなります。
申告された実質的支配者となるべき者が暴力団員等に該当し,又は該当するおそれがあると認められた場合には、嘱託人又は実質的支配者となるべき者は、申告内容等に関して公証人に必要な説明をしなければなりません。
※ここでいう嘱託人は発起人や行政書士等の定款の認証手続きを行った者を指します。
「実質的支配者」とは(株式会社の場合)
① 株式の50%を超える株式を保有する個人
② ①に該当する者がいない場合には,25%を超える株式を保有する個人
③ ①②にも該当する者がいない場合,事業活動に支配的な影響力を有する個人
④ ①②③にも該当する者がいない場合,代表取締役
申告書は「実質的支配者となるべき者の申告書」のPDFデータに記名及び電子証明をしたデータをメールで送信する方法や印刷したものに署名押印したものをFAX・郵送で送るといった方法で公証人へ提出します。
なお,この申告は,定款認証の嘱託までに行えば良いこととされていますが,実務上は手続きを迅速に行うために定款案の確認を公証人に依頼する際に一緒に,上記の方法で提出するといった運用がされています。
この申告書が提出され,実質的支配者となるべき者が暴力団員等に該当しないと認められる場合,公証人が定款の認証を行うことになります。
従来は,定款の認証をした際に,定款に公証人による認証文が付くのみでしたが,本改正により定款に加えて,実質的支配者となるべき者の申告書,発起人の印鑑証明書の写しに「嘱託人は『実質的支配者となるべき者である○○○○は暴力団員等に該当しない。』旨申告した。」旨の文言が付加された文書が合綴された文書を受け取ることになります。
定款の電子認証をする場合には,あらかじめ実質的支配者となるべき者の氏名及び読み仮名をデータ入力するように変更されているため,発起人の名前の読み仮名を確認しておく必要があります。
今回の改正により,提出書類や確認事項が増えたことに加え,実質的支配者の調査を行う期間が数日間必要になるため,会社の設立をする際は,余裕をもったスケジュールで進めるようにしましょう。