突然の雨に打たれ、買った傘の本数は数知れず・・毎年何本の傘を買っては、失くしていますでしょうか?日本洋傘振興協議会によれば、日本の傘の消費量は年間なんと1億2,000万本〜1億3,000万本と言われているそうです。コレって結構な数ですね!買わずに済むならそうしたいし、こっちだって失くすつもりで買ってない、そんな時に便利なサービスが今回紹介をする「アイカサ」です。【傘は使った分だけの課金制・設置場所であればどこでも返せる】。これからの時代は、傘だってシェアする時代!渋谷から雨の日をハッピーにする起業家 丸川氏にお話を伺いました。
プロフィール(株式会社Nature Innvation Group 丸川照司氏)
台湾と日本のハーフ。幼少期には、シンガポールや東南アジアでも過ごし、中国語と英語を話す。
18歳の時にソーシャルビジネスに興味を持ち、「社会の為になるビジネスをしたい」と志す。19歳の時に子ども目線の反抗期カウンセラー、20歳に株式会社ノジマでセールストップ10入り。その後マレーシアの大学へ留学。在学中に中国のシェア経済に魅了され、自身が最も欲していた傘のシェアリングサービスを大学を中退して始める。夢は財団を作ること。
現在は、未来をつくる実験区「100BANCH」を拠点に活動をしている。
株式会社Nature Innvation Groupについて
>事業内容について教えて下さい。
1日70円で、いつでも・どこでも傘をシェアリング出来るサービス「アイカサ」の企画・開発・運営をしています。
> 傘のシェアリングサービス「アイカサ」とは、どんなサービスなのでしょう?
アイカサは、『雨の日は傘を持ち歩かないといけない』という常識を根本から覆すシェアリングサービスです。盗難防止機能付きの特殊傘にIoTを組み合わせ、街中に複数箇所配置された傘を、1日70円から、いつでも・どこでもレンタルが出来る機能を持っています。
専用アプリをダウンロードすることなく、LINEアプリの中で動くミニプログラムを使用しており、LINEを使っている方であれば、誰でも簡単に利用することが可能です。
> 傘って買っても毎回直ぐに失くしちゃうし、雨が降ってない時は傘を持つのが嫌なので、こういったサービスすごい嬉しいです!現在は、どこで使えるサービスとなっているのでしょうか?
現在は、都内を中心に約100ヶ所で利用が可能となっています。設置場所は、コンビニやオフィスビル、街中の飲食店、駐車場といった、店舗や商業施設を中心に置かれています。
使用した傘の返却は、アイカサが設置されている場所であればどこでも良いので、返したい時に直ぐに返せますし、料金も1日70円から最大420円で1ヶ月間自由に傘を使用することが出来るので、ビニール傘1本を買うより安く使えるのも、アイカサの特徴です。
> 早速サービスも使ってみたのですが、これLINEの中で動くサービスなんですね。
はい。昨年LINEが公開したAPIを使ってサービスを構築しました。
雨の日に傘を使いたいタイミングって、外出時がほとんどで、その時に必ずしもWi-Fiがある環境じゃないと思うので、ユーザーがスムーズに使えるベストな環境を想定して、このような仕様にしました。
中国では、当たり前な仕様となってきていて、最近では、こういったサービス上で動くアプリケーションのことを「ミニプログラム」と呼んでいます。
※LINE内の同社アプリケーションからIDを取得し、傘が使用できる仕組みとなっている。
> なるほど!初めて知りました。ビジネスのモデルとしては、ユーザーが借りた傘の利用料が御社の収益になるのでしょうか?
そうですね!現時点では、そうなっています。
今後は、アイカサの傘自体を広告媒体とした収益モデルや、傘は「移動」を前提としたツールなので、その先で行われている消費に関連したO2Oのマーケティングデータの活用といったことを派生として考えています。
“差す”だけじゃない!傘は企業や店舗にとっても魅力的な集客ツールだった。
> 実際に傘を置いている加盟店側には、どんなメリットを提供出来ているのでしょうか?
大きくは、2つのメリットを提供しています。
一つ目は、雨が降った時に無駄な傘を買わせずにお客さんに傘を貸し出せる、といった店内サービスの拡充といった点。
そして二つ目は、その場所に【傘がある】という理由で、お店や場所に“行く”キッカケを提供出来ている点です。現在は、店舗の紹介もMAP内で記載していますし、場合によってはクーポンを出すなどして、アイカサからも加盟店側へ行く支援をしています。
リアルでサービスを提供する店舗側にとって、“雨”は売上に大きく影響する要因の一つです。
例えば、そのタイミングで傘を持っていなかったら(小ぶりな内に早く帰ろう)ともなりますし、街に滞在する時間がギュッと短くなってしまいます。
そんな時に、その地域全体で傘のシェアリングが行き届いていれば、突然の雨でもその地域で過ごす時間が変わってくると考えています。
> 確かに。そしたら、雨の日は御社も店舗もワクワクですね!
