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【イベントレポート】起業の科学~スタートアップを成功に導く10の極意~

公開日:2018.04.25

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2017年の発売後、3部門(経営、起業、イノベーション)で7週連続ベストセラー1位になった書籍 “起業の科学 スタートアップサイエンス“の著者である田所雅之氏がスタートアップの成長ステージごとに、起業家がどのタイミングで何に取り組めばよいか?自身の起業経験も踏まえて講演した「起業の科学 ~スタートアップを成功に導く10の極意~」に参加してきました。

会場はこの4月でオープン1周年を迎えるDIAGONAL RUN TOKYO。

1部では、田所氏がスタートアップを成功に導くポイントを7つの項目で紹介。2部では、現在もスタートアップと向き合い続けている田所氏とFFGベンチャービジネスパートナーズの山口氏が1部の内容を更に深掘りしたクロストークを展開した。

今回は、その中から2部の内容を書きおこして紹介します。

 

登壇者紹介

田所雅之氏(スピーカー)

ベーシックCSO ユニコーンファーム CEO。
日本と米国シリコンバレーで合計5社を起業してきたシリアルアントレプレナー。米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルF のベンチャーパートナーを務め、国内外のスタートアップの投資を担当(これまで1500社以上の世界中のスタートアップを評価してきた)。
現在は、国内外のスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、日本最大級のウェブマーケティング会社 BasicのChief Strategic Officerを務めながら、事業創造会社のブルーマリンパートナーズのChief Strategic Officerも務める。2017年にスタートアップ支援会社であるUnicorn Farm を立ち上げた。

 

山口泰久氏(パネラー)

1986年九州大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。2006年行内ベンチャーとしてVCを設立し、本邦初の知財ファンドの運用開始。DBJキャピタル(株)取締役等を歴任し、2017年5月より、株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ・マネジングディレクターに就任。2018年4月より同社取締役副社長に就任。九州・大学発ベンチャー振興会議と連携するFFGベンチャーファンド(総額50億円)の運用を担当し、大学発ベンチャーの育成を行っている。

 

上條由紀子氏(モデレーター)

特許業務法人 太陽国際特許事務所 弁理士

慶応義塾大学大学院理工学研究科前期博士課程修了、2000年弁理士登録。同年、太陽国際特許事務所入所。東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構専任講師、金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科 准教授を歴任、現在に至る。

 

会場の紹介〜DIAGONAL RUN TOKYOとは?〜

DIAGONAL RUN TOKYOは、2017年4月に東京駅・八重洲口にオープンしたばかりのコワーキングスペース。イベントスペースやバーカウンターを完備し、「移住」「働き方」「起業」の3つのワードを切り口に、地方と東京、大企業とスタートアップをつなぐハブとして誕生しました。九州を中心に様々な地域とのつながりを作り出し、二拠点居住やリモートワークなど、これからの「働き方」「暮らし方」をテーマにしたイベントを積極的に開催しているコワーキングスペースです。

 

【第2部】トークセッション(田所雅之氏 × 山口泰久氏)〜書き起こし〜

イベント1部では田所氏がスタートアップを成功に導くポイントを、国内や海外企業の事例も踏まえながら、下記7つの項目にまとめて講演した。

①破壊的イノベーションを理解し活用する
②良い新規事業のアイデアを理解する
③現状分析ではなく、徹底的にユーザーを観察して、ユーザーのあるべき課題を見つける

④高速で市場に投入して、顧客からフィードバックを得る
⑤最初は小さな市場を支配せよ
⑥Date is King 顧客データを定量的に取る
⑦時代の変化を理解する
イベント2部は、1部で話した内容をもとに参加者から質問を募り、田所氏・山口氏の観点より、それぞれ回答しながら、議論を深めていくクロストーク形式。モデレーターは、太陽国際特許事務所弁理士であり、自ら様々なスタートアップの支援に携わる上條由紀子氏がつとめた。

 

>良い新規事業のアイデアを理解するには?

 

上條氏:まず、皆さんからの質問でダントツに多かった項目から聞いてみたいと思います。「良いアイデアかどうかをどのように確かめたら良いか?」「アイデアの良否を判断するのに最適な人は誰なのか?」といった質問を頂いてますが、いかがでしょうか?

