「年収400万円で高いモチベーションを持つ人もいれば、年収1,000万円貰って低いモチベーションの人もいる」取材中、遠上氏の話してくれた言葉にハッとする。「働く」という行為そのものが、個々人の人生にまで密接に絡んで考えられることが一般的になりつつある現在、給与の上げ下げで、その人のモチベーションをコントロールすることの限界はきているのだと同氏は話してくれた。「企業通貨」という新しい概念で、これからの組織のモチベーションをデザインしていくCafé Point Serviceについて、お話を伺いました。
プロフィール(株式会社ステラパートナー 代表取締役 遠上 智之氏)
2004年 マルハン入社 。 マルハン営業部門で管理職を務め、2008年人事部へ。従業員の企業通貨交換用ECサイト「Café Point Service」をパートナーと開発。同社での検証期間を経て、2019 年 4 月に社内ベンチャー企業として 、 株式会社ステラパートナーを設立 。本サービスは設立1年で、会員数20,000名、年間取引高5億円を超えるECサイトに成長している。一方で現在は、事業を多角化し、豊富な人事経験を生かし年間数十社の企業に対し、課題に応じた解決策を、人事的な手法によるマーケティング、解決施策の設計、導入、検証まで支援。人事施策を99%成功に導くためのノウハウを販売する人事コンサルタントとしても活躍中。
株式会社ステラパートナーについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
株式会社ステラパートナー では、BtoBtoE(Employee:従業員)のトリプルウィンを実現させていく事業を展開をしています。現在は「企業通貨」を軸にして、それらを実現させるサービス「Café Point Service」の企画と開発、そしてサービスを使った企業の人事評価制度構築コンサルティングを行っています。
ー 商品やサービスを提供したい企業と企業通貨を活用したい会員企業をつなぐ、プラットフォーム「Café Point Service」とは、どんなサービスなのでしょうか?
簡単に言えば、法人企業に特化した会員制のECサイトになっています。
ただ、BtoC向けの会員制ECサイトではなく、BtoBtoEのサイトになっていますので、契約自体は各企業。そして、それを従業員が活用をするという構図になっているのが特徴です。
そして、そのECサイトの中で使える通貨をサービスの中では「Café Point」や「企業通貨」と呼んでいます。
※Café Point Serviceの運用全体図
ー 実際に企業や従業員が利用する際は、どの様にして使うのでしょうか?
まずは企業が、何かの理由(例:インセンティブや賞与等)につけて、ポイントを従業員に付与します。そして、そのポイントを受け取った社員がサイト内に出ている商品やサービスと交換をして、それらを受け取ることが出来るといった流れになります。
ポイントが付与されている従業員の取引実績は、弊社側で全て管理をしていますので、取引実績に応じた請求を各契約企業様にお出ししているという流れですね。
ー なるほど!ポイントは具体的にどんな商品と交換出来るのでしょうか?
各種電子マネーやAmazonや楽天といったECサイトのポイントとの交換や、旅行会社と提携したパッケージツアー、家電製品など50万点を超えるメニューとの交換が出来ます(2020年3月時点)
ー 企業は、実際にどんな形でサービスを運用しているんでしょうか?
元々、企業内にあった表彰制度やインセンティブの仕組みを、直接現金での給付や物品提供ではなく、「企業通貨」という形にして運用をしている会社や、社員の自己啓発推進の一貫でポイントを付与するといった形式など様々です。
企業の運用事例としては、これまで人事制度上「現物給付」と呼ばれていた、組織が金銭以外の物品などで従業員に支払ってきたものを「企業通貨」という名前に変えて、新たなルールとして運用して頂いております。この仕組みにすれば、経営者・人事と従業員間だけではなく、上司や部下、従業員間の同士の横関係でもポイントの交換や受け渡しも可能になり、渡し方にも企業の特徴やカラーをつけることが可能になります。
現金でなく、企業通貨を発行するメリットについて
ー (企業が)これまで通り現金ではなく、「企業通貨」を発行する背景についても教えて下さい。
昔であれば、「勤続◯年記念で記念旅行をプレゼント」といった様な報酬が嬉しかった時代もあったかもしれませんが、最近ではその価値観も変わってきており、個々人によって柔軟に対応されることが求められています。それであれば、その会社から従業員に対する感謝の気持ちを、個人が貯めたり、使うモノやタイミングを選べたりする方が、双方にとってハッピーな渡し方・貰い方になっているといった背景が大きな要因になっています。
ー それによってどんなメリットが生まれているのでしょう?
