起業したばかりの段階では、「事業主=事業そのもの」です。事業主が病気や怪我で働けなくなったら途端に事業は機能停止し、起業家は収入の糧を失ってしまいます。
そこで、起業家は病気や怪我に備え、できる限りのリスクヘッジをしておきたいものです。
今回は、事業を始めたばかりの起業家でも対応できる病気や怪我に対するリスクヘッジの方法をいくつかご紹介したいと思います。
労災保険の特別加入
1人でも従業員を雇用したら、会社であるか個人事業主であるかにかかわらず労災保険に加入する義務があります。
労災保険は労働者のための保険で、事業主は加入できないと思っている人が多いのですが、実は、企業規模が一定以下(表1参照)であれば、「中小事業主の特別加入」という方法で、事業主も一緒に労災保険に加入することができます。
(表1)中小事業主の特別加入ができる企業規模
業種 |
使用する労働者数 |
金融業 |
50人以下 |
卸売業 |
100人以下 |
上記以外 |
300人以下 |
「中小事業主の特別加入」をするためには、労働保険事務組合という中間団体を経由しなければならないのですが、特別加入をすることができれば、事業主が仕事中や通勤中に怪我をしたり病気になったりした場合、原則として一般の労働者と同じ基準で労災保険からの給付を受けることができます。
たとえば、事業主が入院をして労務不能となった場合、あらかじめ役員報酬等に基づいて決定された等級に基づいて、休業補償給付が支給されます。
社会保険(健康保険)への加入
事業規模が小さいうちはコスト的な負担を下げるため、社会保険の加入を先送りにしたいと考える起業家も少なくないと思いますが、リスクヘッジという観点からは、社会保険に加入しておくことは有用です。
社会保険は厚生年金と健康保険から構成されますが、健康保険には「傷病手当金」という制度があります。
傷病手当金は、業務外(プライベート)の病気や怪我で労務不能になった場合、最長で1年半、元の給与の約3分の2を国が所得補償する制度です。経営者や役員であっても、休んでいる期間役員報酬がカットされるのであれば、この傷病手当金の制度を利用することができます。
なお、社会保険に加入しない場合は国民健康保険に加入することになりますが、国民健康保険には傷病手当金の制度はありません。
民間の所得補償保険への加入
労災保険の休業補償給付も、健康保険の傷病手当金も、元の役員報酬の100%が補償されるわけではありません。
万が一の場合であっても、通常勤務をしている場合の役員報酬と同等の収入を確保したいということであれば、その差額を埋めるのは民間の所得補償保険となります。
多くの保険会社から所得補償保険は発売されていますので、自分に合ったものを選べば良いと思うのですが、どのような条件を満たしたときに所得補償が行われるのかは、保険商品によっても差がありますので、その点をとくに気を付けるようにして下さい。
まとめ
起業家は体が資本ですので、病気や怪我をしないことが一番です。しかし、万が一のリスクに備えるということも起業家にとって大切なことですので、しっかりとした備えをして、万が一のときに生活が破たんしたり、不本意ながら事業を廃止するということがないようにしたいものです。