 

田所氏:良いアイデアかどうかの判断基準として大事なことは「仮説構築をする」ことです。具体的には「誰の・何を・どのように(解決する)」といった項目で仮説を検証しますが、この中で一番大事な項目は「誰の」です。サービスには、当然ユーザーがいると思うのですが、「彼らが普段どういう事を考えて・何を聴いて、彼らにとって何が希望で、何が痛み(課題)なのか?」について仮説を立てることが、とても重要になってきます。

 

そもそも、なぜ仮説構築をすることが大事かと言うと、仮説を立てない状態は「無知の無知」という状態なんですね。この状態で何か物事を進めても無駄になってしまいます。一方、仮説を立てた状態で臨むと「無知の知」の状態になります。つまり、「自分が何を分かっていない状態なのか分かること」がポイントだと思っています。

(中略)

意外と抜けがちな話として、今の時代ユーザーの痛み(課題)を解決する代替案っていうのは結構あるんですね。私自身、スタートアップからサービスの相談を貰う際には「これ(ユーザーの痛み)を解決する代替案を3つ上げてください。それと比べて、あなたのサービスは何が優れているんですか?」といった質問を必ず聞きます。この質問に意外と答えられない方も多いです。

しかしながら出てきた代替案を検証をしきれば、不便や不満といった項目は必ず出てきます。これを「不全性」と言いますが、その不全性を洗い出すのも良い新規事業アイデアを理解するポイントかな、と思っています。それから何をすべきかと言うと、「1次情報を集める」ことですね。

 

上條氏:「1次情報のヒアリングスキルについては、誰に・どういう風にヒアリング・インタビューすれば良いですか?」といった質問も頂いてますが、そちらについていかがでしょうか?

田所氏:この話は、書籍の第二章にも書いてありますが「思い込みを排除すること」が大事だと思います。ユーザーの弟子入りをする、という表現が僕は好きでよく使うのですが、要は「弟子に入って教えを請う」ということですよね。そうしたユーザーとの接点を持つ中で「それは、なぜそうなっているですか?」等のオープンクエスチョンを繰り返していくと、「システムそのものが××だから」「この業界には独占企業がいるから仕方ない」とか、結構色んなネタが出てきます。

ヒアリングの対象である「誰に」については、アーリアダプターやエバンジェリストカスタマーと呼ばれる様な、課題に直面している当事者や課題に対して情報感度の高い人たちに話を聞くのが良いと思います。そういった方というのは、少し聞いただけでもドバドバッと情報が出てきます。

今だとFacebookやTwitterなどのツールを使えば簡単に繋がれますし、個人的にオススメしているのがビザスク(※)ですね。僕自身、ビザスクの国内トップ5ユーザーを自負していますが、先日ビザスクの社長に依頼されて、ビザスクのチャンピオンユーザーとして講演もしてきました。このサービスはすごい良いですよ!

 

※業界業務の経験豊富な「その道のプロ」に、1時間からピンポイントに相談できる日本最大のスポットコンサルサービス。業界調査やユーザーインタビュー、新規事業や海外進出の情報収集、起業のアドバイスに、経験者の知見を活用出来る。

 

山口氏:ビザスクにはDBJキャピタル時代に投資していますが、民間企業の現役の人たちに時間単位で話が聞けるこのサービスは「1次情報を集める」という観点では、僕も有益なサービスだと思います。

 

田所氏:今、フィンテック企業のアドバイザーをしながら業界の情報を集めていますが、例えば金融業界の業務プロセスを知ろうとした時には、絶対に正面突破では聞けません。こういったサービスを活用しながら中の話を聞いて、「実はここだけの話ね・・」なんて”闇”の話もいっぱいしてくれますね。その業界の”闇”を知るっていうのも、実は大事なポイントだったりします。

 

上條氏:なるほど!きれいごとで起業は出来ないってことですね。しっかり”闇”にもアクセスしてこそ、本当に良い事業アイデアが見つかるのですね。

 

> 最初は小さな市場を支配せよ

 

上條氏:「小さな市場」とは、どれくらいの規模感のことを指すのでしょうか?

 

田所氏:最終的には大きな潜在市場を狙うのが大事なのですが、初期の段階は実験だと思うので、極力市場に関わる「変数」を絞って良いと思います。つまり、5W1Hの内、Where(場所)や、Who(誰)がそれ(変数)に当りますが、意外と重要なのがWhen(いつ)ですね。例えば、AirbnbのMVP(Minimum Viable Product)は、ニューヨークでスタートしたと思われがちですが、実は2008年にオバマ大統領の選挙戦が盛り上がった時期のデンバーがスタートでした。当時、8万人収容できるスタジアムでの演説に対して、デンバーの客室は3,000室しかないという状況であり、創業者であるブライアン・チェスキー氏が「もしこの時期にAirbnbがあったら使いますか?」ということをやったんですね。これは何をしたかと言うと、5W1Hの内、When(いつ)、いわゆる「伏し目需要」を切り取って始めたことになります。この反響・検証結果をもとに、彼らはY Combinatorからの出資を受ける形となりました。「そこに課題があるか?そして、その課題が深いか?」について理解した上で、5W1Hの変数を絞った検証を行うのが「小さな市場」におけるポイントかなと思います。

 

>山口氏から田所氏への質問

山口氏:田所さんに質問なんですけど、ベンチャーキャピタル(以下、VC)には、よく「売上のない会社」が相談に来るんですよ。ただ、データを見せてもらえば月間のアクティブユーザーはグワッと伸びている。要は、まだマネタイズはしてません!ってことなのですが、そういった会社はどの指標を見るべきですか?

