近年のスタートアップのビジネスモデルとして、注目されている「サブスクリプション(定額制)」。映画配信や音楽など、私たちの生活に根付いて様々なジャンルのサブスクが、生活を豊かにしてくれている。その中でも、今回紹介をするサービスは少し珍しい。“美容室”という利用頻度が限られた場所を、サブスクにすることで日常的に通う場所へと変化させ、美容業界の中で新たな産業を生み出そうと試みる。「キレイになることでの“自信”をたくさんの女性に持って欲しい」と想いを語る、起業家 鈴木みずほ氏にお話を伺いました。
プロフィール(株式会社Jocy 代表取締役 鈴木みずほ氏)
大学卒業後、不動産営業を経て、5年半サイバーエージェントグループに在籍。
新規事業立ち上げの中核メンバーとして、通信会社、データ保有会社などの大手企業と事業提携を行い、WEB広告の商品企画から開発まで従事。新規事業単月粗利ギネスを更新。
2017年10月、株式会社Jocyを設立。同年3月、美容定額サービス「MEZON」をリリース。
株式会社Jocyについて
> 事業内容について教えて下さい。
シャンプー・ブロー・ヘアケアに特化した美容定額アプリの「MEZON(メゾン)」企画と開発をしています。
> 「MEZON(メゾン)」とは、どんなサービスなのでしょうか?
弊社で提携をしている厳選した美容室のシャンプー・ブロー・ヘアケアといったカット・カラー・パーマ以外のヘアメンテナンスメニューが月額16,000円〜から受け放題のサービスです。
現在、提携の美容室の数は180店舗を超えており、エリアも東京だけではなく、名古屋・大阪・沖縄といったエリアにまで拡大をしています(2019年4月時点)。
> 初期のユーザーとしては、やはり女性が多いのでしょうか?
ユーザーの8割は“働く女性”となっており、30代半ば〜40代前半の方を中心として、20代から60代までの幅広い年齢層の方に利用を頂いています。2018年2月にローンチをして、現在8,500人のユーザーがMEZONに登録をしてくれています(2019年4月時点)
> 提携している美容室は、どの様に選定しているのでしょうか?
提携美容室は、全て弊社から直接お声かけをしています。
実は、提携の前に必ず覆面調査をしていて、予めJocyの人間とは言わずに、店舗のサービスを受け、サービスの良し悪しを14の項目に分けて評価をし、弊社独自の基準を満たす美容室のみ参画をして頂く様にしているんです。
> まるで、ミシュランみたいな選び方ですね!
提携美容室の“質”には、とても拘っています。なのでMEZONでは、どのエリア・どの店舗に入っても、一定の品質が担保されたサービスを受けられるといったサービスクオリティを維持出来ているという訳です。
> 提携美容室には、どんなメリットを提供出来ているのでしょう?
大きくは、3つのメリットを提供出来ています。
・“質”の高い新規顧客の送客と獲得支援
・ ヘアケアの施術によるプラスオン収益の獲得
・来店回数を上げることによる、顧客とのコミュニケーション頻度の更新
一つ目の【新規顧客の送客と獲得支援】についてですが、
「MEZONから来るお客さんは、他の集客媒体と比べて圧倒的に“質”が高い」と提携美容室からよく言ってもらうのですが。その理由は、サロン特化の定額サービスという、まだ馴染みの薄いモノに対する情報感度の高さや、身だしなみに自己投資する美意識の高さ、 でも月額16,000円という費用を払ってでも利用が出来る、という可処分所得の高さが、一定ラインのユーザーの“質”を担保しており、現時点では、そういった顧客の送客が可能となっています。
二つ目の【プラスオン収益の獲得】ですが、これまで“シャンプー・ブローだけで美容室にくる”という方が、そもそもいなかった既存の美容室の収益形態に、MEZONを通じて、新たな収益を産むことを可能にしています。例えば、まだカットが出来ないアシスタントでも、シャンプー・ブローを通して、顧客を見つけ、店舗に利益を産んでくれることが可能になります。
提携美容室との契約も、ユーザーが来店した分だけ、弊社から費用を支払うカタチを取っており、掲載に当たっての費用などは一切頂いていないので、(美容室側は)リスクを取らずに、新たな収益を産めるといったことを可能にしています。
最後の【顧客とのコミュニケーション頻度の更新】ですが、特に女性であれば、これまで2~3ヶ月に一度行くか、行かないかの頻度で通う美容室を、定額にすることで、単純にいく回数を増やすことが出来ます。来店頻度が上がれば、当然スタイリストさんとのコミュニケーションも増えますし、そこからカットやカラーといった、アップセリングに繋がる提案をしやすくなるといった機会の提供も可能となっています。
> なるほど。提携美容室にとっては、とてもメリットがある話ですね!