ただ、実際はまだサービスローンチして2ヶ月なのでトラブルが起きないかドキドキです(笑)
実際ローンチしてから、まだ10日も雨が降ってないんですよね・・(2019年2月時点)
> あ、それはそうですよね。
でも晴れている時は、いつも(雨降れー雨降れー)って思ってます。
> 一同:(笑)
社会に抱いた嫌悪感が「社会起業」をしたいと思うキッカケに。
> 「アイカサ」自体は、どの様にして生まれたサービスなのでしょうか?
「社会起業をしたい」といった想いでビジネスアイデアを考えていた時に、
2年前に起きた中国のシェアリングブームの中で、傘のシェアリングサービスを知って、(これを日本でやろう!)と決めました。
当時の中国では15社ほどの傘のシェアリングサービスが立ち上がり、どれも億単位で資金調達をしており、日本で同様なニーズが掴めるのでは?と感じましたし、実際に日本でも年間約8,000万本のビニール傘が買われ、その内の6割は一年以内に捨てられている、という現状もあり、
『社会に対しても良いサービスだし、これが実現出来れば雨の日の景色も変わるんじゃないか?』と思い、サービスの開発に動き始めました。
> 起業的な側面だけでなく、それが初めから「社会起業」に向いた経緯には、どんな背景があるのでしょう?
元々、自分自身の親の教育方針で一週間に8つの習い事をさせられる家庭で育ったり、帰国子女だったことを理由に学校でイジメを受けていたりなどをしている内に、早い段階で家庭や社会に対して反発してしまったんです。
そこから大学生の時に、そういった自分自身が抱えていた“生きづらさ”を解決する手法の一つとして、「社会起業」という取り組みをしている人たちの存在を知ったんです。
> でも普通なら、そこで社会に対する嫌悪感みたいなモノが前面に出そうですが、そこから「(社会を)良くしたい」という方向にシフトしたんですね。
言われてみれば確かにそうですね・・(笑)
ただ、自分と同じ想いをする人を増やしたく無かったり、そもそもそんな想いをして欲しくない、という感情が社会起業に目を向けた一つでもあると、今は感じています。
> なるほど。
「20-30社の投資家を回っても、全然見向きもされませんでした」 社会起業=ビジネスとしての魅力、にはならない狭間の苦悩。
> 「傘」のシェアリングって、アイデアとして面白いし、社会の為にも良いって言うのは、すごく理解出来るんですけど、一方それを投資側の観点から見たら、あまり反応が良くなさそうな印象がありますが、実際どうでしたか?
仰る通りです。立ち上げにあたって20-30社の投資家を回ったのですが、最初は見向きもされませんでした。
自分自身の起業家としての魅力も要因の一つだったかもしれませんが、ビニール傘の市場自体も400億円と決して大きな市場ではないですし、この手のサービスはインフラを持つ会社との提携がキモになってくるので、「それをお前に出来るのか?」といった懸念を持たれていたりなど、最初はかなり悲観視された立場でした。
> でも実際にメディアへの露出や注目度を含めたら、スタートアップとしては異例の取り上げられ方をしていますよね。先日はコンビニ大手のローソンとの提携も日経新聞で話題になっていましたよね!ただ、その【社会は面白いと思っている】と【ビジネスとしての魅力】の乖離は、とても悩ましいところですね・・
そうですね。
これはサービスとは関係のない自分自身の一つの目標でもあるのですが、そういった社会に対して良い取り組みをしていくNPOやスタートアップを支援していく財団をつくりたいとも思っています。
アリババのジャック・マーを例に取ると、彼は元々教師でアリババという大企業を築いた後、今は一線を退いて、教育に重点を置く財団を設立して活動をしています。
将来的には、自分も“社会を良くしたい”という想いをカタチに出来る様、財団やソーシャルベンチャーキャピタルといった取り組みから【支援をする側】に回りたいとも考えているんです。そのためにも今頑張らないといけません。
今後について
> 事業の中長期的な展開についてもお教えて下さい。
まずは、2020年までに【雨の日に便利なインフラ】になることを目指しています。
数値的な目標を言えば、そこまでに3万本の傘を設置している世界を目指します。
そこから次は、オフィス向けの拡大。さらにそこからレジデンス向けといった拡がり方を考えていまして、生活圏全てのシェアを取っていきたいと考えています。
傘を買わなくて良いオフィスや、傘を買わなくても良いマンション、そして最終的には、傘を買わなくてもいい街、といった拡がり方が出来たら理想です!
> 「傘を買わなくていい街」って、とても未来っぽいですね! 最後に記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば教えてください。
冒頭にもお話しましたが、「傘」自体を広告枠として使ったり、「傘を持って移動する」という行為自体がマーケティングデータとして使えたりなど、各種企業さんとコラボしやすいサービスだと思っています。もしアイカサとのコラボに興味を持ってくださる先があれば、是非ご一緒させて下さい!
> 観光地にアイカサがあったら絶対便利と思いますけどね!興味のある方は、是非ご連絡下さい。今日はありがとうございました!
ありがとうございます。