 

田所氏:この指標を抑えればLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)上がりますよ!という因数分解の仕方が出来るているか?だと思います。僕も昔そうだったんですが、残念ながら1番最初にやる人って言うのは不安なんで「Facebookファンが沢山います」とか「Wantedlyランキングが上がっています」とか訳の分からないことを沢山言うんですね。

 

上條氏:そうなんですね(笑)

 

田所氏:不安が故に、自分たちの売り上げに直結しないところも見てしまっているんです。大事なのは、この指標を伸ばせば売上が伸びる!という勝ち筋の指標を押さえられているか?だと思います。

 

山口氏:表面的な顧客の伸びではなくて、もっとセグメンテーションをした指標を押さえているか、という事ですね。ちょっと今度から深く聞いてみます。

 

一同:(笑)

 

> 起業家の資質とは?

 

上條氏:お話頂いた7つのポイントに関係なく、多数頂いている質問なのですが、「どういう方が起業家に合っているか?」「起業家としての資質を知りたい」という質問がありますが、いかがでしょうか?

 

田所氏:最も起業家に適する資質は、自分自身が一番の顧客である点と、その課題に至った背景を話す事が出来、誰よりも分析し検証してきたことを語れるストーリーテラーである点です。僕はこれを「ファウンダーイシューフィット」と呼んでいるのですが、ファウンダー(創業者)とイシュー(解決課題)がフィットしてるかどうか、ということです。スタートアップって基本的に辛いんですよ、ただ、辛い中でも「自分自身がこの課題を解決するために生まれてきた」と、本当にそこまで言えるかどうかですね。一方、「課題を見つけて深掘りをしていたら更に秘密を見つけた」「世界で自分しかそれを知らない」という状況をつくれた時は、使命感を持つという点かなと思います。その時は、それを持って自分自身がファーストユーザーになれるかな、と。

 

上條氏:自身の持っている熱意や使命感と表裏一体ということですね。山口さんは、いかがですか?

 

山口氏:VCから見ますと、とりあえず「楽天的な人」ですかね。ほとんど失敗していくので、相当ハートが強かったり、タフなメンタルが求められると思います。後は、途中で事業ピボットなどしていかなければいけないタイミングが出てくるので、その点における「柔軟性」ですね。

 

田所氏:そういう意味では「頑固さ」も必要ですね。ビジョンやイシューに対して頑固にいけるかどうか。

 

山口氏:あと、ビジョンの大きい起業家に共通していることは、色んな場所を結構訪れていますね。上場している企業の経営者って、アメリカに行っていたり、南米に行っていたりするので、視野が広いんですね。場合によっては宇宙を目指していたりなど、とんでもなく視野が広いといいますか、そういう人が成長していく感覚をVC的には持っていますね。

 

上條氏:芯がしっかりありながらも、柔軟性を持ち、視野の広い人、ということですね。ありがとうございます!

 

>イベント終了に際して(クロストーク締めの挨拶)

 

上條氏:クロストークの締めには、お2人にそれぞれコメントを頂戴出来ればと思っています。まずは、山口さんからどうぞ。

 

山口氏:僕は昔、田所さんのメンターをやっていたんです。今日は隣で話を聞いていて「(自分が)メンターを受けた方が良いな」と感じました(笑)やはりアントレプレナーというのは、実践を通じて常に進化するのだなと改めて実感しました。

 

田所氏:僕がなぜこの本を書いたかというと、今のスタートアップにおける現状が悔しいんですよね。日本には起業家が、まだまだ少な過ぎると思っています。ユニコーンと呼ばれる時価総額10億ドル以上の企業も国内には2社しかない、ただ本来日本の持つポテンシャルで言えば、この10倍は増えると思っていますし、もっと大企業でくすぶっている優秀な方々にスタートアップ側へきて頂きたいな、という想いで書きました。そういった意味では、書籍を買って頂いた方には2,000ページ以上のスライドもお渡ししています。そして書籍やスライドを読んで頂く方々には、起業に対する「恐れ」を出来るだけ減らしてもらい、スタートアップや新規事業を始めて頂きたいなと思っています。

 

上條氏:今日はありがとうございました!

 

会場フォトレポート

※トークイベントの終わりには参加者からのライトニングピッチもあった。ピッチ参加者は、Venture Café Tokyo漆原琢雄氏、スタートアップファイアー・株式会社シリコンバレーベンチャーズ株式会社モリワカの森若幸次郎氏の2名。

 

※会場であるDIAGONAL RUN TOKYOから拠点長の岩田氏が冒頭に施設の概要を説明

 

※イベント後の交流会の様子

 

撮影:黒崎健一

主催:知財マネジメント研究会(Smips)知財キャリア分科会、株式会社FFGベンチャービジネスパートナーズ
後援:研究・イノベーション学会
ケータリング提供:株式会社SEE THE SUN

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