近年CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立が増加しています。
CVCは、2000年頃のベンチャーブーム時代に盛んに設立されていましたが、ベンチャーとの協業のノウハウがなかったことなどが原因でその後は衰退していました。
しかし、2011年ごろから再び設立件数が増加しています。
CVCとは
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは、通常VC等の専門機関が広く資金を集めて行うベンチャー投資を、事業会社が自社の戦略目的のために行うことをいいます。
CVCファンドの多くは、事業シナジーが見込めそうなベンチャー企業に対して投資を行うことが多く、この点においてVCとはアプローチ方法において一線を画しているといえます。
CVCファンドの運用は、通常自社の投資部門、または投資子会社で行うことが多いですが、外部のVCに運用を委託することもあります。
CVCを行うメリット
・シナジー効果
自社の事業に対して様々なプラスの影響を与えることができます。
・有望ベンチャーへの早期コンタクト
将来性のある新技術、製品、アイデアに対して早期に接点を持つことができます。
・新規事業の立上げ・新市場への参入リスクを低減
ベンチャー企業が研究開発等を推進するため、大企業は低リスクでイノベーションに着手できます。
・コスト削減
外部のベンチャー企業の技術を活用することで、自社で研究開発するよりもコストを抑えられることがあります。
・情報が集まりやすくなる
投資資金を持つことでベンチャーコミュニティ(VB、VC等)から情報が集まりやすくなります。
近時設立された主要企業のCVC一覧
社名(事業会社名) |
投資枠・ファンド総額 |
KDDI |
100億円 |
ヤフージャパン |
265億円 |
三井物産 |
年間200億円 |
楽天 |
325億円 |
ミクシィ |
50億円 |
TBSホールディングス |
18億円 |
電通 |
50億円 |
三井不動産 |
50億円 |
ニコン |
300億円 |
各社の動き
ニコン
2014年に発表した中期経営計画で300億円をCVCプログラムに投資する方針を示されました。
2015年から複数のVCを通じて100億円を投資しています。
2016年には、SBIインベストメントとファンドを設立し、100億円の運用を開始しています。
海外のヘルスケア関連などに投資を開始しています。
三井不動産
2015年にベンチャー支援のためのCVCファンドを業界で初めて立ち上げました。
投資対象は国内外を問わず、対象領域も不動産、IOT、セキュリティ、ロボティクスなどと幅広く行われています。
アシックス
2016年11月に、CVC事業会社としてアシックス・ベンチャーズを設立。
アシックスは、CVC設立に先駆けて2016年2月に米フィットネスキーパー社を約102億円で買収した。これをモデルケースとして、CVCでも双方の強みを生かして事業を開発していきたいとする。
三越伊勢丹ホールディングス
2016年1月、三越伊勢丹イノベーションズを設立。
小売企業がCVCを設立するのは珍しいが、ギフティ、マネーフォワードなどへ2億円の投資を実行した。
JR西日本
2016年12月に、JR西日本イノベーションズを設立。
例えば、電通の場合
名称:電通ベンチャーズ1号グローバルファンド
組合員:株式会社電通、株式会社フィールドマネジメント・キャピタル
ファンド総額:50億円
ファンド組成時期:2015年4月
運用期間:2022年3月までの7年間を予定
投資地域:欧米・アジアなどの海外を中心に、グローバルに投資
投資ステージ:シード/アーリーステージを中心としつつ、ミッド/レイターステージも含む幅広いバランス投資
投資領域:①広義のマーケティング/コミュニケーションビジネスを変革しうる領域、②上記に当てはまらなくともイノベーティブでポテンシャルの高い新領域