最大のメリットは【十人十色の人事施策が実現可能になる】点です。
人事制度の運用や評価の課題は、企業毎によって変わってくるものです。昔の様に、役職をあげればいい、ボーナスを多く出せばいい、という時代は既に過去のものになりつつある中で、仕事に求める価値観も従業員によってバラバラです。そして、その一つ一つに組織が答えることは現実的に不可能だと感じます。その時に企業内通貨という仕組みをうまく使うことで、従業員一人一人にあった、十人十色のマネジメント施策が打てる様な施策の構築が可能になります。実際に、人事を長く経験してきた私からしても、人事施策として打てる幅が格段に拡がるとも感じています。
ー なるほど。実際サービスを運用している企業によって、企業通貨の呼称は変わってくるイメージでしょうか?
そうですね。例えば、利用企業のマルハン社では「マルカフェポイント」と呼んで頂いたり、企業の名前に合わせて、〇〇コインや××ポイントと名付けてもらって、運用されているものが多いです。
給与や賞与といった会社が従業員に出すものにも「遊び心」はあってもいい。
ー 起業をされた経緯についても伺いたいのですが、いつ頃から起業を意識していたのでしょうか?
20代から起業をしたい!という想いは持っていました。会社の中で受ける研修でも、「10年後は、どんなキャリアを描きたいですか?」という問いに対しても『社長になりたいです』と言う様なタイプではありました。そこから約10年パチンコ大手のマルハンで人事を担当するのですが、その時に今のCafé Point Serviceのサービス構想を思いつき、社内プレゼンを繰り返して、現在のステラパートナーの立ち上げに至ります。
ー ということは、現在も前職(マルハン社)とは関係のある形なのでしょうか?
はい。本当にイレギュラーという形ですが、前職からの出資を頂いて、今の会社を立ち上げています。提案から約2年の期間はかかってしまいましたが、最終的には会社もそれを支援してくれて、何とかここまで来ることが出来ました。
ー 元々組織にあった仕組みを使ったのではなく、0ベースの提案から立ち上げられたのはすごいですね!サービスのアイデアは、どの様にして思いつかれたのでしょうか?
前職では約10年間、人事として仕事をしてきた中で、人事の施策には社員のモチベーションを上げることも下げることも出来る無限の可能性があると感じてきました。
事実、組織の中には年収400万円でモチベーションの高い人もいれば、年収1,000万円貰ってもモチベーションの低い人も存在しますよね?会社の中でそれを見てきた私は、単純に「なぜ、こういうことが起きるのか?」と常に疑問を持っていました。給与や賞与は、ただ払えば効力を発揮するものではなくなってきていると実感したと同時に、ただ払うことで満足している企業も、世の中には数多く存在すると感じたんです。
ー なるほど。
例えばですが、金額の大小に関わらず大切な人から、何かしらのメッセージや手紙を添えられたプレゼントって大切にしますよね?ここで大事なことは「誰から貰った?」であったり、「なぜ、それを貰ったのか?」といった背景だと思うんです。給与や賞与といった会社が従業員に出すものにも、そういう遊び心があってもいいのでは?と考えたのが最初のキッカケですね。
ー 受け渡し方や、演出のデザインですね!
そうですね。それに加えて、その組織の中だけで使える「企業通貨」という言葉にして、ちゃんとその企業の文化・慣習として、馴染みのある言葉していけば、この仕組みは絶対にハマると感じました。丁度、世の中の流れも、現金を扱わないキャッシュレスという言葉の台頭や、働く人を取り巻く多様な環境整備、そして、企業規模を問わず良いサービスであれば受け入れられるIT環境の普及もあって、サービス化に踏み切ったという経緯ですね。
今後について
ー 中長期的な展開についても、お教え下さい。
先の読めない経済の状況や、従業員一人一人の価値観の変化に伴って、組織が柔軟な対応していくことが求められる反面、人事施策は完成すると変えることが難しいのが現状です。その変化に対して、柔軟な対応が出来る仕組みが弊社が提唱する「企業通貨」であるという認知を拡げると共に、会社の価値とユーザーからの信頼を高めていける様、引き続き取り組んでいきます。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
環境の変化に伴い、人事担当者の業務範囲も多岐に渡ってきていると感じます。人によっては、新しいことをするのはリスクだと感じる方もいるでしょうし、私自身も人事を経験した身として、その気持ちは痛いほど理解出来ます。ただ一方で、中小企業や不人気業界は、今こそ自分たちの特色を出した人事施策を行うタイミングだとも感じており、ここで差別化を図ることで、離職率の低下や採用力の強化にも繋げられるとも思っています。この記事を読んで頂いて、共感頂けるものがあれば、是非一度お問合せを頂けると嬉しく思います。
ー 取り組む方が少ないからこそのチャンスでもあるんですね!今日は有難うございました。
こちらこそ、ありがとうございます。