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合同会社は小さい会社!?

公開日:2017.01.12

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合同会社は、平成18年(2006年)5月1日に施行された会社法によって、新しく作ることができるようになった会社形態です。
英語ではLimited Liability Companyとなり、略して「LLC」とも言います。(注:格安航空会社のLCCではありません。)

皆さんは、合同会社と聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか?なんとなく小さい会社、個人事業主と株式会社の中間くらいの会社、身内だけで経営している会社、そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。

けれども必ずしもそのようなことはなく、小規模から大規模まで実にさまざまな合同会社が存在します。また、法務省の統計によれば、合同会社の総数もさることながら、毎年設立される数も年々と増えているようです。

<出典> e-Stat(政府統計の総合窓口)
 

さてそんなにも増えている合同会社、本当に小さい会社なのでしょうか?

 

こんな会社も合同会社

例えば、皆さんが良く知る、アップルジャパン、西友、ユニバーサルミュージック、P&Gプレステージ(旧マックスファクター)、アマゾン・ジャパンなども、実は形態は合同会社です。

ただ上記の例のように、大型の合同会社は、外資系企業の日本法人が多い傾向にあるようです。
合同会社とは、もともと欧米にある制度を真似て導入された仕組みですので、外資系の企業は合同会社の経営に馴染みがあるということなのかもしれません。

ではこんな大企業も選択する合同会社、一体何がそんなに良いのでしょうか?
株式会社と比較して、主なメリット&デメリットを、ご紹介してみたいと思います。

 

合同会社のメリット

①設立費用が安い

会社の設立はざっくり言って2つのステップから成り立ちます。「定款の認証」と「登記」です。
このうち、合同会社には「定款の認証」というステップがありません。そのため定款の認証にかかる費用5万円が、まるっとなくなります。(ちなみに「定款」の作成自体は必要ですのでご注意を。)

また、登録免許税の下限が低く設定されており、株式会社なら15万円ですが、合同会社は6万円です。
登録免許税の額は、株式会社でも合同会社でも資本金×0.7%で算出します。ただし、それぞれ下限額が決められており、それが、株式会社なら15万円、合同会社なら6万円なのです。

 

②決算公告の義務がない

株式会社には、毎事業年度が終了すると、決算の内容(貸借対照表)を「公告」する義務が課せられています。
決算の内容を公表しなければいけないということへの抵抗がある方もいるでしょうし、公告方法を「官報」にしている場合は毎年、官報への公告(掲載)料で数万円のコストも発生します。

この決算公告が合同会社では義務になっていないため、掲載費用を節約できるということもあり、これを理由に合同会社を選択される方も、多くいらっしゃいます。

 

③配当割合等を自由に決められる

合同会社には、かなり広い範囲の「定款自治」が認められているため、定款で多くのことを、法律に縛られずに自分たちで決めることができます。

配当においても、株式会社の場合は、原則、その割合は出資割合に応じますが、合同会社にはそのような決まりがありません。
ですから、出資が少ない人に多く配当する取り決めをしても全く構わないのです。がんばった人に多く配当したり、貢献度が高い人に多く配当する、というように自由に決めることができます。

 

④役員の任期がない

合同会社の役員(経営者、業務執行者)には任期がありません。
理由は、合同会社は、所有と経営が分離している株式会社と違って、所有と経営が一致した持分会社だからです。持分会社の場合は、出資者がそのまま経営をするので、誰かに「任せる」という概念がありません。そのため任せる期間である任期というものがないのです。

株式会社の場合は、基本的に任期は2〜10年の間ですが、任期が来れば同じ人が同じ役職を続ける場合であっても、「変更登記」の手続をする必要があります。
これにかかる登録免許税は1万円ですが、手間や、この変更登記をしばらく忘れていた場合に過料と言って罰金のようなものをとられる場合があり、少々面倒でもあります。そういったことがない分、合同会社は楽と言えます。

 

⑤意思決定が早い

上記の通り、合同会社では所有と経営が一致しているため、いわゆる株主だけが集まって行う会議である株主総会はなく、株主総会で決議しないと進められない、といったことがないのです。そのぶん意思決定のスピードが上がります。

 

合同会社のデメリット

①小規模なイメージがある

合同会社は、所有と経営が一致した持分会社であるため、どうしても小規模なイメージがつきまといます。下記で説明いたしますが、株による資金調達ができなかったり上場ができないこともその要因かもしれません。
ただあくまでもこれはイメージで、実際には、冒頭で挙げたように、大規模な合同会社も多く存在します。

