3,000万人を突破した年間訪日客数
1月中旬に石井啓一国土交通大臣が昨年の訪日客数が過去最多の3,119万人であったことを発表しました。一昨年実績から8.7%の増加であり、2013年以降は6年連続で最多を更新し続けています。昨年は9月以外の11ヶ月で前年同月実績を上回りました。例外月の9月は台風21号の影響から関西空港が一時的に使えなくなり、また北海道には地震がありました。
訪日客の国及び地域別構成比では中国、韓国、台湾の合計が60%以上を占めています。中国は838万人と最も人数が多く、一昨年より約14%増加しました。中国、韓国、台湾にとっては旧暦の1月1日が2月5日であり2月上旬に連休を取るために、例年2月は中国などからの訪日客数が増える傾向があります。
一昨年の国別観光客数ではフランスの8,691万人が最も多く、2位から10位は次の通りです。第2位はスペインの8,178万人、第3位はアメリカで7,641万人、第4位は中国で6,074万人、第5位はイタリアの5,825万人、第6位はメキシコの3,929万人、第7位はイギリスの3,765万人、第8位はトルコの3,760万人、第9位はドイツで3,745万人、第10位はタイの3,538万人です。日本が目標の4,000万人を達成すると第6位にラインアップすることが予想されます。
訪日客数増加の恩恵と課題
訪日客数増加によって百貨店は大きな恩恵を受けています。訪日客による昨年の消費額は4兆5064億円と一昨年実績に対して2%の増加と伸び悩みました。一方、百貨店の免税売上高は3,396億円と一昨年に対して26%の増加と大幅に金額を伸びしました。
昨年上半期の都道府県別訪日客数は、多くの百貨店が存在している三大都市圏に集中しています。地方圏が訪日客数増加の恩恵を受けるためには、訪日客を地方圏に誘導する必要があります。その手掛かりになりそうなのがバスの利用です。
地域圏では福岡、北海道、大分がバス利用人数の上位に名を連ねています。福岡が訪日客のバス利用人数が最も多く、一昨年実績は161万人でした。福岡では3年前と比較しますと100万人以上もバス利用人数が増えています。福岡に次ぐ2位の北海道でのバス利用の訪日客数は99万人であり、3年前と比べて47万人ほど増えています。3位の大分では87万人がバスを利用しており、3年前より65万人も増えています。今年以降、訪日客の地方圏への誘導を増やすためには、バスの運転手を確保してバスを増便することが課題になります。
東京オリンピックそして大阪万博
2020年に目標である4,000万人を達成する鍵は東京オリンピックが握っています。東京都が1月下旬に発表した旧築地市場の再開発案は、多分に訪日客の囲い込みを意識しています。再開発案は旧築地市場を4つのゾーンに分けています。中心となる「おもてなしゾーン」には国際会議場を設置して、高級ホテルを誘致する構想です。「交流促進ゾーン」は13ヘクタールの面積を確保して文化施設や研究開発拠点を配置する計画になっています。「ゲートゾーン」はバスや舟運のターミナルにすることが予定されています。「水辺の顔づくりゾーン」では緑地と広場を配置して、さらにスーパー堤防を築く計画です。今後は意見公募を行い「築地まちづくり方針」として3月末に正式決定することになっています。
フランスやスペインなど5,000万人以上の観光客を集めている国があります。そのため4,000万人という目標達成に甘んじることなく、さらに訪日客数を増やすことが期待されます。東京オリンピックの次は2025年の大阪万博が訪日客数増加に貢献することが期待されています。大きな集客効果が見込まれているのが夢洲(ゆめしま)に誘致される統合型リゾート施設です。夢洲とは大阪湾にある人工島のことで大阪万博の会場地です。この統合リゾート施設にはカジノを配置すること、そして2024年には大阪メトロを延伸することが予定されています。東京オリンピックと大阪万博を原動力にして訪日客数を4,000万人、さらに5,000万人へと増やしていくことが期待されます。