「辛くても幸せでも、前に進めたら一歩前進」様々な苦難を乗り越え、スタートラインに立つSPRING OF FASHION【起業インタビュー第57回】|起業サプリジャーナル

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「辛くても幸せでも、前に進めたら一歩前進」様々な苦難を乗り越え、スタートラインに立つSPRING OF FASHION【起業インタビュー第57回】

公開日:2018.01.23

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経営コンサルから海外留学、業界大手のアパレルメーカーでのキャリアを積んだ保坂氏のこれまでの経歴を見ると、業界ではどこか成功を約束されているかの様に思ってしまう。正直、私達もインタビューをする前は、そんな順風満帆な起業ストーリーを予想していた。笑顔の裏に隠された彼の起業ストーリーと、これから成功の春を待つ同社の事業について伺いました。

 

プロフィール(保坂忠伸氏)

新卒で京セラグループの経営コンサルティング会社に従事。3年半勤めた後、海外留学を経てファッション業界へ。STUDIOUS(現TOKYO BASE)にて、店舗スタッフを経て自社ECサイト部門に所属。ECサイト部門は所属当時、予算達成率最下位であったものの、徹底的に業務改善を行い配属3ヶ月目より予算達成率1位を獲得。ファッションデザイナーになるために文化服装学院にて、1年間服作りを学びその過程でSPRING OF FASHIONのシーズアイデアに出会う。卒業後はSPRING OF FASHIONの事業投資のためにホットペッパーの営業を行い、入社2ヶ月後に開催された社内コンテストでは3位入賞。その後、クリーク・アンド・リバー社でファッション業界の人材紹介を経て、SPRING OF FASHIONを設立。

 

株式会社SPRING OF FASHION(事業内容)について

>SPRING OF FASHIONの事業内容をお教え下さい。

現在は、デザイナーズブランドの予約販売型ECサイト「Sof DESIGNERS」を運営しています。

>ファッションECとなると、後発かつ各社飽和な印象を受けます。どんなところを差別化されているのでしょうか?

はい、ファッションECとしての差別化は2点あります。

1つ目は、我々の取り扱いブランドはデザイナーズブランドに特化しており、業界最大手であるZOZOTOWNやYahoo!、楽天で取り扱っている商品群とのバッティングしません。

2つ目は、予約販売型であるという点。Sof DESIGNERSでは、着用シーズン半年前のアイテムを中心に商品を取り扱っており、ブランドは本生産前に注文を受ける「受注生産型」に切り替えることが出来ます。これによって、従来アイテムにのっていた広告費や在庫リスク費といった費用分をカット出来る為、販売価格を10%から最大30%オフで商品を提供出来る様になっております。

 

 

>デザイナーズブランドと聞くと、それでもECで購入するには敷居の高いイメージがありますが、その点はどんな工夫をされているのでしょうか?

仰る通り、実際オンラインのみで購入するには敷居の高さがあると思うので、自社で展示会を企画するなどしてリアルで商品や作り手であるデザイナーと対面出来る機会を設けております。初回に限ってですが、商品購入時に各ブランドが定める10〜30%の範囲で商品が割引になるチケットも購入出来る様になっており、価格やイメージにおいても敷居の高いデザイナーズブランドを、まずは手に取ってもらう工夫をしています。

 

「今やりたい事をやらないと人生終わってしまう」留学先での経験が背中を押す

> 現在に至るまでのお話を伺いたいのですが、元々ファッション分野での起業を考えていたのでしょうか?

私のキャリアのスタートは、京セラグループの経営コンサルの会社からスタートしています。当時からファッション業界に興味関心が強かったものの、起業することを決めていたわけではありませんでした。

ファッション業界で仕事がしたいという気持ちはありましたが、経営コンサルとあまりにも業界が違い過ぎて、京セラを辞めるタイミングではファッション業界へ踏み出せませんでした。一方で語学を身につけたいと思っていたので、フィリピン・ニューヨークへ語学留学をしています。留学を機にファッション業界へ進むことを決意ました。、当初はファッションデザイナーになることを志していましたので、まずはファッション業界の実務を知るためにSTUDIOUSで働き、その後、服作りを知るために専門学校へ入学しました。

 

> 踏み出す転機になった出来事はありますか?

今では笑い話ですが、留学先で強盗にあい、命を落としかける経験をしました。その時「人生いつ終わるか分からない」という事を強烈に学び、今やりたい事をやらないと人生終わってしまうと思い、ファッション業界への一歩を踏み出しています。

 

> 命を落としかけた!? 何があったのでしょうか?(汗)

日本に帰国する1週間前のニューヨークでの出来事でした。突然3人のグループに襲われ、ボコボコに殴られながら財布、携帯、バック等盗られまして、帰国1週間前との事もあり「とにかくパスポートだけは・・」と思った自分は何をしたかと言うと、追いかけたんですね・・強盗を(笑)

 

> え、追いかけたんですか?(笑)

はい。追いかけてまたボコボコにされました(笑)結果パスポートはその日、たまたまホームステイ先に忘れていたので盗られずにすみましたが、不幸中の幸いというか、殴られ損をしたというかでしたが、、、。

現地の警察からは「普通、NYで強盗を追いかけたら(銃で)打たれるか、刺されている。無事だっただけで感謝したほうが良い」と言われました。人生の終わりを身近に感じた体験が「人生いつ終わるか分からない」と、今でも決断の背中を押してくれています。

 

ブランドではなく、ブランドを知ってもらう「場」の演出者になった背景

> 実際に専門学校へも入学されていますが、ご自身でブランドを作ることも意識されていたのでしょうか?