 

②株による資金調達ができない

「株式」会社ではないので当然と言えば当然ですが、「株」と言う仕組みが存在しないため、株による資金調達はできません。
株というのは、所有と経営が分離しているからこその制度ですから、出資した人が原則そのまま経営する合同会社では、株によって資金調達をする、という手法が使えないということになります。

 

③上場できない

株がないので、当然、株式公開=上場ということもありえません。いつかは株式公開して上場を!という野望がある場合には、株式会社の方が向いていると言えます。
ちなみに合同会社で設立して、後に株式会社へ変更する、ということも手続上は可能です。

 

④持分の譲渡には社員全員の同意が必要

株式会社でいうならば株にあたるものを、合同会社では「持分」と呼びます。言葉通り、その法人に対する自分の「持分」とイメージしてもらえれば、概ね問題ありません。

この持分を譲渡する場合、社員(従業員ではなく出資&経営者のこと)全員の同意が必要です。
株式会社の場合は、所有している株を売る場合、公開している株であれば自由に、非公開の株であれば会社の承認を得て、譲渡することができ、自分以外の株主全員にお伺いを立てることはありません。
しかし合同会社では、持分をもった人は、オーナーになると同時に経営者にもなるため、そう簡単にどこの誰とも分からない人に入ってこられては困るのです。そのため、ほかのメンバー全員の同意が必要になるのです。

 

⑤意見が割れると誰も解決してくれない

メリットで説明した定款自治の裏返しなのですが、自由である分、ひとたびメンバー間で意見が割れると、どうにもなりません。
法律で決まっていない以上、自分たちで決める必要がありますが、その自分たちの意見が割れてしまうとお手上げです。正直、そのような硬直状態に陥ってしまい、にっちもさっちもいかなくなって活動を休止している合同会社を、残念ながら少なからず知っています。。。

 

まとめ

さて、合同会社は小さい会社!?というのがテーマでしたが、皆さまはいかが思われましたでしょうか?

当初こそ、合同会社は小さい会社のイメージも多かったかもしれませんが、世の中のイメージも変わりつつあるのではないでしょうか。
株式会社にも小さい会社から大きな会社が存在するように、合同会社にも、小さい会社から大きい会社までさまざまに存在します。

合同会社が設立できるようになってから歴史もまだまだ浅いですので、これからイメージもどんどん変わっていくでしょう。
そのため、会社を設立するにあたっては、大きいイメージか小さいイメージか、という点で選ぶのではなく、設立した会社をどのように経営していきたいか、によって適切な方を選ぶのが良いと思います。

合同会社は、一言で言えば、株式会社に比べて自由度の高い会社ですが、その分、自分たちで決めなければ行けないことも多いです。それはそれでややこしく、法律で最低限のルールを決めてくれていた方が、楽な場合もあるかもしれません。
イメージや印象で安易に選ぶことなく、ぜひしっかりとメリットデメリットを検討した上で会社形態を決めていただきたいと思います。

 

【補足】株式会社の「乗っ取り」についての誤解

合同会社を設立したい!とご相談に来られる方の中で、「株式会社のように乗っ取られる危険性がないため」という理由で合同会社を選択されようとする方が時々いらっしゃいますが、この点は、合同会社のメリットとは言えません。

そもそも、株式会社においても、「乗っ取られる」といった事態は、上場している企業でなければおきません。一般の方が普通に設立した上場していない会社を、いきなり第三者がやってきて乗っ取る、ということはあり得ないのです。
なぜなら、上場しない限りは、たいていの会社が、定款で、すべての株式に譲渡制限をかけており(これを非公開会社と言います)、会社が望まない人に株が勝手に渡ることを妨げているのです。

この譲渡制限は、簡単に言えば「会社に対してお伺いを立てないと、株を勝手に売るができない」という意味です。ですので、株式会社だといつの日かドラマのハゲタカのように襲われてしまう!というのは、大きな誤解です。

 

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大槻 美菜

大槻美菜行政書士事務所 行政書士    登録番号 第10081560号 (東京都行政書士会 所属) 中小企業診断士 登録番号 第421242号  (東京都中小企業診断士協会 城南支部 所属) 東京都行政書士会 渋谷支部 理事 東京都行政書士会 渋谷支部 法教育推進委員長 東京都行政書士政治連盟 渋谷支部 幹事 行政書士ADRセンター東京 運営委員 行政書士ADRセンター東京 調停人候補者 申請取次行政書士 東京都行政書士会 著作権相談員 東京知的資産経営研究会 副会長

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