経営層の判断材料を出すために行われている予算作成や予実管理に代表される「経営管理」業務。しかし、その実態は現場から数字を集める作業やExcelファイルの統合・ミス修正に日々格闘し、本来求められていることとは違った部分にリソースを割いていると今回取材をした起業家 布川氏は話す。大企業の経営管理の課題の効率化を支援するクラウドサービス「Loglass」についてお話を伺いました。
プロフィール(株式会社ログラス 代表取締役 布川友也氏)
慶應義塾大学 経済学部卒。 新卒で投資銀行に勤務。M&A、IPOアドバイザリー業務に従事。 その後、上場直後のITベンチャー企業に経営戦略担当として参画し、IR・投資・経営管理等を中心に業務を行い、入社初年度で全社表彰を獲得。東証一部への市場変更を経験。 株式会社ログラスを創業、代表取締役に就任。
株式会社ログラスについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
予算作成や予実管理などに代表される「経営管理」の効率化・高度化を支援する次世代型経営管理クラウド「Loglass」の開発と運営をしています。
ー 次世代型経営管理クラウド「Loglass(ログラス)」とは、どんなサービスなのでしょうか?
Loglassでは、従来の経営管理業務の内容を引き継ぎながら、より効率化・高度化させる仕組みを取っています。分かりやすい例えが、エンジニアの世界でよく使われているGitHub(※)をCFO・経営企画の世界で実現したサービスとイメージして頂くのがいいかもしれません。これまでExcelやGoogleスプレッドシートのファイルを大量に作成して、データを集計していた業務をクラウドで一括管理し、会計ソフトや業務アプリケーションと連携したデータの統合・分析までを一貫して行えるサービスがLoglassです。
※Gitを利用したプログラムのバージョン管理を行うウェブサービス。多くのOSS(オープンソースソフトウェア)が公開されており、様々なエンジニアがそのプロジェクトに参加して開発に携わることもできるサービス
ー サービスの特徴についても教えて下さい。
大きく2点あります。一つ目は、「外部ソフトウェアとの連携」を図って、よりサービスに拡張性を持たせている点です。弊社は、Microsoft社のスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」にも採択されており、マイクロソフトのBIツールとの連携を実現しています。Loglass上に蓄積されたデータをBIツールに取り込むことによって、今までユーザーが体験出来なかった高いレベルの可視化分析を実現します。そして、二つ目が「UX」。弊社のサービス設計ではGoogleも提唱しているマテリアルデザインの概念を取り入れておりまして、ユーザーに直感的にサービスを使ってもらう「操作性」をとても重要視しています。また、経営企画の実務を経験したメンバーが細かい機能面に対する設計とフィードバックに深くコミットすることで、他社では実現が難しいレベルまで製品レベルを引き上げています。
ー (サービスを)導入する企業の規模感などに特徴はありますか?
ユーザー企業のほとんどは大企業になります。そして、私たちも大企業を想定としたサービス開発を進めています。
ー それはどんな理由からでしょうか?
弊社の仮説ではありますが、経営管理業務における課題が出てくる企業規模は、ミニマムでも100名以上、通常で300名以上の規模の会社から発生してくるものだと考えております。これは200社以上のユーザーヒアリングの結果や、私の過去の経験からして、ほぼほぼ正しいと言えます。なので、サービスの対象から小規模企業を基本的には除き、初めから中~大企業にフォーカスして開発をしています。
大企業が抱えている、経営管理業務の課題について
ー 実際、大企業が「経営管理」において抱えている課題には、どんなものがあるのでしょうか?
大きくは、2つに絞られます。
1.表計算ソフトが煩雑化、属人化し過ぎている
2.データ加工に時間がかかり意思決定にスピードが出ていない
一つ目の課題には、現場で使用するシートや、KPIが複雑化しているといった根本的な課題もありますが、一番はそれらをまとめて統合する業務にミスが発生しやすいという状況があります。Excel自体のデータ統合がコピー&ペーストや複数シートの参照を軸にした煩雑かつ属人的な連携の仕方になっていることもあり、データが壊れやすい・統合作業にミスが発生しやすい表計算ソフトで管理することが難しい状況になっています。
そして二つ目の課題についてですが、実は企業の業績報告における1ヶ月の業務サイクルは、各社ほぼほぼ同一です。そして、当該業務の半分以上の稼働を“数字をまとめる”作業にかけているという事実もまた各社で同一です。これが経営者の目線からはすごく大きな問題となっていて、「意思決定にスピード」が出せない一つの要因となっています。
ー なるほど。それが自動化してタイムリーに出来たら、そこのリードタイムが短くなって、意思決定にもスピードがでる、ということですね。
仰る通りです。Loglassでは、それを実現しています。
「人は、いつ終わるか分からない」という死生観が、行動を駆り立てる。
ー 起業をされた経緯についても伺いたいのですが、いつ頃から起業を意識していたのでしょうか?