はい、当時はデザイナーになって自身のブランドを立ち上げることを目指しており、実際に服作りを学びに文化服装学院に入学しております。

 

> そこから、なぜ現在のような立場に想いが変化していったのでしょうか?

きっかけは2つありまして、

1つ目は学校に入学したことで、自分が知らなかった良いブランドに沢山出会った事です。

専門学校へ入学して1番衝撃的だったのは、それまでセレクトショップで働いていたにも関わらず、自分が知らない良いブランドが本当に沢山あるという事でした。それが1つや2つではなく、層が厚かったので、自分自身がこれからデザイナーになる必要がないと感じました。

2つ目は、当時Wスクールで通っていたファッションデザインを学ぶ「ここのがっこう」での体験も大きかったです。ここはファッションデザインを学ぶ私塾ですが、徹底的に自分の価値観を掘り下げてクリエイションに繋げるといった事を学びます。その時にニューヨークの事件のことに改めて向き合いました。もしかしたらあの時自分は生かされたのかもしれないと思い、もし2回目の人生であるなら自分がデザイナーとして前に出るのではなく、素晴らしいデザイナーを支援するプラットフォーマーになりたいと考えました。

 

立ち上げの苦労、3度目で掴んだサービスローンチ。

> 今のサービスの構想は、業界に転身されていてから考えていたのものなのでしょうか?

実は今のサービスにいきつくまでに何度か転換をしていまして、最初にやろうとしていたのは服飾学生向けのSNSでした。出来上がる直前まで完成していたのですが、開発面でのトラブルがあって、結局リリースには至りませんでした。

 

> トラブルとは?

サービスの開発を外部に委託していたのですが、納品されませんでした。丁度、専門学校を卒業した後で、卒業後はこの事業を軸にやっていくつもりでしたので、精神的にもキツかったですね。

 

> そうなんですね、、そこから今のサービスにいきついた、と?

いや、次はですね。ファッションの分野からもう少し広くしまして、その周辺に携わるクリエイターに特化したSNSを作りました。ファッションデザイナーだけでなく、フォトグラファーやヘアメイクアーティスト、モデルまで対象を広げて、自分の作品を投稿出来る様なSNSサイトでした。

先に言ってしまうと、またエンジニアとのトラブルがあり、CTOとして採用する方が海外の方だったのですが、来日予定の1ヶ月前に急遽日本に来なくなるという事が起きまして、こちらのサービスも正式なローンチできませんでした。ベンチャーでリソースもありませんから、当時同時並行で考えていた現在のサービスに絞って、ローンチまでこぎつけました。本当にローンチまでは苦しみましたね。

 

> 留学先での経験もそうですが、保坂さんはメンタルが強いですね。

そうですよね、普通だったらどこかのタイミングで心が折れて辞めてますよね。トラブルばかりでしたし。

 

>起業をすれば、そういった経験は少なからず誰しも可能性として抱えているのかと思いますが、そういった時は、どんな気持ちの切り替えやマインドセットをするのでしょうか?

私の中で一番踏ん張りになるのはニューヨークの事件ですね、あの事件で自分の人生1度終わったと思っているので。後は「辛くても、幸せでも前に進んだら一歩前進」、NYの時間からどれだけ自分の人生を前に進めることができるか、常にその気持ちを大切にしています。

でもそこから更に一歩、また一歩と頑張れたのは、やっていく事で次にやりたい事がどんどん見つけられたんですよね。やればやるほど「あ、こういった事も出来るな」「次は、こうやったらうまくいくだろうな」と、それが自分からしたら、一歩前進なんですね。

 

「世界のクリエイターに活躍の場を」ビジョンとするSPRING OF FASHIONが目指す未来

最後に、これからのSPRING OF FASHIONが目指す未来についても伺いました。

目先の話をすれば、デザイナーズブランドをこれまで手に取ってこなかった方にも届ける事で、「デザイナーズブランドの民主化」を図りたいです。

現在、消費者のモノの買い方がモノづくりの裏側を知るストーリー思考に変化しているかと思いますが、デザイナーズブランドこそ、ブランドの想いや服作りの裏側に語れる内容(物語)が沢山あります。ここにはまだ然るべき情報が届けられておらず、どうしても価格の面から購入対象から除外されてしまっている事実もあるかと思うので、私達の直近は、受注生産型に変えることで少しでも買いやすい価格帯に変える・デザイナーの想いや服作りの裏側を発信・伝播していく事だと思っています。

これを私達は「デザイナーズブランドの民主化」と呼んでいます。

それによって、現在ファストファッションの台頭によって叫ばれるようになった「ファッションの同質化」を「多様化」に変化させたいとも考えています。

中長期的には、”世界のクリエイターに活躍の場を。”といった会社のビジョンを体現するサービスを考えたいと思っています。ファッションと一口にいっても、そこには様々なクリエイターの方が関わってきています。例えば、カタログに映るモデルさんだったり、メイクさんだったり、写真を撮るフォトグラファーだったり、デザイナーズブランド同様、良いクリエイションを生み出す方にちゃんとスポットライトを当てていけるサービスも考えていきたいです。

 

編集後記

SPRING OF FASHIONの社名の由来は、「アラブの春(※)」。現在のサービスや会社を立ち上げる前から、名前だけは先に決めていたと保坂氏は語る。起源は、専門学生時代に企画を構想していた世界の服飾学生を集めたファッションショーの名前から来ており、「単体では力のない人たちでも、集まれば一つのムーブメントを起こせる事をファッションの分野でも体現したかった」と語る保坂氏の想いはきっと当時から変わらず、より大きなツボミとなり、来たる春を待っているのだと感じました。

※ 2010-2012年にかけて起きた大規模な反政府デモ

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