持ってきたのは「カルチャー」。ニュージーランド発のコーヒースタンドを誘致した日本人。COFFEE SUPREME JAPAN松本浩樹氏【起業インタビュー77回目】|起業サプリジャーナル

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持ってきたのは「カルチャー」。ニュージーランド発のコーヒースタンドを誘致した日本人。COFFEE SUPREME JAPAN松本浩樹氏【起業インタビュー77回目】

公開日:2018.10.09

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渋谷東急本店を代々木八幡方面に向けて、ひたすらに歩く。決して良いとは言えない立地にニュージーランド発のコーヒースタンド「COFFEE SUPREME」が出来た。オーナーの松本浩樹氏は、タワレコ、TSUTAYA、コナミと日本のエンタメ業界の中心で活躍していた経歴を持つ人物だ。それまでの経歴からは、コーヒーの”コ”の字も出てこない松本氏は、どうして3年もかけてCOFFEE SUPREMEを日本に誘致したいと思ったのか?大企業のキャリアを捨て、40歳からの挑戦を始めた起業家に話を伺いました。

 

プロフィール(COFFEE SUPREME JAPAN 代表取締役 松本浩樹氏)

1974年生まれ。東京中野育ち。大学卒業後、TOWER RECORDSへ入社。販促、事業企画などを経て、TSUTAYA ONLINE、KONAMI DIGITAL ENTERTAINMENTへ。METAL GEAR SOLID4や数多くのマーケティングプロモーションを担当。出産を機に、父親初体験作業に専念するため1年半の育休取得。2013年ニュージーランドへ正式に移住し、ときどき東京。ニュージーランドと日本をつなぐCOFFEE SUPREME JAPAN設立。

 

COFFEE SUPREME JAPANについて

>COFFEE SUPREME JAPANについて、お教え下さい。

 

都内に2店舗コーヒースタンドを出店していて、そこの運営をしています。

2017年の10月に渋谷に1店舗目をオープンし、今年の5月には(株)リクルートマーケティングパートナーズのオフィス内に2店舗目をオープンさせました。

 

>ここ数年でコーヒースタンドが身近になり、沢山のお店を見る様にもなりましたが、スタンドとしての特徴ってどんなところにあるのでしょうか?

 

COFFEE SUPREMEは、ニュージーランド発祥のお店です。会社のコンセプトとして、「美味しいコーヒーを出すのは当たり前」。それはもう最低限のルールとしてある中で、そこには焦点を当てていません。それよりも「コーヒーを通じた、コミュニケーションや体験をどうやって提供出来るか?」に重きを置いていて、そのハブ的な存在を目指しているコーヒースタンドです。

JAPANも、そのコンセプトを体現出来る様なお店づくりをしていて、お客さんと対等に会話が出来るカウンタースタイルでの提供や、お店を中心に人が集まれる様な場所づくりを意識しています。

>地元ニュージーランドでは、どんな立ち位置のお店なのでしょうか?

 

地元では、今年で25周年を迎える歴史あるコーヒーロースターです。

 

>へえ!25年も。

 

何百というカフェがCOFFEE SUPREMEの豆を使っていたり、現地ではとても有名な会社です。コーヒーといった側面だけじゃなく、クリエイティブな見せ方にもこだわっていて、CEOが元家具デザイナーだったり、社内には元スケーターだったりミュージシャンといったクリエイティブなメンバーが多数集まっています。歴史のある古い会社でありながらも、地元での見え方はすごい変わっていて、デザイン会社とコーヒー会社がミックスされた様な会社として見られています。実際に働いているスタッフも、Wワークをしていたり、プライベートと仕事の境目なく「働く」ことを楽しんでいるメンバーが多い、ちょっと変わった会社ですね。

 

育休中のニュージーランド滞在で COFFEE SUPREME に魅せられる

>そもそもの話、ニュージーランドとの繋がりはどこで生まれたのでしょうか?

 

実は嫁さんの実家がニュージーランドでして。結婚して子どもが生まれるってタイミングで「向こうで産みたい」と話をされて、『あ、それだったら一緒に行きたいな〜』って。

 

>(笑)お仕事は、大丈夫だったんですか?

