日本一分かりやすいHRテクノロジーの「最前線」|起業サプリジャーナル

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日本一分かりやすいHRテクノロジーの「最前線」

公開日:2019.06.14

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2019年4月19日に、拙著「日本一分かりやすいHRテクノロジーの教科書」を出版させていただきました。

しかしながら、HRテクノロジーをめぐる世の中の動きは日進月歩で、出版後に起こった世の変化や、読者の方からのフィードバック等を本稿で解説し、著書の補足とさせて頂きたいと思います。

 

デジタル手続法の成立

大きな変化点としては、2019年5月24日のデジタル手続法の成立です。

デジタル手続法は、①行政手続は原則として電子申請で行うべきとする「デジタルファースト」、②同一の情報提供を重ねて求めない「ワンスオンリー」、③1つの事案に関連する手続は1回で済ませる「ワンストップ」の3原則を柱とする、これからの行政手続の方向性や大方針を明確化するための法律です。

これを受け、人事労務領域の分野においても、2020年度から、まずは大企業に対し、年金事務所やハローワークへの手続の多くが電子申請の義務化の対象となります。2021年には企業がクラウド上に社員情報や給与情報をアップロードして、そのクラウドに行政がアクセスして情報を取得し、必要な行政手続を進める形に進化をしていくことが計画されています。

電子申請の義務化やクラウドへの情報アップロードの対象は、遅かれ早かれ中小企業も対象となることは間違いありません。企業側としてもバックオフィスの労働生産性を高めるためるためには行政手続の効率化は必須ですから、ますますHRテクノロジーへの対応を急がなければならない時代になってきているということが言えるでしょう。

 

勤怠管理のルール作りの難しさ

「日本一分かりやすいHRテクノロジーの教科書」の出版後、読者の方から書評や感想などを多く頂きましたが、最も多くの声を頂いたのは、クラウド勤怠管理ソフトの導入についてでした。

2019年4月から労働時間の客観的手法による把握が義務化されたこともあり、まずは勤怠管理の領域からHRテクノロジーを導入しようと検討している企業が多いようです。

私が執筆時点では想定しなかったような声も多く、届いた声を具体的にいくつか紹介します。

・出張中や直行直帰のときも便利だと考え、スマートフォンのアプリでの打刻をルール化しようとしたら、GPS機能で随時監視されているようで嫌だと社内から反発の声が上がった

・残業を事前申請制にするのだが、申請があった時間を超えて残業を行う社員がいて、その超過分の残業をどのように管理していくかが難しい

・スーパーフレックスタイム制かつ在宅勤務も認めていて、早朝と夕方に分けて勤務をするような社員もいるが、早朝勤務と夕方勤務の2回に分けて出勤・退勤の打刻ができなくて不便を感じる。

働き方が多様化したり、会社によってルールも様々なので、初期設定をするにしても、単純に機能的な設定だけでなく、社員の気持ちや、企業の価値観に寄り添った勤怠管理ルール作りが必要だと、強く考えさせられました。

HRテクノロジー導入は、あくまでも労務管理の「手段」であり、導入すること自体が「目的」になってはいけません。HRテクノロジーの導入は、社員の理解や共感を得られるものでなければならず、今風に言えば「エモさ」が大切なのかもしれません。

 

社労士の先生からのフィードバック

本書を出版後、出版元の日本法令様に主催をいただき、出版記念セミナーを行いました。そのセミナーは同業である社会保険労務士の先生を対象に開催したのですが、書籍では触れていなかったものの、HRテクノロジーとの関わり方について、出席された先生方が、私と同じ悩みを持っていることを知ることができました。

その「悩み」とは、対応しなければならないHRテクノロジーの数がどんどん増えていく問題です。

社会保険労務士の主要業務の1つである給与計算を例にとれば、HRテクノロジーが普及する前の時代は、「弥生給与」や「PCA給与」といった給与計算ソフトを1つ事務所内に導入し、紙に印刷した給与明細や、PDF化した給与明細のデータをメールで納品すれば大丈夫でした。

しかし、HRテクノロジーの時代になると、「弊社は人事労務freeeを使っているので、先生の事務所のメールアドレスを招待しますね」とか「弊社の労務管理は全てジョブカンシリーズなので、ジョブカンで給与計算をしてクラウドで納品してください」といったように、企業側で導入しているHRテクノロジーに社会保険労務士側が合わせていかなければならないという形になってきています。

そのため、操作性の異なる複数のクラウド給与計算ソフトに対応することが、社会保険労務士事務所にとって負担感になってきています。

頑張って複数の給与計算ソフトに対応できる体制を作っていくか、それとも「うちの事務所は人事労務freeeでないと受けられません」というように対応可能なソフトを絞って専門店化していくかは事務所の方針次第であるものの、給与計算領域に限らず、クラウド勤怠管理ソフトやクラウド人事労務手続ソフトなども含め、今後の社会保険労務士事務所の重要な経営課題となってくることは間違いないでしょう。

 

まとめ

HRテクノロジー自体、現在進行形で発展途上の技術ですし、世の中の情勢も刻々と変化をしてます。本はまとまった体系的な知識が得られるという意味で長所があるものの、あくまでも、出版時点の「静的情報」ですから、ニュースやWEBメディアなどに目を配り、最新の「動的情報」をキャッチアップしていってください。

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投稿者について
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榊裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。

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