IT社会と言われる今日の時代、会社の看板になるのがWebサイトというのは誰もが実感していることでしょう。
ひと昔前は、「Webサイトを持っている会社もある」という時代でしたが、急速に〝なくてはならないもの〟へと変貌を遂げてきました。
つまり経営者たちは、自分がITやデザインの知識があってもなくても、クリエイティブの価値を認め、時代についていかないと信用問題に関わると言っても過言ではないでしょう。
クリエイターとして独立をして、今や大阪・東京に100名以上のクリエイター系フリーランスが所属する有料コミュニティを築き上げてきたのが、今回取材を依頼した株式会社クリエイティブユニバース(以下(株)CU)の代表取締役である樫本さん。
「本当に価値があることを作り続けている人たちが認められる社会にしよう」
「クリエイティブな人を幸せにしよう」
という信念のもと、経営者と仕事ができるクリエイターを育成する樫本さん。
クリエイターとしての視点と経営者の視点の双方から、経営者が知っておくべきクリエイティブの価値や、より効果的で実践がしやすいクリエイターの選び方、関わり方を詳しくお聞きしました。
プロフィール・会社について
樫本祐輝氏 プロフィール
株式会社クリエイティブユニバース 代表取締役
1985年生まれ 岡山県出身。
21歳でフリーランスWebデザイナーとして独立→ゲーム開発会社リーダー→マーケティング会社→NPO(非営利団体)でニートの就労支援の後、クリエイター支援や企業のIT/クリエイティブ顧問として独立し、収入4桁を達成し2018年に法人化。フリーランス向けセミナーを過去東京・大阪にて7年間50回以上開催。
フリーランス・クリエイター支援としてクリエイター・フリーランスギルド「TheCreative」を立ち上げクリエイターの駆け込み寺として様々なクリエイターの独立や問題解決に貢献。現在は月1万と有料にも関わらず100名もの規模に。
「#クリエイター祭り」など知見をシェアするためのイベントも開催。未経験からの転職からフリーランスがチームを作るまで幅広い知識を持つ。
Blog:http://stid.jp/wp/
Twitter:https://twitter.com/strive
#1、21世紀をつくるクリエイターたちが幸せになれるように
→ 樫本さんの法人化記念パーティに様々なクリエイターが集結した様子
>昨年度は法人化をおめでとうございます! クリエイターでありながらも、理念を大切にしている樫本さんですが、まずは御社の事業理念である「クリエイティブな人に幸せを」の想いを教えていただけますか。
「創造性ある仕事をしている方々を応援し、自分自身の幸せな将来を描けるようにサポートする」という想いを込めた理念です。
クリエイターの人たちを支援することで、創造性のある仕事が、より世の中に認められるようにしたいです。
「いい作品をつくりたい」と思って追求しているクリエイターたちが、働きやすくなり、時間の面や経済の面を含めたライフスタイルでも幸せを感じながら社会に価値を与えるようにしたいと思い続けています。
>どんなことがきっかけだったのでしょうか?
