日本在留の外国人はここ数年右肩上がりに伸びており、日本の総人口の約2%を占めると言われている。東京オリンピックの開催や2025年大阪万博など、この流れを助長するトピックはまだまだ多い。そんなグローバル化が進む状況を前にして、彼ら(在留外国人)の住まいに関する問題が顕著に出ていると今回取材をした起業家 紀野氏は語る。高年収にも関わらず住む場所がない彼らの現状や今後の市場展開などお話を伺いました。
プロフィール(アットハース株式会社 代表取締役社長 紀野知成氏)
東京の在留外国人を知り尽くした日仏英のトリリンガル。1984年生まれ、6歳まで横須賀米軍基地内のシェアハウス在住、8歳から秋田の養護学校で親と離れて暮らし、障害者の児童達と共同生活で育つ。
2001年:アメリカノースカロライナ州の高校に交換留学。飛び級。黒人のホストファミリーとハイスクールに通い、人種問題と直面。
2004年:上智大学比較文化学部入学後、eラーニング事業立ち上げ。
2009年:三菱商事入社。エネルギーの輸入業務を3年経験後、ウラン投資業務の為2年間渡仏。
2015年:外国人支援事業を行うアットハース株式会社、立ち上げ。
アットハース株式会社について
ー 事業内容について、教えて下さい。
株式会社アットハースでは、高収入の外国人向け賃貸仲介・代理保証業、生活支援サービスを提供する事業をおこなっています。
ー 具体的にどんなサービスを提供しているのでしょうか?
高収入の外国人専門の賃貸仲介サービス「アットハース 」を運営しておりまして、在留外国人の賃貸仲介から契約後の生活サポート(生活インフラの契約〜役所・引越し手続き等)までを弊社ワンストップで提供しています。
これまで賃貸仲介をしてきた在留外国人の内訳として、全体の35%以上が年収600万円以上を日本で稼いでいる方になりまして、紹介物件の家賃下限も最低9万円〜という設定にしています。
ー 今現在、国内における外国人向けの賃貸仲介は、どんな状況になっているのでしょう?
法務省から出ているデータだと全体の約4割は審査で落ちているという数値が出ていますが、実際は8-9割が収入問わず与信で落とされているのが現状です。そこには、言語の問題であったり、ビザの問題だったり複合的な要因がありますが、賃貸仲介における在留外国人の受け入れはまだまだ課題だらけです。
実際に年収1,000万以上の方が契約審査で落ちているという状況もザラにあります。これは、物件オーナーが海外の方を嫌っているという訳ではなく、与信を判断する立場の保証会社・管理会社がその与信を判断する仕組みを構築出来ていなかったり、判断できていないというのが主だった理由です。
市場全体の課題として、今後もコロナの影響で脱東京をする日本人が増えていく中で、「日本語を話せる・話せない」の与信の取り方ではなく、言語・国籍を問わずに適正な与信を付与していく環境の整備が急務となっています。
ー なるほど。そんな中で御社のサービスにはどんな特徴があるのでしょうか?
一言でいうと「双方に安心感を与える」サービスを提供しています。
管理会社に向けては、家賃の遅延や滞納のリスクを弊社で請負という保証を付けていますし、課題となっている入居者とのコミュニケーションも全て弊社が代行します。そして、入居者となる外国人の方に向けては、確実に家が見つかるという安心感に加えて、賃貸契約後のサポートも無償で提供しています。
増えていく在留外国人と外国人向け賃貸仲介市場について
ー 実際、国内にはどれくらい在留外国人の方がいるのでしょうか?
現在293万人の在留外国人が国内にいる中で、内49%が関東圏内にいると言われています。その増加率は、年率8%の水準で伸びてきているのがここ数年の状況です。
ー その中で外国人向け賃貸仲介は、どれくらいの市場を持っているのでしょう?
賃貸仲介市場は日本全体で14兆円の市場となっていますが、その中で外国人向けの市場は約8,000億円です。ただ、5年後には外国人向けの賃貸仲介だけで1兆円を超えるという試算も出てきており、市場としてもこれから伸びていくことが予想されています。
ー 実際、競合となるような会社は存在するのでしょうか?
