15万通りの組み合わせから、あなたの好みにあったコーヒーが毎月送られてくるコーヒーのサブスクリプションサービス「PostCoffee」。近年のサードウェーブコーヒーやカフェブームの台頭によって、”美味しいコーヒーを自宅で飲む”コトも拡大しつつあるのかと思いきや、「多くの日本人が実はまだ美味しいコーヒーを知らない」と今回取材をした下村氏は語ります。デザイン会社立ち上げ→コーヒースタンド経営→スタートアップへの転身と歩みを続け、まだ見ぬスペシャルティコーヒーの魅力を世に届ける起業家にお話を伺いました
プロフィール(POST COFFEE株式会社 代表取締役 下村領氏)
2005年、株式会社HERETICを創業。デジタルクリエイティブの制作、システム開発の事業を主軸に、自らもデザイナー兼エンジニアとして第一線で活躍。並行して2012年5月モバイルチケッティングサービスを展開するスタートアップのCTOに就任。その後2015年に事業売却。2013年7月渋谷区富ケ谷にMAKERS COFFEEをオープン。自身もバリスタとして店頭に立つ中で課題感を覚え、その後2018年9月にPOST COFFEE株式会社を設立。
POST COFFEE株式会社について
ー 事業内容について、教えて下さい。
コーヒーのサブスクリプションサービス「PostCoffee(ポストコーヒー)」の開発と運営をしています。
ー 「PostCoffee」とは、どんなサービスなのでしょうか?
PostCoffeeは、”スペシャルティ(※)コーヒーをパーソナライズして毎月お届けする”コーヒーのサブスクリプションサービスになります。大きくは2つの特徴を持っていまして、
1.15万通りの組み合わせから、好みのコーヒーをセレクト
まず初めにユーザーには「無料コーヒー診断」をおこなって頂きます。ライフスタイルや嗜好に関する10の質問に答えることで、約15万通りの組み合わせからその人に合った好みのコーヒーを3種類、また淹れ方や頻度、量、オプションなどをカスタマイズして提案します。その後も、届いたコーヒーの好みのフィードバックを繰り返すことで、自分の嗜好にあったコーヒーを楽しみ続けられる様になっています。
2.届いたその日からコーヒーライフをスタートできる、コーヒーボックス
無料コーヒー診断の結果から、ユーザーの嗜好にあったコーヒーを3種類。それ以外にも、折りたたみ式のドリッパー・ペーパーフィルターなどをお付けし、マグカップとお湯さえあれば、すぐにこコーヒーライフがスタートできるボックスを毎月定期的に届けます。
※生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆
ー 実際にどんな方が、サービスを利用されているのでしょうか?
25〜35歳の世代が年齢層としては一番多く、男女比では4:6で女性の方の割合が多いです。
属性としては、缶コーヒーやインスタントコーヒーを普段から飲まれている方で、「ハンドドリップは一回やったことあるくらい(もしくは経験がない)」といったライト層の方々が次のステップとしてPostCoffeeを選んでくださる傾向がありますね。
ー だからドリッパーもフィルターも付けているんですね!勝手ながら、コーヒー好きに支持されているサービスなのかと思っていました。
元々は「自宅で豆から挽いています」といったギーク層を中心とした拡がりを想定していましたが、フタを開けてみると、コーヒーライト層に支持をされている、とサービスを始めてから気がつきました。現在では、それに合わせる様な形でドリッパーやフィルターをセットに入れたり、ビジュアルクリエイティブもライト層に向けて打ち出す訴求にシフトしています。
ー なるほど。初回購入以降、ユーザーの好みや嗜好にあったコーヒーを届ける為の精度はどう向上させていっているのでしょう?
仕組みとしては、統計に近い設計になっています。例えば、同じ属性の人がどういうコーヒーに好き・嫌いを判断したか?などに基づいて、次回送るコーヒーを提案しています。
ー コーヒーのサブスク・定期便という形態自体は、既にいくつかのサービスも見受けますがPostCoffeeにはどんな優位性を持たせているのでしょう?
大きくは3つあります。
1.ラインナップのバリュエーションを沢山持たせている
ロースターパートナーとの提携含め、45種の豆を用意(2021年8月時点)
2.(ユーザーの)好みに合わせたカスタマイズを実現
豆もそうですが、飲み方の好みも多様化しているのがコーヒーの特徴です。なので、PostCoffeeでは「豆のまま送る」「水出し用パックで送る」「ハンドドリップ用」など好みに合わせたカスタマイズが出来る様になっています。
3.定期便ではなく、サブスクリプションである
同じものを定期的に送るサービスではなく、サブスクリプションと言っている所以はここにあって、「同じものが届きにくい仕組み」にもなっています。なので、毎月毎月新しいコーヒーと出会える体験を提供しています。
まだまだ発展途上な国内コーヒー市場!消費量は多いが美味しいコーヒーには辿り着いていない日本。
ー サードウェーブコーヒーやカフェブームの流れもあって、「美味しいコーヒーを飲みたい」という嗜好や「自宅でも美味しいコーヒーを飲む」こと自体は若い世代を中心に普及している様にも感じますが、まだまだ市場の開拓余地はあるのでしょうか?
