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社会保険に加入しない企業の末路はどうなるのか

公開日:2017.09.04

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法人事業主および、5名以上の従業員を雇用している個人事業主(一部の業種除く)は、社会保険(=「健康保険」+「厚生年金保険」)に必ず加入しなければなりません。

しかしながら、現実には社会保険の加入対象であるにも関わらず、未加入の事業主は少なからず存在します。私自身も、「社会保険に未加入のままではまずいですか?」という相談を未加入の事業主様から受けることもしばしばあります。

そこで、本稿では社会保険の未加入がどのような結末になるのかを説明したいと思います。

 

強制加入までの流れ

社会保険に未加入の事業主が最初に危機感を持つのは、年金事務所からの社会保険加入を勧奨する通知書が届いたときです。年金事務所は、社会保険に未加入と思われる事業所に、社会保険への自主的な加入を促す通知書を定期的に送っています。

通知書に応じて社会保険に加入すればそれ以上の問題にはなりませんし、自主的に社会保険に加入する事業主に対しては、現在のところは、原則として申請があった日からの加入を認め、過去の未加入に対しては不問にするという実務運用がなされています。

しかし、通知書を無視し続けると、年金事務所への呼び出しや事業所への立ち入り調査ということになり、最終的には職権で社会保険へ強制加入をさせられてしまいます。

職権での強制加入となった場合、保険料徴収の時効は2年なので、最大2年間さかのぼって社会保険に加入させられてしまいます。もちろん、社会保険料も2年間分さかのぼって、まとめて発生しますので、最悪の場合は、社会保険料倒産にもつながります。

ですから、年金事務所からの通知書を受け取った場合は、早かれ遅かれ逃げられないものと腹を決め、自主的に社会保険に加入すべきです。もし、社会保険料の負担が厳しい場合は、従業員に説明の上、社会保険料を捻出するための賃下げなどもやむを得ない措置でしょう。

 

従業員からの訴えによる強制加入の場合も

事業主によっては、うちにはまだ加入勧奨の通知書が届いていないので、当面は未加入で様子を見ればいいかな、と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、その考え方もリスクがあります。

というのも、昨今はインターネットによる情報普及などもあり、働く人の権利意識が高まっています。従業員が、事業主が社会保険に加入してくれないことを不満に思い、年金事務所に相談をすることがあります。

年金事務所は、従業員から相談をされると、従業員の正当な権利に基づいて会社を指導しなければなりませんから、「過去の分は不問に付す」というような穏便な対応を取ることができません。当該従業員がさかのぼっての加入を希望するならば、さかのぼって加入するよう会社に指導をし、会社が従わなければ職権で強制加入をさせるのです。

この点、事業主の中には、従業員もさかのぼって本人負担分の保険料を徴収されるのだから、嫌がってさかのぼり加入なんてことは言わないだろう、と高を括っている人もいるかもしれません。

しかし、社会保険にさかのぼって加入した場合、さかのぼった期間において従業員が自ら納めていた国民年金保険料や国民健康保険料は還付されますので、従業員にはさほど金銭的負担は無いのです。国民健康保険料が高い地域ですと、むしろ、会社で社会保険に加入したほうが得だったというケースも、実は少なくありません。

 

社会保険未加入のその他のデメリット

社会保険の未加入は、さかのぼり加入のリスクだけではありません。その他にも、ハローワークで求人を出すことができないとか、厚生労働省系の助成金を受けようと思っても欠格事由に該当するなど、様々なデメリットがあります。

求人にあたっても、前述したようハローワークで求人を出せませんが、民間の媒体経由で求人を出しても、良い人が集まらなかったり、内定辞退をされてしまったりもします。

そういった、採用や助成金のデメリットを防ぐ観点からも、社会保険にはきちんと加入しておきたいものです。

 

まとめ

社会保険に加入しないことは、最悪、2年さかのぼりの強制加入で倒産にもつながりかねない経営リスクであるということがお分かりいただけたでしょうか。

確かに、社会保険料の負担は決して小さいものではありません。しかし、いつ年金事務所から強制加入させられるかをビクビクしていたら、安心して本業に集中できませんし、社会保険から逃げ回っていては、従業員からの信頼も得られないと思います。

社会保険は法律上のルールですので、正しく加入して、経営を進めて頂きたいものです。

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投稿者について
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榊裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。

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