意識として持ち始めたのは、21-22歳の頃でしたが、そういった気持ちになるまでに、二段階ほど自分の中で“転機”となった出来事がありました。最初のきっかけになったのは、身近な人の「死」でした。中学と高校時代に、一人ずつ大事な人を突然亡くしているのですが、そういった経験から、「人はいつ終わるか分からない」「短い人生の中で何かやり遂げたい」と考える様になっていきました。その時から、生きていることの意味を常に見出していく様な、“生き急いでいる”タイプの人間になったと思います。
そこから大学生になって、効率的な「生き急ぎ」方を模索するのですが、そこで出た答えたが「スタートアップを立ち上げる」ということでした。実際、その時に人材系スタートアップの創業期に参画し、マンションの一室に泊まり込みをしながら、立ち上げに携わるという経験をしました。そういったベンチャー・スタートアップに関わった大学時代が起業を意識する2つ目の転機になりました。
ー 「人生いつ終わるか分からない」という死生観が、そういった行動を駆り立てていたんですね。
はい。そこから新卒でSMBC日興証券の投資銀行部門に入社するのですが、M&AやIPOを担当する部署で経営者の方々と仕事をさせてもらった経験も最終的には背中を押してくれました。各社で管理しているExcelはやはり属人化している複雑なものでしたし、経営者は付随する業務に頭を抱えていました。しかし、経営者という仕事は面白そうに見えました。自分も経営者になりながら、彼らのような経営管理に悩む人達を助けてあげたいと考えるようになりました。
ー なるほど。そこから、どの様にして「Loglass」は生まれたのでしょうか?
新卒で入社した投資銀行から現在は東証一部上場企業であるGamewithという会社に転職しています。そこでは前職から課題意識のあった経営管理の業務を担当していたのですが、組織が250名を超えてきた段階で課題が如実に出ていました。
具体的には、先ほど説明した様な【部署の数字を集める業務】や【データを統合する業務】にリソースを割かれ、経営管理としての本質にあたる業務が疎かになってしまう、という現象に自分自身も陥ったのです。そこから、それを改善する簡易的な社内システムを開発したのが「Loglass」の元になったアイデアでした。実際、出来上がったシステムにより、業務は効率化されましたし、「これを外部のエンジニアと、ちゃんと作ったら需要があるかも」と考えたのがLoglassが生まれた経緯です。実は米国には立派な当該領域で成功しているビジネスもあり、「これは自分にしかできないビジネスだ」と確信するようになりました。
今後について
ー 短期・中長期的な展開についてお教え下さい。
短期的な戦略としては、足りていない機能を補いながら、既存のお客様を大切にしつつ、徐々に裾野を広げていくことが重要と考えています。
中長期的に考えていることとして、現在のLoglassが業務の効率化を図っている部分は【現場から→経営企画への数字の統合・経営陣へのレポーティング】に当たるのですが、「現場が数字を入力する作業」や「ロジックをつくる作業」自体はそこまで効率化されていません。なので、例えばSalesforceと連携したら、Googleアナリティクスから数字を引っ張ってこれたら、経営管理専用の表計算アドオンを強化できたら等の【現場の計画業務をより楽に高度化する機能】を中長期的には拡充したいと思っています。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
今、国内でSaaSを展開する企業はすごく増えてきていますが、本当に差別化されていて、マーケットがしっかりあるSaaSを展開している会社は、実はそんなに多くないと考えています。10年以上前から、「Horizontal SaaS」と呼ばれる複数業界に渡ってSaaSを展開する先行企業が市場の開拓を続けてきた中で、“ニーズがあって競合も少ない”という空白領域が減ってきているのは紛れもない事実です。その中で私たちが取り組んでいる領域は、数少ない、マーケットがしっかりとあり、競合も少ない中で圧倒的差別化を図ることができる領域であると思っています。
最近ではスタートアップを対象にしたSaaSも増えていますが、本当に日本を変える力を持っている「大企業=エンタープライズ」に向けたサービスを展開するSaaS企業はごく稀です。大企業は多少生産性を上げるだけでも、ものすごいインパクトがありますし、組織の収益構造の1%でも2%でも向上に寄与出来たら、それはとてつもない価値になると思うんです。なので、これからスタートアップ にチャレンジする方は、表面的な事業ドメインの面白さや見た目の華やかさではない、本質的かつインパクトの大きい領域でチャレンジすることができるのか?という点で意思決定をして欲しいと思っています。
そして、Loglassはそれが出来る会社だと思っていますので、ご興味のある方はお気軽にご連絡下さい!
ー すごくビビッとくるお言葉ですね!是非スタートアップに転身を考えている方には参考にしてもらいたいワードです。本日は有難うございました。
こちらこそありがとうございました!