多くの都道府県で10月1日、それ以外の都道府県でも10月初旬に最低賃金の引き上げがあります。
東京都・神奈川県の最低賃金は1,000円超へ
毎年この時期の恒例ですが、今年は、東京都の最低賃金が1,000円を超える節目の年となりました。
令和元年9月30日までは、985円だった東京都の最低賃金は、10月1日から28円引き上げられて1,013円になります。同じく、神奈川県の最低賃金も、985円から28円の引き上げで、1,011円となります。
東京都と神奈川県の2府県が、最低賃金1,000円を突破することになります。キリの良い数字なので、「時給1,000円」という雇用契約をアルバイトやパートなどの方と結んでいる会社は少なくないと思いますが、この2府県では、10月1日以降、1000円でも最低賃金違反になってしまいますので、最低賃金以上への昇給を忘れないようにご注意ください。
他の都道府県の最低賃金は、厚生労働省のサイトのこちらに一覧が出ています。
新しい最低賃金で給与計算を行うべきタイミング
さて、よく質問を受けることがあるのは、どのタイミングの給与から、新しい最低賃金が適用されるのかということです。
より具体的に言えば、たとえば、「末日締め、翌月15日払い」という会社の場合、10月15日支払分の給与は、引き上げ前の最低賃金、引き上げ後の最低賃金、どちらで計算するのが正解なのかと言う質問です。
この点、正解は、「引き上げ前の最低賃金で計算する」です。最低賃金は、実際に働いた日の時点の最低賃金が適用されますので、支払日が10月であったとしても、9月中の労働に対する賃金は、引き上げ前の最低賃金をクリアしていれば大丈夫ということです。
実務上、手間がかかるのは、「15日締め、当月25日払い」のように、末日締めではない会社です。このような場合は、新しい最低賃金の適用によって時給単価が変わってくる場合、9月16日~9月30日までと、10月1日~10月15日の2つに分けて時給計算を行ったうえ、合算する必要がでてきます。ただし、「労働者有利」に扱うことは法的に問題ありませんので、全部の期間を新しい最低賃金で計算してしまえば、1回で計算が終わり、会社の手間が減るとともに、労働者にも喜ばれると思いますので、そのような対応も検討してみてください。
業種別最低賃金にも注意
最後に、業種別の最低賃金についても申し添えます。
最低賃金は、基本となる最低賃金の他に、「特定最低賃金」と呼ばれる業種別の最低賃金も設定されています。都道府県によって、どのような業種に何円の特定最低賃金が設定されているのかは異なるのですが、特定最低賃金が適用される業種では、基本となる最低賃金と特定最低賃金の両方を確認して頂き、高いほうの最低賃金を使って給与計算を行ってください。
特定最低賃金の一覧は、厚生労働省のサイトのこちらに示されています。
まとめ
商品やサービスの値上げが難しい環境の中、最低賃金は毎年引き上げが続いており、経営者にとっては負担が大きくなる環境が続いていますが、事業の発展や生産性の向上を通じて賃金の原資を確保し、法令の遵守に心がけていきたいものです。