そうですね!実際に(美容室に)お声かけをしてからの提携決定率は、96%以上と高い数字でも現れていますね。
大事なプレゼン前には、必ず美容室へ・・自分が美容室から貰っていた「自信」を多くの女性に届けたい
> 美容室へ通い放題や、シャンプー・ブロー特化など。どの切り口を取っても斬新なサービスですが、サービスを思いついたきっかけは何だったのでしょう?
元々、前職のサイバーエージェントグループに勤めていた時から、月に4~5回は必ず美容室に通っていたんです。
> それは結構な頻度ですね・・
その時は、大事なプレゼンや会食の前に必ず髪の毛をセットしてから→その場に挑む、といった。ある種の”ゲン担ぎ”的な目的でやっていたんです。
でも、それをした時のプレゼンの通過率や、モノゴトが円滑に進むことの比率がすごい高くて、それを徐々に実感し始めてから、ある時「私は美容室で”自信”を貰っているんだな」って、気づいたんです。
> 髪の毛をキレイにして貰うことで自信がついてたんですね!
そうです。その時に(日常的に美容室に通える様になったら、もっともっと女性が輝いて、日常も人生も、うまくいくだろうな)と思って、このサービスをつくりたいって考えたんです。
だから、最初から「シャンプー・ブロー、ヘアケア 」に特化した美容定額のサービス、とは決めていましたね。
ただ、(美容室のサブスクリプションがやりたかったのか?)と言われると、それは少し違くて。
本当に『美容室を日常的に通える場所にしたかった』という想いで始めたサービスで、取り入れたビジネスモデルがサブスクリプションだったというのが、実際のところです。
> サービス名には、どんな由来があるのでしょう?
メゾンの本来の意味は、フランス語で「住居」や「建物」を表す意味で使われている言葉ですが、『サービスを通じて、美容室を自宅のバスルームと同じ様な感覚で利用して欲しい』という想いを込めて、住居をもじって、メゾンという名前にしました。
起業ほど、おもしろい仕事はない。小学生の時から「起業をする」と決意
> サービスの構想が出来て、本格的に「起業をする」となった転機やきっかけは何だったのでしょう?
起業をすることや経営者を志す、といった事自体は、小学生の頃から考えていました。
29歳で必ず起業をする、というのは心に決めていて、前職のサイバーエージェントグループでも面接の時には、そう伝えていました。
> 小学生の頃から起業することを目指すって意識としては早いですね。
元々、代々会社経営をしている家系に生まれ育ったことが大きいと思います。
会社経営といっても、そんなに華々しいものではなく会社の紆余曲折を子どもながらに見てきました。その中でも、私の父の代が一番浮き沈みが激しい時期を送っていたのですが、もがきながらも前へと進む父の姿に(こんなに人生を通して、チャレンジが出来続ける仕事ってないな)って思ったんです。その時、起業を志してから他になりたい仕事を見つけようとは思わなかったですね。
> へえ!その時点から、既に起業の決意は固かったんですね。
いくら社長になって組織を大きくし、利益を生んだとしても、社長自身が努力をし続けなければ、状況は一転することも普通なんだっていう世界を間近で見ていました。
努力次第で、生きるか死ぬか、生きた場合は可能性は無限大にも広がることがとても魅力的に感じました。
今後について
> 中長期的な展開についてお教え下さい。
年内中に、提携美容室を1,000店舗まで増やしたいと考えているのと、異業種との事業提携を絡めた展開を考えています。例えば、デートマッチングアプリのユーザーにMEZONの無料利用券を配布したり(※)、美容業界ではない異業種の大手企業とコラボをして、ユーザーを拡げていく為の施策を準備しています。
長期的には、ユーザーに提供できるメニューにも拡がりを持たせようと考えていて、MEZONと提携美容室のオリジナルメニューの開発といったことも考えていけたらと思います。
※参照リンク:デート直前の女性に、一流美容室でのシャンプー・ブローを無料でプレゼント
> 最後に、最後に記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば教えてください。
夏には、MEZONのメンズ版をリリースしようと現在動いておりますので、ヘアケアに意識の高い男性ユーザーの方は是非注目して頂けると嬉しいです。
合わせて、JocyではMEZONの事業拡大に向けて、営業も募集しています。「美容室を日常的に通えることを文化にしたい」という想いを持って、提携先の拡大が出来るメンバーを採用したいと考えているので、興味のある方がいれば、是非お気軽にご連絡下さい。
> メンズ版のリリースも楽しみですね!今日は有難うございました。
ありがとうございます。