専門学校を卒業した頃から、スキルがあるクリエイターたちが低収入である現実が気掛かりでした。クリエイターはただ作品をつくるだけではなく、リサーチをしてユーザーのことを考えた設計をしています。
8年前の25歳のときにNPO法人でニートの就労支援をしたことが想いを強めるきっかけになりました。スキルという観点でいうと、会社に即戦力として貢献できるものが現状はない人たちでも、専門家の支援によって会社へ入っていく前向きな姿を見て、人の人生に関わるやりがいを実感しました。
同時に人の優劣をつけるわけではないのですが、これができると言えるスキルを持っているクリエイターたちは、もっともっと社会で活躍できるなと「いける!」と確信を感じました。
そこからクリエイターを対象にしたフリーランスセミナーを開催し、後にコミュニティも立ち上げ、現在は東京と大阪で100名を超えるフリーランス・クリエイターギルド「TheCreative」の設立にも繋がりました。
>クリエイターさんの可能性を確信されたのですね! では、(株)CU様の事業内容をお聞かせいただけますか。
主には3つで、
- 人向けコンサルティング
- フリーランス・クリエイター向けイベント開催
- フリーランス・クリ法エイターギルド「TheCreative」の運営
です。1つめのコンサルティングについては、CTO(chief technical officer または chief technology officer/最高技術責任者)の役割をしています。
会社を経営する上でIT・マーケティング・デザインが必須だと考えていますが、社内ですべてを熟知しているケースは多くありません。クリエイターの育成をすることもあれば、どういう人を採用するといいのかをお伝えすることもあります。一社一社の状況に合わせてサポートが必要なところをコンサルしています。
2つめのイベント開催は、フリーランスやクリエイターのセミナー・交流イベントを行っています。昨年の秋には200名規模のイベントを大阪で開催し、今年は4月28日に東京で行います。スタッフは次に説明をする有料コミュニティ「TheCreative」のメンバーで回しています。
3つめの「TheCreative」は起業家のようなフリーランス・クリエイター育成です。クリエイターと一言で言っても職種は様々で、デザイン・Web系・動画・カメラ・イラスト・アニメ・ライティング・SEO・広告運用などを専門にする人が集まり、近い業種ではあっても同じ専門分野の人だけのコミュニティではないところが特徴のひとつですね。
けれど共通しているのは〝クリエイティブなことが好きで、幸せになりたい人であること〟です。
今後ますます人口減少が進んでいく中で、仕事内容よりも人の時代になっていきます。今まではスキルとコミュニケーション能力で評価されていたものが、起業家が求められる「世界観を持って周りに発信をしているのか」「まわりを巻き込んでいけるのか」を、クリエイターも必要な時代になってきました。
だからこそ「TheCreative」では、スキルの向上はもちろん、ひとりひとりが理念や世界観を持ち、人に選ばれる理由があるクリエイターになる環境をつくっています。
レベル感は様々で、
- クリエイティブ業界に入りたい人
- すでにクリエイティブ業界にはいるけれど、会社に相談できる人がいない人
- 本気で独立をしたい人
- 独立をして年数経ち、自分1人では仕事を回しきれないので、信頼できるパートナーや弟子が欲しい人
というそれぞれのフェーズのメンバーが集まっていますね。
#2、経営者のベストパートナーになれるクリエイターの育成ノウハウ。100人以上と関わってきたからこそ大切にしていること
>樫本さんが思う、クリエイター/フリーランスが抱えている課題とは何だとお考えでしょうか?
業界としては先ほどお伝えした低収入の職種であることですが、個々に対して感じることは「何かを突破したい!」という思いに対して、突破できないことでしょうか。自分で足りないものを把握できていますが、「自信がない」という感情的な理由でその一歩先へ進めないケース、「情報がない」という知識や人脈が原因のケースを多数見かけてきました。
クリエイターの中にも
- The クリエイターとしてクリエイティブスキルで特化をする
- ビジネスやマーケティングに理解のあるクリエイター
などがあります。
どちらが正解なのかは個々によりますが、そこで悩み止まってしまうんですよね。
>そういったクリエイターさんにはどのようにアドバイスをされているのですか?
まず共通して伝えたいことは、自分の判断軸になる理念やビジョンなど世界観を持つことです。そうすると迷いがだいぶ少なくなりますし、迷ったときに立ち返る原点になりオススメです。
また、自分が関われるときは相手の性格からどういう行動をしているのかを一緒に振り返ることが多いですね。それで次の道筋のアドバイスをしています。
このアドバイスの仕方は一般的な経営コンサルタントの方と異なるでしょう。多くの方は「稼げる方」を正解にします。事業をするにあたり売上は大切なので、決して間違っているわけではありません。
しかし僕はこれまでにも色々な人の人生の話を聞き、1,000人の前でトークではなく、1,000人の人と会話をして模索してきた者として、目の前の人とのコミュニケーションでその人の性格や感情を理解し、相手が一番幸せになれる方法を一緒に考えています。
>それはクリエイターさんとしても、自分に合ったアドバイスをいただけて非常に心強いですね!樫本さんはどのようなクリエイターさんが増えてほしいと思って、アドバイスやご指導をされているのでしょうか?