数社ほどいます。ただカスタマーからの満足度という点では、Googleでの口コミ全てに星5つの評価がつくなど、弊社が群を抜いていると思っています。それくらいCX(カスタマーエクスペリエンス)には重きをおいていまして、言語を話せるだけでなく異国で暮らす相手の立場になって、それを理解できるコミュニーケーションが取れるか?そういったメンバーを揃えて対応している結果が、口コミでは如実に現れてきています。現在では月間40-50名の方から新規の問い合わせを頂くなど、リファラルと口コミの二軸で集客が出来る仕組みも構築しつつあります。
「海外で困っている方を助けられる人材になりたい」。国際医師志望からスタートアップの道へ
ー 起業をされた経緯についても伺いたいのですが、いつ頃から起業を意識していたのでしょうか?
実は今回で二度目の起業になりまして、18-19歳の時に雇われ社長として起業をしたのが初めての起業でした。その時は私情もあって、やむなく起業をしたという感じでしたが、経験としてはかなり痛い思いをしたので「もう絶対に起業はしたくない」と思っていました(笑)
そこから十数年経って、アットハースを立ち上げたときもそうでしたが「起業したい」という思いは一度も抱かず、ここまで来ましたね。
ー そうだったんですね。
学生の頃から「海外で困っている方を助けられる人材になりたい」という想いを持っていて、それは今でも変わりません。大学生〜社会人までは国際医師になることを目指していて、学士編入の勉強をしていたり、と専門性を持って国際協力が出来る人材になることを夢見ていました。実際に前職の商社を退職するときも、周囲には「医者になります」と宣言していたくらいなので。
ー 医者を目指されていたんですね!そこからどんな経緯でアットハースが生まれているのでしょうか?
海外のメディカルスクールに通うには合計7,000万円ほどの資金が必要となり、社会人から貯蓄していた金額では到底足りませんでした。なので最初は、自己資金を元手に学費を稼ぐ為に不動産投資の業務委託をスタートさせたことが入り口になっています。
元々、留学経験や大学生の頃から在留外国人とのネットワークを個人的に持っていたこともあり、最初はその繋がりの中から彼らが日本に住むために必要なことを手伝っていたのですが、支援をしたメンバーが大手企業のマネージャーや重役に上がるにつれて、リファラルで紹介・相談をもらう機会が増えていきました。そこから不動産オーナーさんからも相談を頂く機会が徐々に増えていき、とある物件を一棟任せて頂いたときは、4年間で1,600名ほどの集客をしたり、と流れの中で徐々に個人事業として行うレベルから法人化する必要が出てきてしまったという経緯ですね。
ー なるほど。
正直最初は、”日本の国際化”や”日本で困っている外国人を助けたい”という想いだけで、スモールビジネス的にやっていたので組織の形態として「NPOでもいいのではないか?」という選択肢もありました。ただ、より多くの人に影響を与える・現状を変えていくという意志があるのであれば、株式会社化してスケールを目指すことが正しいのではないか、という思いが出てきて、2018年からはスタートアップ化をして本格的に動き始めました。
医師からスタートアップと方向は変わっていますが、根底にある「海外で困っている方を助けられる人材になりたい」という想いは今でも変わっていません。
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい。
「Live the life you want」という私たちのビジョンでもありますが、「当たり前の世界」を早く作りたいと思っています。当たり前というのは、人種や国籍・言語を問わず自由に暮らせる世界のことを指しています。そういった暮らしのサポート全般をアットハースで実現したいと思っています。
外国人と働く・暮らすという世界は、時代の流れ的に今後当たり前になってくる世界であると思っていますが、それがくる社会を私たちがもっと早く実現したいです。5年後10年後にくる世界を1年でも2年でも早く、社会として実現していきたいと考えています。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
現在、採用を積極的に行っています。有難いことにビジョンに共感してくださる方から沢山お声かけを頂いていますが、今欲しいのは「共感」ではなく「共創」。一緒にビジョンを作っていけるメンバーを探しています。入って頂いたことを誇りに思ってもらえる会社を創っていきたいと思っていますので、是非興味を持って頂ける方がいればご連絡下さい!
ー とてもやりがいのあるフェーズでの参画になりそうですね!今日は有難うございました。
こちらこそ、有難うございます。