小さな会社では、社員1人1人の力がダイレクトに業績に反映されますので、採用は非常に重要なテーマの1つです。
期待を込めて採用した人材が、期待とは全く違っていた場合には、大きな経営リスクになってしまいます。
そこで、本稿では小さな会社でも活用できる、採用ミスマッチのリスクを避けるための方法を3つご紹介いたします。
まずは有期契約からスタート
第1は、有期契約で採用するということです。
「採用することが決まったので、いつから来れますか?」と、雇用契約のスタートの時期を決めることは通常どの会社でも行われますが、小さな会社では、雇用契約の満了日は決めずに、何となく勤務開始してしまうことも珍しくありません。
採用時に雇用契約の満了日を決めなかった場合は、法的には「期間の定めのない雇用契約」すなわち無期契約を結んだことになってしまいます。
無期契約が成立すると、会社の判断で辞めてもらうには「解雇」しか方法が無いということになってしまいますが、我が国においては解雇でトラブルになった場合、会社側が敗訴するリスクが非常に高いです。
逆に、働く人の側にとっても「何となく思っていた社風と違うな」と感じても、無期契約であるがゆえ、退職を切り出せず、引くに引けなくなってしまうというリスクがあります。
ですから、まずは3ヶ月とか6ヶ月といった有期契約からスタートするようにすれば、お互いの相性や期待感に問題が無ければ、有期契約の満了後に改めて無期契約を結ぶようにし、お互いに「これは違うな」ということであれば、契約を更新せず雇用関係を円満に終了させるというオプションを労使それぞれが持つことができるのです。
なお、「試用期間」という制度もありますが、「2ヶ月の試用期間」というのは2ヶ月の有期契約ではありませんし、2ヶ月間は自由に解雇して良いということでは決してありませんので誤解しないように気を付けて下さい。
基本給一本にせず「調整弁」を持つ
第2は「特別手当」で調整弁を持つことです。
たとえば、本人が「経理実務経験豊富」と言っていたので、基本給50万円で雇用して経理部門全般を任せることにしたというケースを想定しましょう。
期待通り経理実務をバリバリ回してくれたら問題ありません。
ですが、実際に任せてみたら、前評判とは全く違って力不足だったということが生じると、中小企業にとっては大きなダメージです。
期待に添わなかったからといって、基本給を下げることは法的に容易ではありません。
そこで、このようなケースへの対応策としては、基本給一本で50万円を支払うのではなく、「基本給30万円+特別手当20万円とする。特別手当は、経理部門を回すことができなかった場合は1年後にカットされ、経理部門を回す力があることが確認できた場合は1年後に基本給に組み込まれることとする。」というように、カットされる条件を明確にした上で、基本給とは別枠で特別手当(別名称でも可)として支給することです。
このような形にすれば、あらかじめ契約時に定められていた条件に沿って手当を外したというだけですので、採用者の能力が期待を大きく外れていた場合のリスクヘッジが可能となります。
実技試験を行ってみる
第3は採用候補者に実技試験を課してみることです。
採用面接は、なにも書類審査と面接だけに限られません。実技試験を課すことも法的には全く問題ありません。
たとえば、給与計算が得意ということであれば例題を与えて模擬給与計算をやってもらうとか、パソコンが得意ということであればエクセルでマクロを組むような課題を与えてみるとか、実践的な課題を通じて実務能力を測ることができます。
実務能力を見た上での採否判断であれば、期待値のミスマッチはかなりの確率で回避することが可能なはずです。
分からないことが出てきた場合どのように対応しようとするかを観察したり、あえて難問を入れてみたりすることで、臨機応変さや判断力・対応力なども確認することができるでしょう。
まとめ
採用のミスマッチは、会社だけでなく働く人にとっても不幸なことです。
高すぎる給与で雇用されてしまったために、会社から本人の能力を超えたプレッシャーを与え続けられ、メンタルが病んでしまったというケースも耳にしたことがあります。
その会社の社風にあった人を、労使お互いが無理しない適正かつ合理的な賃金で雇用できるよう、採用のミスマッチは無くしていきたいものですね。