コミュニケーションや人格はボロボロであっても「絶対この人にお願いしたい!」と圧倒的な作品で魅了し、語らなくても人を説き伏せるクリエイターに増えてほしいです。
これからは人を魅了し、ファンを増やすようなコンテンツ力が求められる時代です。
周りをいかに巻き込めるのか。この分野ではこの人しかいない!と思われるほど、好きなものやワガママを追求できるのか。
一方で、真反対ですがマーケティングスキルがあって依頼者のニーズをくみ取りながらも、自分のこだわりを反映させ、数字も個性も結果を出せるクリエイターにも増えてほしいですね。
>経営者のパートナーとなれるクリエイター/フリーランス育成をするにあたり、育成システムのポイントも教えていただけますか?
マーケティング入門のワークは必ず行っています。
自分で有料のイベントを行うことによって、①企画をして②ランディングページ作成をして③文章を書いて④広報して⑤会場などの雑務も行い⑥当日運営⑦収益計算
と、ざっくりでもこのくらいやることがあります。
イベント主催をすることによって
「どうすれば人が来る?」とコンテンツの見直しをしてマーケティングをやり直すこともあれば、「なぜいい企画なのに人が集まらない?」というPRの壁にぶち当たることもあるのです。
いずれにしても、ここで思考してアクションをすることによってまたひとつ経験となるのです。
他にもコミュニティ内でコンサルの練習をしていますね。
「◯◯さんにサービスを売るためにどうする?」ということを考えて、先輩はそれをコンサルします。
このワークによって、相手にサービスの価値を伝えることや、お互いの理念やVisionを知ってコミュニケーションをすることなど、経営者と話せるクリエイター教育のカリキュラムを組んでいます。
# 3、Webサイトやデザインをつくるときにはこんなクリエイターと組むべき!優秀なクリエイターの見極め方
>経営者がサイト制作やデザインなどクリエイターに発注する際には、どのようなクリエイターに依頼をするといいのでしょうか?
依頼を検討しているクリエイターの制作実績を確認して世界観を知ることが重要です。前提としてクリエイターが実積を公開していることが必須ですが。
Web上で気に入ったサイトがあれば、誰に依頼をして作ってもらったのか聞いてみることもオススメです。社内のクリエイターと言われてしまったら仕方ありませんが、もしかしたら発注先を教えてもらえるかもしれないですよね。
イメージが決まる大事な入り口なので、妥協せずに好みの世界観がつくれるクリエイターを探して、誰の作品か追求してほしいと思います。当たり前ですが得意な人に得意なことをお願いすればいいんです。
>経営者の優秀の定義が数字で決まるように、優秀なクリエイターとはどんな人のことでしょうか?
2パターンあると考えています。
ひとつは作品で魅了して、人を惹きつけるクリエイターです。こうした人たちの特徴はブランディングができていて、Apple製品みたいに高いけど欲しい!って思える方々ですね。
もうひとつはヒアリングが深いクリエイターです。
「なぜその事業をやりたいのですか?」と目先のデザインなどのカタチにとらわれず、将来まで聞いて発注者の世界観やビジョンを知り、反映させてくれる人だと思います。
>サイト制作やデザインを発注するという前提で、経営者とクリエイターの間で起こってしまうトラブルでよく耳にすることはありますか?
