「マネジメントは部下を持つ立場になって学べばよい」という思想
この思想には2つの誤認が含まれているように思う。
1つ目は、部下を持つ立場になって学ぶのでは出遅れている、ということ。
部下を持ったその日からマネジメントは始まるわけで、「実践しながら学びます」というOJTが上司に許容されるのかはいささか疑問だ。はたして、右往左往する上司に部下はついてきてくれるのだろうか。
2つ目は、部下のいない立場でもマネジメントは発生しうる、ということ。
マネジメントとは、必ずしも部下に対してのみ発生するわけではない。一人で起業した人であっても、いやむしろ一人起業家の方が、戦略策定やリスクマネジメントについて熟知しておかねばならない。また、社内会議はなくても、より重要な顧客との会議や社外のプレゼンがあるため、会議マネジメントを知らないわけにはいかない。
こういった理由から、起業家の方にもビジネスパーソンにもお役に立つであろう>東京商工会議所と資格の学校LECの共催セミナー「明日から使えるマネジメントの基礎知識」の要約レポートをお届けしたい。
セミナー講師
大庭 聖司(おおば せいじ)氏
OHBAコンサルティング代表・LEC東京リーガルマインド専任講師・東京都よろず支援拠点コーディネーター。
ITシステム導入、顧客管理、飲食店支援、創業支援、新規事業開発などさまざまな支援を行っている気鋭の経営コンサルタント。講師としても、その歯切れの良さと論理性、具体性から、受講生の圧倒的な支持を誇る。慶應義塾大学院理工学研究科卒。
組織のまとめ方
会議マネジメントの基本
1.メンバー全員に主体的に参加してもらう
事前に議題が提示されていない、議事内容が整理されていない会議はNG。メンバー全員が主体的に当事者意識を持って会議に参加するためには、会議をマネジメントする側の事前準備が極めて重要。
2.他者の意見を聴く環境づくりに努め、安易に妥協しない
他者の意見を聴かない独走を許すのであれば、そもそも会議を開く意味がない。他者の意見を聴き、自身の意見も出せるような環境をつくり、安易に妥協することなく闊達な意見交換を引き出すことが望ましい。
3.一定の合意を形成する
会議の目的と求める成果を事前に明確に定めて周知した上で、その成果(結論)を出すべき。結論が曖昧なまま終わる会議、議事録不在の会議はNG。
4.ファシリテーターとして会議を中立的・客観的に進行する
会議の主役は参加者であってファシリテーター(進行役)ではない。上記2、3のように「意見の発散」→「意見の収束」を図れるよう、会議をコントロールするべき。
部下のマネジメント
1.率先して挨拶する
挨拶はコミュニケーションの基本。部下への指示・指導をする前提として、部下からの信頼を獲得することが必要であり、そのためには基本的なコミュニケーションを疎かにしてはいけない。
2.注意する際にはTPOに配慮する
「直接本人に」「すぐに」注意するように心掛ける。ただし人前で注意するのはNG。
3.リーダーシップを発揮する
チームの目標を達成するために、①経営理念やビジョンを理解し、②それを部下と共有してベクトルを合わせた上で、③行動する。
4.部下のモチベーションを高める
部下個々人の内にある「欲しい」という気持ち(動因・ドライブ)を見極め、それを満たすための目標や目的(誘因・インセンティブ)を設定する。
業務の進め方
自社・市場・競合等のフレームワーク
1.「3C分析」を行う
問題を発見し戦略を策定すべく、「3C」、すなわちCustomer(市場=顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)を分析する。
2.「SWOT分析」を行う
内部環境要因として、強み (Strength)、弱み (Weakness)、外部環境要因として、機会 (Opportunity)、脅威 (Threat) を分析し、自社の経営資源の優劣を評価する。
3.3つの競争戦略から選定する
広い市場を低コストで狙う場合には「コスト・リーダーシップ戦略」、差別化で狙う場合には「差別化戦略」を策定する。一方、狭い特定の市場を狙う場合には、コスト、差別化いずれかを集中する「集中戦略」を策定。
経営資源分析のフレームワーク
1.PPM分析を行う
自身が受け持つ事業が、市場成長率と市場占有率の多寡によって4分類される「問題児」「負け犬」「花形」「金のなる木」のどのカテゴリーに位置づけられるかを分析し、戦略を策定する。経営資源配分の最適化が目的。
2.業務目標を設定する
数値化できる「目標項目」(生産性、利益率など)と、年度内で達成すべきレベルの「目標値」(売上20%アップなど)を、必ずセットで設定する。
リスクマネジメント
リスクの極小化を常に意識する
前もってリスクを洗い出し、そのリスクが顕在化した場合は、悪い情報ほど早く正確に伝えさせる。
クレーム対応には細心の注意を払う
クレームが真実であると仮定して初動し、真実性が確認できた場合には、迅速かつ誠実に対応する。
編集後記~体系的知識習得の勧め
今回のセミナーは、あくまでマネジメントの基礎知識を紹介する、いわばマネジメントの入り口にすぎない。
実務に役立つレベルまでの知識を体系的に習得したいという方には、以下をお勧めする。
ビジネスマネジャー検定試験®(東京商工会議所)
東京商工会議所が実施する検定試験。例年2回(7月、11月)実施。受験料6,000円(税抜)
ビジネスマネジャー検定試験®対策講座など(LEC東京リーガルマインド)
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時間的にも金銭的にも、これぐらいの自己投資であれば後々十分にペイできると信じている。