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「子どもが生まれて、未来のための良い仕事をしたいと思った」内食のインフラを目指す(株)シェアダイン飯田陽狩氏【起業インタビュー73回目】

公開日:2018.07.23

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「起業をしたい!」なんて思っていなくても、そのきっかけは突然来るのかもしれない。それは、誰も思いついていないアイデアを見つけてしまった時であったり、自分自身が課題の当事者であったり、理由は様々なのだろう。今回、取材をした飯田陽狩氏は正に後者に当たる女性起業家。「出産をしたことで価値観が変わった」と話す同氏は、これから新しい家庭料理の継承に取り組んでいる。そんな(株)シェアダインについて、お話を伺いました。

 

プロフィール(株式会社シェアダイン 代表取締役社長 飯田陽狩氏)

証券会社を経て、2011年より約6年間ボストンコンサルティングにて、シニアアナリストとして国内外金融機関のデジタリゼーションを主軸に戦略立案に携わる。2017年5月に株式会社シェアダインを設立、同代表取締役に就任。

 

株式会社シェアダインについて

>(株)シェアダインについて、お教え下さい。

 

はい。子育て世代向けの出張料理サービス「シェアダイン」を運営しています。

シェアダインは、栄養士や調理師資格を持つ登録料理家が、家庭に出張をして、食の悩みやニーズに合わせた献立を提案し、買い出しから調理までをワンストップで提供するサービスです。現在は首都圏を中心にサービス展開しており、料理家は1回の出張調理で12食分(約3日分)の調理を行います。

> ユーザー属性としては、やはり子育て世代に限定しているのでしょうか?

 

限定しているわけではないですが、実際その世代が中心となっています。

ただ、お子さんの年齢はバラバラで、未就学児(6歳未満)の子どもを持つ家庭で幅広く利用頂いています。子育て世代のパパ(男性)が申し込んでくれるケースなども実は多くて、そこは私たちも想定外な事例でした。

後は、まだ出産はしていないけど、妊娠中の方や妊娠を考えて食事を意識し出した”プレママ”に当たる世代の方にも多く利用を頂いています。

 

> サービスをローンチしてからのリピート率などは、どうですか?

 

まだローンチして2ヶ月のサービスなので、母数自体は多くないデータですが、新規ユーザーの8割がサービスをリピートして頂いており、サービス利用頻度の平均は【2.1回 / 1ヶ月】です。現時点では、リピートの施策など何も打てていないのが現状なのですが、これを母数が数千・数万というユーザー単位でも維持できる様にしていきたいと思っています。

 

> 施策を打っていない状況の中では、とても高い数字ですね!サービスのビジネスモデルについても伺えますでしょうか。

 

現在は、マッチングした際に発生する依頼金額から手数料を頂いています。(2018年7月時点、一律15%)

 

> ちなみにユーザーは、料理家さんと一緒に料理をするのでしょうか?

 

いえ、そこは「3時間を自由に使って下さい」という風にしているので、一緒に料理を作って学んでいるケースもあれば、その時間で子守りをしているケースなど、それぞれです。

ただ料理家さんは、ユーザーの食の悩みを事前にヒアリングしてから献立を考えるので、家庭でも再現性の高いレシピや、作り置きに簡単なメニューなどを提供してくれますので、ただ見ているだけでも、学びや気づきのある時間がユーザーさんには提供出来ると思っています。私自身も一ユーザーとして利用していますが、料理家さんが提案してくれるメニューは、共働きの私でも負担がなく日々の食卓に取り込めるレシピが多くて、とても助かっています!

 

> 一ユーザーとして利用してみて、ご自身の家庭で変化したことなどありますか?

 

私の子どもは、生まれてからずっと平均体重を下回るくらい華奢(きゃしゃ)な身体つきで、肉も魚もあまり食べない子だったのですが、料理家さんに教わった味つけや調理方法を学びながら、毎日の食卓で肉・魚をバランスよく出せる様になってからは、男の子らしいズシッとした体型になって、「お魚大好き!」と本人から言ってくれる様にもなったんです。子どもの食で悩んでいた私としては、とても嬉しい体験でした!こういった体験をもっと色んな悩みを抱えている家庭に伝えたいって思っています。

 

「子どもが生まれてから、未来のための良い仕事をしたいと思った」飯田氏の起業のきっかけに迫る

>シェアダインは、どのようにして生まれたサービスなのでしょうか?

