これからのやりたいは会社員以上・起業未満。レシピバトン高木健太氏【起業インタビュー第63回】|起業サプリジャーナル

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これからのやりたいは会社員以上・起業未満。レシピバトン高木健太氏【起業インタビュー第63回】

公開日:2018.02.27

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「お金になるのではなく、名刺になる仕事をしよう」この何とも言えない、草食系な言葉が取材後の耳に残る。企画発起人である高木氏の、この言葉で始まったレシピバトン。メンバー4人、皆それぞれが別の仕事を持ち、それぞれを維持しながら自分たちが継続出来るペースで続けていきたいと意気込む。起業という枠を大きな定義で捉え過ぎて、なかなか一歩踏み出せない人にこそ読んで頂きたい、レシピバトンの取り組みとこれからの起業について伺いました。

プロフィール(高木健太氏)

1979年、東京都出身。
日本大学芸術学部卒業後、デザイン事務所、飲食業、調理器具メーカー等を転々とし、現職・広告代理店へ。2015年、東北食べる通信高橋編集長のトークイベントで熱い話に触れ「食べる通信」という発明と、その背景にあるビジョンに衝撃を受け、価値観が一気に変わる。その後、一次産業生産者さんの話をたくさん聞くうち当事者としての生き方への憧れが強まり、「小さくても旗を立てよ」の編集長の言葉に背を押され、2枚目の名刺を刷る。代理でなく当事者として、自身の想いを直接世に問いたいと、2016年6月「レシピバトン」を立ち上げる。

 

誰もが持っている思い出の味(家庭の味)をつなぐ「レシピバトン」について

>レシピバトンの活動ついて教えて下さい。

レシピバトンは「うちの味」を映像とレシピでつなぐサービスです。

レシピ元(お婆ちゃん・お母さん)と、レシピを受ける側(娘、息子・孫)が一緒に台所に立って料理をしている姿をメンバーが撮影。完成した映像と冊子がセットになって、後日届けられるサービスになっています。

 

>現在のメンバー構成を教えて下さい。

私を合わせて、4名のメンバーがいます。デザインを担当している高砂、映像を担当している一條、音楽を担当している渡辺、そして企画の私。現在はメンバー全員が別の仕事を持ち、それぞれの得意分野で参加をしています。

 

「お金になるのではなく、名刺になる仕事をしよう」

>どんなきっかけでスタートしたのでしょうか?

実はコレ、最初は自分の嫁の誕生日にプレゼントをしようと思って考えていた企画なんです。

当時、仕事の忙しい時期が続き、毎日深夜にタクシーで帰宅なんて時期が続いた時に「人を喜ばせる仕事がしたくて広告の仕事をしているのに、1番身近な人を喜ばせられてない」なんて葛藤から、当時は嫁にあげたいものも特に無かったので、企画として持っていたレシピバトンの構想を形にする時だ!という衝動で、映像担当の一條とデザイン担当の高砂に声をかけてレシピバトンの原型を始めたのがきっかけでしたね。

最初は音楽に某アーティストの音源を使用していたので、世に出すには流石にマズかったので、その後音楽の作れる渡辺が参加してくれました。

 

>企画・デザイン・映像・音楽、、バランスよく集まっているメンバーはどうやって集めたのでしょうか?

デザインの高砂は、結婚式の余興仲間。映像の一條は、高校の同級生。音楽の渡辺は、一條のバイト仲間と、自分たちの近い知り合いがほとんどです。

メンバーには最初「名刺になる仕事をしよう」という風に伝えたんですね。いきなりお金には絶対ならないけど、レシピバトンの〇〇です、と言った時に、次の仕事に繋がったり、活動に参画していることが自体が個人のブランディングになったり、そんなメンバーそれぞれの価値と技術が高められる様な活動としてレシピバトンをやろうと伝えました。

いきなりお金になったりはしないよ、というのを暗に伝えたという意図もありましたが(笑)

 

レシピは手段、レシピバトンがつくりたい家族の風景

>奥さんのプレゼントをきっかけに始まったレシピバトンですが、今はどんな想いで続けているのでしょうか?

レシピバトンは、家族の思い出のレシピを残すことが目的ではなく、これをつくる事で親と子どもが一緒にキッチンに立ってもらう。そのきっかけになればと思ってやっています。

スタート当初、完成した冊子と映像を友人に見せた時、「もっと早く知っていれば」っていう声を何人かに貰いました。僕の嫁も、母親の春巻きがうまい!とは教えてくれるけど、いつも食べているだけじゃソレ再現出来なくない?って思ったんですよね。

僕らの世代をはじめ、これから両親の高齢化や介護などの問題に直面していくだろうタイミングで、こういった事をやる経験・・もっとエモーショナルな言葉で言うと「思い出」みたいなものがすごく大事になっていくんじゃないかな、と。一方で、既にそういった問題に直面している人の話を聞くと、大体皆んな後悔しているんですよね。(もっと旅行に連れてってやれば良かった・・)とか。そう思った時に、やっぱり食事って一番家族との距離が近いし、思い出として深い。キッチンに立って、レシピを元にメニューを作れば、その人に会える。過去の思い出に触れながら、(レシピバトンを通じた)これからの思い出を作っていって欲しいと思ってます。

>これからはどんな展開を考えているのでしょうか?

レシピバトンのロゴには「#RecipeBaton」と入れているのですが、イクメンって言葉が生まれて、男も育児をする時代なんだっていう風潮が出来た様に、いつか「レシピバトンした?」という様な当たり前の会話が生まれる「概念」として社会に根付いたら嬉しいなと思っています。僕らが映像を撮らなくても良いから、#レシピバトンのタグに触れた人が似た様なアクションを起こすとか、そういった事が起きてくれれば良いなぁ、と願いを込めて「#」を付けています。

 

>すごく素敵な企画なので、広がりも無限大な気がするのですが拡大は考えてないんですか?