 

自分自身、極端な部分があって、仕事の時は仕事モード、育児の時は育児モードっていう感じで、「そうするんだ」と自分で決めるとそっちにスイッチが入っちゃうんですよね(笑)
当時コナミに勤めていたんですが、そこで1年半の育休を取って思い切ってニュージーランドに行きました。今思えば、仕事より育児のほうが100倍大変でしたね。。その時に、よく行っていたカフェが、COFFEE SUPREMEだったんです。

 

> なるほど、最初は一人のお客さんだったんですね。

 

そうです。現地で働くスタッフもすごい気さくで面白いし、端から見てててもカッコいい。自分たちの会社を「GOOD COMPANY」って言っちゃう様な会社でして、「こういったカルチャーを持つ会社って日本にあまりないし、これから日本でも浸透すれば良いな」なんて思って、『コレ、日本でやろうよ!』というオファーを3年は言い続けてましたね。

 

> オファーは、本国の代表にしていたんですよね?

 

はい。当時のCEOと仲良い知人がいて、たまたま僕がカフェにいる時にCEOが来たんですよね。そこで紹介をしてもらい、英語も出来ないのに飲みに誘い、「COFFEE SUPREMEを日本でやろう」というオファーを続けていました。

 

> 伺う感じの雰囲気だと「いいね、すぐやろう!」みたいになりそうな会社ですけど、3年もかかった理由は何だったんですか?

 

やっぱり言葉の壁だったり、そのタイミングで違う店舗の立ち上げも同時でやっていたりと色んな問題が重なっていたのですが、やはり国をまたぐことに関しての抵抗感みたいなものは少なからず持っていたと思います、文化が全く違うので。

丁度そのタイミングで、日本にブルーボトルコーヒーが入ってきたタイミングでもあったので、当時の日本のコーヒートレンドなんかもアテンドをしながら、説得を続けてました。

 

「働いている皆んなが幸せそう、それが単純にお客さんに伝わるってすごい」

> よく3年間も我慢出来ましたね。

 

向こうのCEOが「Yes」とも「No」とも言わなかったんですよね。出来ない!とハッキリ言ってくれれば良いものを「やりたい、でも今じゃない」みたいな。だから、「Yes」って言わせるまで、どう口説くか?をひたすらに考えていました(笑)とてつもない数のプレゼン資料(ラブレター)を作りましたね。

 

> そこまでして日本に誘致したかった理由って、何だったんでしょうか?

 

一つは、創立者とCEOの存在は大きかったですね。彼らの人間力と、これだけ面白い会社を一代でつくったことに関して、グッと惹かれた部分はありました。それは働き方だったり、カルチャーだったり、組織の持つユーモアさだったり、、日本にいたら、こういう生き方に気づかなかったなって感じました。後は、働いている皆んなが幸せそうなんですよね。

「(この場所を)もっと良くしよう」っていう社員の想いが、一お客さんに伝わるって単純にすげえなって。

 

> なるほど。

 

だから、海外のコーヒー屋を持ってくるという話よりも、COFFEE SUPREMEがつくってきた「カルチャー」を持ってこれたら良いな、と思ってました。

 

> それまでエンタメ業界にいて、いきなり飲食をやることに対する抵抗は無かったのでしょうか?

 

自分の中では、一貫して同じことをしている認識なんです。

タワーレコードにいた時も、TSUTAYAにいた時も、そしてコナミにいた時も。

「好きな音楽を沢山の人に知って欲しい」「好きな映画を・・」「好きなゲームを・・」といったカタチで、それぞれツールが違うだけで、自分が勧めたいものをどうしたら伝えていけるか?を編集して、見せ方をデザインすることに関しては、実は一貫してやってきたことなんだって、最近感じています。自分が「良い」と思ったものを皆んなに知ってもらえるのが好きなんでしょうね、多分。

 

飲食にいると「業界経験がないとダメ!」みたいな風潮を時々感じますが、逆に僕みたいな経験のない人間も必要だな、とは勝手に思っています。だって、音楽の会社だからといって、働く皆がミュージシャンなわけでもなく、素晴らしいモノを届ける役割の人も絶対に必要でしょ?(笑)

※店舗には、コーヒー以外にもクリエイターとコラボしたグッズや、遊び心のあるオリジナル商品が並ぶ。

 

貯金残高は2万円。施設から貰った大量の冷凍パン〜立ち上げまでの苦労話〜

> 少し話変わりますが、誘致までの3年間で大変だったことはありますか?

 

、、なんか苦労しかなかったですね。まず、嫁の両親からめっちゃ反対されましたね。

「英語も喋れないのに、安定した生活を捨てて、こっちに来るなんて困ります」みたいな。

周りからも相当反対されましたし、1年半も育休を貰っておきながら、戻ってきて「辞めます」といった前職にも、とてつもなく怒られました。

 

>(笑)いや、絶対言われますよね。

 

COFFEE SUPREMEを誘致するまでの期間は、ニュージーランドのものを日本に輸入をする商社みたいなことをやっていたのですが、それだけでは生活が苦しくて、ワーホリで来た日本人に部屋を貸すこともやっていました。嫁も当然働いてましたし。

 

> 本当に出来ることは全部やられていたんですね。

 

ここだけの話、(ニュージーランドに行く前)夫婦で結構な貯金額を持っていったんです。それこそ1,000万円近かったと思います。

 

> 本当に結構な額!!