 

私自身が子育てを経験したことで生まれた”悩み”がサービスの起源になっています。

前職(コンサルティング会社)にいた際に、初めて出産を経験して、産休・育休を経て5ヶ月ほどで職場復帰をしたのですが、共働きで子どもを育てていると日々の「食卓」が一番犠牲になるんです。子どもの食事に関しても、離乳食から始まり、つい最近までは肉や魚を食べないなど、色んな悩みを抱えていました。母親の立場になった私は、それ自体にずっと罪悪感や悩みを抱えながら、共同創業者であり先輩ママでもあった井出に相談をしていたんです。そしたら井出は、「うちなんて、もっとヒドいよ」って(笑)

そこで、自分の家庭で起こっていたことが実は違った悩みではあるけれど、他の家庭でも起こっていることに気がつきました。(コレって子育て世帯を取り巻くマクロな環境が大きく変わっている中で、日本全国で起こっていることなんじゃないかな?)と思ったのがシェアダインの構想を考え始めたきっかけです。

今、「共働きが当たり前」という、一世代前とは違った家庭のスタンダードが出来ている中で、少し前までは当たり前の光景であった『両親と台所に立つ』という経験も失われつつあります。このままいけば、ちょっとした食の悩みに関する学びの機会もそうですし、家庭料理継承の機会も無くなってきてしまうのでは?と、その時に強く感じたんです。

それを何か新しい機会で創っていこうと生まれたのがシェアダインです。

 

> なるほど。元々起業を前提に、これまでのキャリアは考えていたのでしょうか?

 

いえ、起業をするなんて全く考えていませんでした。

最初、井出に相談をしていた時も「事業にしたい」というよりは、本当に情報交換程度な感覚でした。仮に独立をするにしても、フリーランスで業務委託でもやりながら・・と割とゆったりな感じのイメージをしていました。

 

> そこから、どう起業に至ったのでしょうか?

 

青山スタートアップアクセラレーションセンター(以下、ASAC)に、シェアダインの事業が採択されたのをきっかけに起業に踏み切りました。シェアダインの構想を、既に起業をしていた知り合いに相談をしたら、「ASACに応募してみたら?」というアドバイスを貰い、事業計画を立てて応募してみたところ採択を頂きまして。そこから(会社を立ち上げなきゃ!)ということで、採択後3週間以内には会社を立ち上げて、2017年の3月で前職を退職し、5月にはASACの採択企業としてスタートアップになる、という展開でした。スピード感を持って起業が出来たのは、正直ASACのおかげだと思っています(笑)

> すごいスピード感ですね(笑)起業したいと考えてもいない中で、起業に踏み切れた背景には、どんな想いがあったんですか?

 

会社(前職)の仕事は楽しくて、やり甲斐も持っていて、もう一度社会人やるなら絶対戻りたい!と思えるくらいに好きな仕事だったのですが、子どもが生まれてから自分の価値観がガラッと変わって「未来のための良い仕事をしたいな」って思える様になったんです。

当時は、仕事との関連性も高かったFintech業界などにも注目はしていましたが、『もっと自分の身近にある課題を解決するために、今の自分が出来ることはないかな』という想いが根底にはありました。

これからのシェアダイン

> 最後に、中長期的な事業展開についてお教え下さい。

 

中期的には、子育て世代をフックに、他の世代にもちゃんとアプローチをしたいと考えています。食卓の悩みを持っているのは、決して子育てをしているママだけではないと思っていますし、実際に「このサービスを両親(祖父・祖母)に使いたい」と言ってくれるユーザーさんの声もあったりなど、全ての世代の食卓の悩みに応えられる様な「内食のインフラ」をシェアダインは目指しています。

元々、食卓の悩みを起点に、その家庭にあった家庭料理を提案し、それを次世代に継承するという想いで始めたサービスではあったので、直接ユーザーに届けられるC2Cという形態を選び、リアルな家庭に入るというスタートアップでの闘い方を選択しましたが、もしかしたら、それは直接行かなくても解決出来るかもしれないとも最近は思っています。それは、お悩み相談であったり、メディアという形かもしれないし、長期的には、そういった新しいカタチでのCGM(※)もつくっていきたいですね。

 

※コンシューマージェネレイテッドメディアの略。掲示板やクチコミサイトなど、一般ユーザーが参加してコンテンツができていくメディアを指す。

 

後はサービスを開始してから気づいたことですが、リアルな家庭の台所に入っていける私たちの強みが、実は企業のマーケティングデータにも活用できるといった事例が幾つか出てきました。

例えば、今の子育て世代の台所には、サラダ油って殆ど無いんです。にも関わらず、スーパーの売り場で展開されている油の棚で一番大きい面積を占めているのは、サラダ油のコーナーといった、企業が想定をして展開していることと、現実の家庭には”ギャップ”が発生しているんです。これから「日本で一番家庭の台所と食卓の事情に詳しい会社」を目指しながら、今の食卓において消費者が求めているニーズと、関連企業が展開している商品やサービスとのギャップを埋めていく役割も今後担っていけたらと思っています。

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