これに関しては続けていくことに意味がある気がして、現在の制作本数も月1本程度と決して多くはないのですが、出来る範囲でこれからも続けていけたら良いと思っています。なぜなら、やっていて楽しいんですよコレ。

なので究極を言うと、レシピバトンの活動を無料で出来る状態になりたいね!って言うのは皆んなで話しています。大手企業からの出資とか、国がレシピバトン制度保証を実施とか。

 

>一同:(笑)

冗談半分ですが。まずはちゃんと4人で顔を出して、やっていける範囲でやっていこうぜ、と。やっぱり本当に喜んでもらえる瞬間に立ち会えるのが嬉しいし、僕自身が東京生まれ・東京育ちという面もあって、郷土の味があったりすること自体が羨ましいんだろうなって思います。それでも活動を通じて、そういった地域の食に触れて田舎が増える感覚をもったり、とにかくやっていて楽しいので、活動を継続出来る座組みを考えていますね。副業!とか、起業!とかいうよりは、ライフワークに近い形です。

 

会社員以上・起業未満。組織に属しながらレシピバトンを続ける高木氏

独立や起業を選択せず、組織に属しながらやりたい事を実現する高木氏に、会社員としての立場での話も伺いました。

 

>ちょっと話逸れますが、社外の活動を会社の人に知られるのって恥ずかしくないですか?

恥ずかしくはないですね。「高木=赤いエプロンのアイコン」みたいに思われているとは思うのですが、そういった「仕事外の側面を持っていないと、これからの時代大変なんじゃないか?」という危機感を自分の中では持っています。

起業されている方は特にそうだと思いますが、個人の当事者意識があるからこそ、そこに共感が生まれ、発する言葉に説得力と厚み(深み)が生まているのだと感じています。

当事者意識、というと硬いですが、好きなことの話をしている時の人の言葉って、強いじゃないですか。だから、会社で活かしている能力を、個人として仕事以外の側面でも発揮していった方が、これからの時代の会社員にとっても、自分の人生にとっても”豊か”になるんじゃないか?と僕自身は思っています。恥ずかしがってる暇はないですね。どうせ発信しても、皆んな他に大事な事あるし、すぐに忘れるし、だったらやっちゃえと(笑)

 

>本業や私生活など、やっていてプラスになったことってあります?

本業では、食関連の案件や相談事は増えましたね。

私生活においては「世界が拡がる」ということを正に実感していて、レシピバトンをきっかけに、

・フランス在住のシェフがコンセプトを気に入ってくださり、現地にお誘いいただいたり

・ラジオに出させていただいたのをきっかけに、某百貨店さんから取り組みのお誘いをいただいたり

・働き方の切り口でイベント参加させてもらったり、こういうインタビューにお声がけいただいたり(笑)

小さくても活動を継続してきたからこそ、新しいチャレンジが舞い込んでくる。そして、そこから世界が拡がっていくのを実感しています。

※メンバー全員で登壇したDMM.com主催の勉強会での1枚

 

レシピバトン高木さんと考えるこれからの起業〜自分のアイデアを形にするために〜

やりたい事にチャレンジしていきましょう!と話す高木氏。最後に、独立でも起業でもなく、組織に属しながらレシピバトンを続ける高木氏にアイデアを形にするヒントを伺いました。

Q.

アイデアはあるんだけど、何から初めて良いか分からないです・・

A.

今すぐ始めてみるっていうのは1つの手段かもしれませんが、逆にそれが本当にやりたいか事かどうか待ってみる、というのもありなのかと思います。そこで、それが止められない想いや企画なのかが問われる気がします。その上で、

・今日やれることから始めてみる。

・それが分からなければ、自分が何をしている状態が好きか?幸せか?を把握すると、今日何が出来るかが分かる

1つの例ですが、僕の友人で餃子好きを365日発信し続けているやつがいます。その日食べた餃子や、出張先で食べたパニーニを、コレは餃子だ!といって投稿したり(笑)毎日〇〇を食べるや、毎日××を続けるなど、中身は何でも良くて、自分との小さい約束を守れる事・続ける事・恥ずかしがらずに発信してみる事、がまずはスタートなのではないでしょうか。

 

Q.

仲間はどうやって集めれば良いのでしょうか?

A.

①やりたいアイデアや興味あることを常に発信する。
②仲間が必要な場合は、その役割と、その人じゃなきゃダメな理由を明確にする。そして口説く。
③仲間が楽しくやっていけること(仲間にとって何が楽しさに繋がるのか?成長なのか、お金なのか、やりがいなのか)を常に考えてみる。

仲間が集まらなかったらまたアイデアを考え直すのもありだと思いますし、仲間がいなくてもできることから始めるのもありだと思います。こういう時代なので、情報を開示すれば開示するほど集まってくると思います。

 

取材・撮影協力:DIAGONAL RUN TOKYO

 

編集後記

取材中、高木氏のこれまでの経歴を伺う機会もあり、これまでの道のりをお聞きしました。取材前は、日本大学芸術学部出身で広告代理店勤務と言う字面で「やっぱりセンスがあるからこんな企画が考えられるのね・・」と少し卑屈な目で見ていた編集部でしたが、実際は、30歳近くまで広告業界の夢を諦めず不器用な努力を続け夢を勝ち取り、36歳でレシピバトンを形にする、ひたすらに諦めない人でした。今回はインタビューしてこそ聞ける話の醍醐味を感じた編集部でした。

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