新型コロナウイルスの影響により、役員報酬の支払が難しくなっている企業も出てきていると思います。
この点、「役員報酬は期中での変更はできない」ということが念頭にあり、「未払い」という形で処理をしている企業は少なくないのではないでしょうか。
業績が回復したら支払うことを前提としての未払いなら良いのですが、何となく未払いにしているのであれば一考の余地があります。
なぜならば、役員報酬が未払いであっても、社会保険料などの租税公課は納付が必要となり、これがキャッシュフローを圧迫する原因にもなるからです。
役員報酬は期中でも変更可能な場合がある
法人税の利益操作などに使われないようにするため、確かに、「役員報酬を期中で変更することはできない」が大原則であるのは間違いありません。しかし、だからといって、100%変更ができないというわけではないのです。
たとえば役員本人が傷病等により職務遂行をできなくなった場合や、大幅な業績悪化があった場合などに限っては、期中であっても役員報酬の額は変更可能です。
今回の新型コロナウイルス禍による業績悪化に関しても、役員報酬の期中変更が認められるケースに該当する可能性が高いということができるでしょう。
期中変更すると社会保険料は随時改定の対象となる
役員報酬が減額されず、高い金額のまま未払いであれば、社会保険料も高い役員報酬の等級のまま毎月請求され、キャッシュフローを圧迫します。
しかし、役員報酬を減額すれば、随時改定に該当し、社会保険料の等級も、減額後の役員報酬に見合った額を支払えば足りるということになります。
特例改定を活用しましょう
とはいえ、通常の随時改定による保険料の減額が開始されるのは、役員報酬減額から3か月後です。それでは、キャッシュフロー対策として即効性がありません。
そこで活用したいのは、社会保険料の「特例改定」です。詳細は日本年金機構の下記リンクを参照していただきたのですが、新型コロナウイルスの影響で令和2年4月から7月に支払われた役員報酬が、標準報酬で2等級以上減少となった場合、さかのぼりの含め、その翌月分から社会保険料が減額となります。
役員報酬ゼロも一手
なお、役員報酬を減額するのではなく、ゼロにすることも一手です。
役員報酬ゼロであれば社会保険は資格喪失となり、資格を喪失した月(ただし月末喪失の場合は翌月)から社会保険料はゼロになります。
しかし、国保、国民年金には加入しなければなりませんのでご注意ください。ただし、家族に社会保険加入者がいる場合は、家族の社会保険の扶養に入ることができますので、それができる場合は、扶養に入ってしまうことが最もコストパフォーマンスが良いでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの影響による経営環境の悪化は誰にとっても不本意なものですが、役員報酬については、何となく未払いのままにするのではなく、戦略的に減額をして、社会保険料の負担減にもつなげ、少しでもキャッシュフローの改善を図って頂きたいと思います。