海外からの受注が増えており、海外市場開拓に本腰を入れて着手したい。積極的に海外進出を検討している企業は多いでしょう。当然ながら、海外進出に際しては多額の資金が長期的に必要となります。当記事では、この資金の調達先をご紹介します。
日本政策金融公庫の海外展開・事業再編資金
融資の限度額 7億2千万円(うち運転資金2億5千万円)
返済期間 設備資金20年以内、運転資金は7年以内
利率 上限3.0%の基準利率
貸付対象企業の条件
日本政策金融公庫の海外展開・事業再編資金の対象となる企業を 日本政策金融公庫HPより引用します。
「1. 経済の構造的変化に適応するために海外展開することが経営上必要であり、
かつ、次の(1)~(3)の全てに該当する方
(1)開始または拡大しようとする海外展開事業が、当該中小企業の本邦内における事業の延長と認められる程度の規模を有するものであること
(2)本邦内において、事業活動拠点(本社)が存続すること
(3)経営革新の一環として、海外市場での取引を進めようとするもので、
次の(ア)~(エ)のいずれかに該当すること
(ア)取引先の海外進出に伴い、海外展開すること
(イ)原材料の供給事情により、海外展開すること
(ウ)労働力不足により、海外展開すること
(エ)国内市場の縮小により、海外市場の開拓・確保に依らないと成長が見込めないため海外展開すること
- 海外における経済の構造的変化等に適応するために次の(1)及び(2)の 全てを満たす方
(1)海外直接投資に係る海外展開事業を再編(全部又は一部を廃止することを含む。)することが、経営上必要であること
(2)本邦内における事業活動は継続し、中長期的にみて発展することが見込まれること」
簡単にまとめると、その企業にとっての海外進出が事業を行う上で必然的なこと、本社は日本国内に存在し続けることを証明する必要があります。
商工中金(株式会商工組合中央金庫)のグローバルニッチトップ支援貸付制度
融資の限度額 5億円
返済期間 原則10年間で貸付期間中の返済は必要ない一括返済
利率 所定の利率で事業の成否に応じた適用金利
日本政策金融国庫だけでなく商工中金(株式会商工組合中央金庫)のグローバルニッチトップ支援貸付制度も融資を受ける選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。グローバルニッチトップ支援貸付制度は平成26年4月に創設された制度です。特定分野に強みを持つ中小企業の海外進出を融資で支援します。
貸付対象企業の条件
商工中金のニュースリリース(平成26年3月25日)からグローバルニッチトップ支援貸付制度の貸付対象企業の条件を引用します。
「自社製品・サービスのグローバルシェア拡大を目指し、海外拠点の設立又は拡大並びに海外向け販路 拡大等を行う事業計画(商工中金が適当と認めたものに限る。以下、海外事業計画という。)を有する者で、(1)、(2)のいずれか、かつ(3)(4)の要件を満たす者。
(1)今後3年間の海外事業計画が作成され、かつ、直近の事業年度における海外向け売上高比率が1 0%以上であり、当該海外事業計画期間中の海外向け売上高が5%以上増加していること。
(2)今後3年間の海外事業計画が作成され、当該海外事業計画期間中の海外向け売上高比率が5ポイ ント以上増加していること。なお、商工中金が認めた場合は、5年間で達成する海外事業計画の 作成も可とする。
(3)自社製品・サービスについて、日本国内において一定のシェアを確保していること又は高い技術 力・商品力を有していること。
(4)日本国内において事業活動拠点(本社)が存続すること。 」
長期にわたって安定した資金が必要になることが必須の海外進出において中小企業の強い味方になる制度でしょう。
活用例
たとえば、自動車のパーツを製造している企業Aがあるとします。国内でも圧倒的なシェアを持ちますが、今後は海外でもシェアを高めていきたいと考えています。そこで海外での販売拠点をと米国に現地法人を設立する計画を立てました。企業Aはその計画を実施するための資金調達先としてグローバルニッチトップ支援貸付制度を活用できます。
「中小企業海外展開サポートデスク」
商工中金は「中小企業海外展開サポートデスク」を国内外104店舗に設置しており、融資以外にも情報提供や個別相談を行って中小企業の海外進出をサポートしています。
まとめ
海外進出にあたっては多額の資金が長期的に必要になります。その際には日本政策金融公庫、商工中金の制度を活用出来る可能性があります。資金調達の選択肢の一つに加えましょう。