まだまだ(開拓余地が)ありますね。参考になるデータがあって、一般的に高品質で美味しい豆と定義される”スペシャルティコーヒー”が世界で飲まれている数値なのですが、アメリカではコーヒーを飲む方のおよそ60%がスペシャルティコーヒーを飲んでいます。コーヒー先進国と呼ばれるオーストラリアでも近い数字を出しているのに比べ、日本はたった11%という結果になっています。
ー えー全然少ないですね(笑)コーヒー自体は飲んでいるイメージもありますが・・
はい、正に!消費量でいうとまた違うデータも出ていて、日本は世界第3位の消費量を誇る、世界から見てもコーヒー好きの国です。つまり、コーヒーは沢山飲んでいるけど、ほんとに美味しいコーヒーを飲めているのは、その中のたった11%の人だけということになりますね。そこだけを見ると、まだまだ伸び代のある市場だなと感じます。
ー 確かに!89%が、もっと美味しいモノがあるのに気づいていないのは伸び代ですね。それ以外にも、日本人のコーヒーの好みなど、サービスを運営していて気がついたことはありますか?
日本人は、喫茶店文化からくる”深煎りのコーヒーを好む傾向”が強いということですかね。
ただ深煎りにしているって実はワケがあって、簡単にいうと、深く煎るのは”雑味を隠す為”の手段なんです。コーヒーって本来は果実なので、そのフルーツの個性を楽しむ浅煎りの焙煎が向いているのですが、それが出来ないローグレードの豆は深煎りにすることで、品質の良し悪しを均一化させてきたんです。結果的に、それが日本人がイメージする「コーヒー」を形成するスタンダードとなってしまい、浅煎りコーヒーの美味しさを知らない方がまだまだ沢山いる要因にもなっているというワケです。
デザイン会社からコーヒースタートアップへの転身。キッカケは、一台のエスプレッソマシーン
ー 起業することの意識についてはいつ頃からお持ちだったのでしょうか?
生まれは鹿児島なのですが、実は高校生の頃からフリーランスのWEBデザイナーとして仕事をしていて、その頃からなんとなく「東京で起業する」とは思っていました。
ー ええ!高校生からフリーランスですか?
デザイン自体は、中学生から独学で勉強し始めて、当時はバンドをやっていたので自分のバンドのホームページやフライヤーを作ったりことからスタートしました。大学在学中には、もう法人化もしていて、大学は仕事が忙しくて途中で辞めてしまいましたが、進学をしたのも上京する為の理由づけの様な感じでした。そこから立ち上げたデザイン会社を16年ほど経営して、現在に至るといった経緯ですね。
ー そこから、どの様にして「PostCoffee」は生まれたのでしょう?
デザインの会社を16年間経営していく中で、その間に渋谷で3年間コーヒースタンドを経営し、自分自身もバリスタとして店頭に立っていたんです。その時もスペシャルティコーヒーを提供していたのですが、お客さんの反応をみていて、多くの人がまだ美味しいコーヒーを知らないことに気がつきました。この魅力をもっと多くの人に伝えていくには、一店舗の力ではスピードも影響力も限界があるなと感じ、PostCoffeeの構想は生まれています。
ー そこで現在の様なプラットフォーマーとしての選択をされたんですね!そもそも下村さんご自身は、どの様にしてスペシャルティコーヒーに目覚めたんですか?
自分も元々は、缶コーヒーを愛する自称”コーヒー好き”でした。
ある時、ネットサーフィンをしていて見つけたエスプレッソマシーンがすごくカッコよくて、勢いで買ってしまったんですが、一つ一つが職人の手作りで納品まで1年かかるし、けっこうな値段もするから、(これ自分用に使うの勿体無いな)と思いはじめて、カフェをやることに決めたんです(笑)
ー 一台のエスプレッソマシーンから、すごい飛躍しましたね(笑)
その中で自分もバリスタとしてコーヒーを学んでいくうちに、スペシャルティコーヒーの魅力にどっぷりハマってしまったという経緯ですね。
今後について
ー 中長期的な展開について、お教え下さい。
弊社の特徴として、国内のみならず海外にもロースターパートナーを抱えているという特徴を持っていますので世界のコーヒーを味わってもらえる「コーヒーフェス」を全国各地で展開したいと考えています。そして3年以内にはサービスのアジア地域への進出・ローカライズも検討しています。
ー 記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば最後に書きます
直近では、大型の資金調達をしたこともありオールポジションで積極採用中です。現在は、フルタイム6名の組織ですが、この1年で15名まで拡大したいと考えています。エンジニア、デザイナー、バックオフィスなど幅広いポジションで募集しておりますので、興味のある方がいましたら是非ご連絡ください!
ー スタートアップの醍醐味を感じられるフェーズでの参画ですね、楽しそうです!これからの展開も楽しみです、本日は有難うございました。
はい、こちらこそありがとうございます。