 

だけど、気がついたら2万円しか残っていなくて(笑)2人で飯食いながら、「これやべーじゃん」って話していました。あの時の絶望感は今でも夢に出てきますね(苦笑)

子供も2~3歳くらいの時だったのですが、ある時、国からチェックが入ったんですね。簡単に言うと、「コイツら、収入低いけど食っていけてんのか?」ってチェックですね。

 

> (笑) お話、続けて下さい。

 

そこから一度、家族で向こうの施設に呼ばれて「とりあえず、死なないように」って、大量の冷凍されたパンを貰いました。車のトランクが一杯になるくらい(笑)

その時は、人生の中で一番底辺まで落ちたんですけど、(あとは上がるだけじゃないか)と自分に言い聞かせていました。それくらいのタイミングで、嫁も新しい仕事が入ったりと、なんとかギリギリ生きていけるくらいまでは安定しました。その時の自分は「COFFEE SUPREMEをやる!」って決めているので、どうしたら日本でやってくれるのか?を考えて口説くのに必死でしたね。

ただそれが、明日OKを出してくれるのか?、それとも1年後なのか?10年後なのか?、霧の中を永遠さまよっている感じで。毎晩寝る前に(明日答えが無かったら、もう諦めようかな・・)と気持ちが折れそうになりながら、自分自身と闘っていましたね。完全に鬱状態でしたよ(笑)

この時期は、ライン工場で働いてたりもしたんですが、あまりにも働きが良くて「社員にならないか?」とスカウトされたんですよ!もし話にのってたら、COFFEE SUPREMEは、日本に無かったですね(笑)
今振り返ればですが、【「やりたい」っていう強い気持ちと諦めない気持ち、そして周囲のサポート】が全てだなと感じています。なので、嫁さんには一生頭あがらないですよ(笑)本当に口説けるのかわからない状況なのに「絶対落とすから!」って言い張って、3年間も信用して耐えてくれたので。

 

今後について

>中長期的な展開についても、お教え下さい。

 

現在は、豆をメルボルンから直輸入しているのですが、結構コストが高いんですよね(苦笑)

焙煎を日本で出来る様になったら、すごい嬉しいですね。後は、今後アジアに展開するといった話も本社と会話をしています。そうなった時には、JAPANがその中心になれれば良いなと思っていますし、アジアを視野に入れるなら日本では福岡に出店してみたいとか、漠然と考えています。これまでポップアップという形態で、名古屋、福岡、熊本、鹿児島には出店したことがあるので、東京だけでなく、地方の人とも繋がっていきたいという想いも持っています。

後は、会社を残し続ける為にも、時代に合わせて変化をしながら、若い人達にもチャンスを与えられような土台を作っていきたいですね。

 

> 最後に、COFFEE SUPREME JAPANを通じて、実現したい世界観などもあれば教えて下さい。

 

「コーヒー」って、一人でも、マジメな会議でも、友達といる時間でも、どんなシーンにも合うものだと思うんです。そんなコーヒー自体が持つ”味以外”の可能性は、まだまだあると感じてますし、周りが”味”ばかりにフォーカスしているからこそ、僕らはそれ以外の可能性に対して、正面からいくのではなく、違ったカルチャーとかけ合わせてみたりしながら、見せ方の編集とデザインを模索していきたいと思っています。

COFFEE SUPREMEの主力商品って、実はコーヒーではなく、「コーヒーがもたらしてくれるヒトとの繋がり」なのかもしれません。

COFFEE SUPREMEがあることで、誰かが少しでもハッピーになってくれれば嬉しいし、コーヒーをツールにして、色んな人が繋がれる場所っていうのを、もっともっと強めていきたいですね。

 

編集後記

いつか映画やテレビの中で見ていた「馴染みの店」は、働いているスタッフが格好良くて、そこにいるお客さんも画になっていて、”いらっしゃいませ・ありがとうございました” の仰々しい関係を超えた感じにとても憧れを持っていました。取材中、楽しそうに働くスタッフとのフランクな会話や、各々が自由な会話をしながらも、その姿がサマになるお客さんを見て、いつか見ていた馴染みの店を思い出しました。是非、皆さんもCOFFEE SUPREMEに足を運んでみて下さい!

 

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