はじめに
皆さんは、旅行業務取扱管理者という資格をご存知でしょうか?
この資格は旅行業における唯一の国家資格であり、年に1度行われる試験に合格することで資格を得ることができます。
例年、旅行業に携わる社会人や旅行業界を志望する学生が多く受験していますが、資格自体が生涯有効であり、年齢や学歴による受験資格が設定されていないことから、旅行業とは関係のない方も含めて幅広い世代の方が受験しています。
旅行業を営む会社の営業所では旅行業務取扱管理者を1名以上配置することが義務付けられていることから、旅行業を1人で開業・登録する際には開業者が資格を持っている必要があります。
今回は、旅行業の開業・登録にあたって必要となる旅行業務取扱管理者資格について、取り扱える旅行の範囲と試験について解説します。
旅行業務取扱管理者とは?
まず、一括りに「旅行業務取扱管理者」と言っても、
取り扱える旅行の範囲によって以下の3種類に分けられます。
①総合旅行業務取扱管理者
②国内旅行業務取扱管理者
③地域限定旅行業務取扱管理者
また、上記すべての旅行業務取扱管理者に共通して、
・旅行者に対して取引条件を説明する
・旅行者に対して適切な書面を交付する
・適切な広告を実施する
・旅行に関する苦情を処理する
・料金の掲示
・旅行に関する計画の作成
・旅行業約款の掲示及び据え置き
・旅程管理措置
・契約内容に関する明確な記録または関係書類の保管
・前述のほか、必要な事項として観光庁長官が定める事項
以上10項目が業務として規定されています。
次に、それぞれの旅行業務取扱管理者の取り扱える旅行の範囲や試験について説明します。
①総合旅行業務取扱管理者
本邦内外の旅行取り扱うことができる資格で、例年10月に試験が行われます。
試験には「旅行業法」「約款」「国内旅行実務」「海外旅行実務」の4科目が出題されますが、問題1つ1つの難易度が高いことや、「国内旅行実務」「海外旅行実務」で求められる知識が膨大であることから、令和4年度の試験における合格率は3つの中で最も低い「13.5%」です(全科目一発合格のみ)。
また、「海外旅行実務」については英文読解も出題されるため、旅行業や国内外の観光に関する知識だけでなく英語の知識も問われる試験となっています。
以下に記載する国内旅行業務取扱管理者に合格していると、「旅行業法」と「国内旅行実務」が免除となるため、国内旅行業務取扱管理者を取得してから総合旅行業務取扱管理者を受験される方も多くいらっしゃいます。
②国内旅行業務取扱管理者
本邦内の旅行のみを取り扱うことができる資格で、例年9月に試験が行われます。
この資格は本邦外旅行を取り扱うことはできないので、出発地・目的地ともに本邦内だとしても、本邦外を経由する旅行などは取り扱うことができません。
試験には「旅行業法」「約款」「国内旅行実務」の3科目が出題されます。試験範囲は総合旅行業務取扱管理者ほど広くはありませんが、令和4年度の試験における合格率は「32.9%」です(全科目一発合格のみ)。令和4年は合格率が下がっていますが、例年は30%台後半で推移しています。
③地域限定旅行業務取扱管理者
2018年に地域の観光資源の活用を促進する目的で開設された新しい資格で、試験は例年9月に行われます。
その目的から、総合旅行業務取扱管理者・国内旅行業務取扱管理者よりも業務範囲が限定的になっており、本邦外の旅行が取扱不可であるほか、本邦内でも観光庁が定めた範囲内の旅行しか取り扱うことができません。
試験には「旅行業法」「約款」「国内旅行実務」の3科目が出題されますが、「国内旅行実務」のうち、観光地理(温泉や城などの観光資源に関係する問題)は試験範囲から除外されます。
令和4年度の試験における合格率は「38.7%」です(全科目一発合格のみ)。
旅行業務取扱管理者の選任における注意
旅行業を営む会社の営業所には、取り扱う旅行の範囲に合わせた旅行業務取扱管理者の選任が必要です。
特に、本邦内外の両方の旅行を取り扱う場合は「総合旅行業務取扱管理者」を選任する必要があり、それ以外の旅行業務取扱管理者は選任できません。
また、従業員が10名以上の営業所については2名以上の旅行業務取扱管理者を確保することが義務付けられているので、従業員数と有資格者の人数には注意が必要です。
さいごに
一括りに「旅行業務取扱管理者」と言っても、3種類あることがお分かりいただけたかと思います。
この資格の取得は、旅行業の開業・登録におけるスタート地点に立った段階であり、この後さまざまな手続きを踏んでようやく開業・登録となります。
次回の記事では、旅行業について説明します。