外部のクリエイターに依頼をするときに多いのはコミュニケーションの食い違いですね。
発注者(経営者):すべて任せたい
受注者(クリエイター):仕事の達成要件として、つくるものに対するゴールがほしい
という、互いにして欲しいと相手任せにすれ違うケースはよく耳にします。
こういった事態の場合、本来は経営者とクリエイターの間に、つくる以外の調整をすべて行うディレクターが必要なケースが多いです。
ディレクターを見つける、もしくは、ディレクションができる人に依頼をすることがオススメです。
>このようなコミュニケーションの食い違いを回避するために、経営者が必要な準備もあればお教えください。
まずは相手がプロだと安心しないことです。
「こっちができることは◯◯、あなたにしてほしいことは◯◯」と確認をして、できることとできないことを事前に擦り合わせることがいいでしょう。
お金を支払って終わりではなく、理想のカタチをできるだけ具体的に伝え、要望があれば何にこだわりがあるのか、どこまで自分たちでできているのか、何がわからないのか、
など事前に共有しておきましょう。
もうひとつは、キャッシュに余裕があればIT・クリエイティブ関係のアドバイザーに入ってもらうことです。自分の人脈にいなければ、セミナー開催するくらいのノウハウがある企業の方に紹介してもらうのがひとつの手段で有効です。出来る方は忙しいので仕事は受けられないけどアドバイザーなら可能という方もいます。
>できることやしてほしいことの擦り合わせの重要性は、デザインやIT関係でもビジネスマン同士の交渉と同じなのですね。では、クリエイターやフリーランスと仕事をする経営者に知っておいてほしいことをお伝えください。
今やどの会社もWebサイトを持っていることが当たり前になり、クリエイティブは会社の顔として身近なものになっています。
ゆえに「クリエイティブなことをしっかりしていないと信用できない」と思われかねないでしょう。
もしWebサイトやデザイン(ロゴ、パンフレット、LPなど)にお金をかけることに躊躇っていたら、それが経費なのか投資なのか考え直してほしいです。もちろん、ひとつの投資になります。
会社の理念やビジョンを喋って共感してくれるクリエイターを探して、お互いにとっていい仕事をしてほしいです。
#4、クリエイターの職業に新しい風を。唯一無二を作り上げ続ける人たちが幸せになれる社会へ
>樫本さんが目指している世界観や世の中に広げていきたいものを教えてください。
日本一のクリエイターやフリーランス支援のプロを目指しています。
まだまだこの業界は平均年収が低く「一握りしかやっていけない」というイメージが定着しています。
しかしクリエイターの作業量が報われるくらいしっかりとした収入を得て、子供たちや中学生・高校生からもヒーローのようにもっと憧れの職業にしていきたいです。
クリエイターは自分の創造性と、目の前のお客様のニーズで仕上がるものはそのとき、その人たちが関わることで生み出される唯一無二のものをつくり続けられます。だからこそ、案件ごとに異なるので刺激的な日々を過ごせ、自分らしさを表現しながら生きられる素晴らしい職業です。
色々な人が作品をつくっている瞬間や、できあがった良質な作品をみることを無限に続けていき、僕自身も刺激を受けていいもの・いいクリエイターを作り続けたいですね。
クリエイティブな人に幸せを!これからもそんな社会をつくっていきます。
→ Twitterのトレンド入りするほど大盛況な「クリエイター祭り」(商標出願中)。2019年4月にいよいよ東京でも開催。
【編集後記】
答えがあるものと答えがないものを掛け合わせ、唯一無二の作品を世の中に生み出し続ける。人々の心に残り、興味を沸かせる作品を作り続ける人たちがいるから、文字だけでは汲み取れない印象を与えているのだと気が付くことができました。
事業の具体的なビジョンをデザインという抽象的なものへ変換する。
マーケティング視点でニーズを取り入れながら、感性も含まれる作品を作り続けるクリエイターは崇高であり、その職業が世の中に与えるエンターテインメントの価値がこれからもっと認められる社会であってほしいと願います。
そうしたクリエイターを全力で育成する樫本さんの動きに今後もご注目です!
【information】
クリエイター・フリーランスのためのメディア「次世代フリーランス研究所(通称フリラボ)」を開設。
樫本さんのセミナーや役立つ情報はもちろん、個性的なフリーランス事例や新卒フリーランス相談会など長年の支援してきた立場だからこそ発信できる情報を提供。