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キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請で押さえておくべき注意点4選

公開日:2017.08.08

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キャリアアップ助成金の正社員化コースは平成29年度も最も人気のある助成金の1つであることは間違いないでしょう。

6ヶ月以上有期契約で雇用した社員を正社員に転換し、さらに6ヶ月継続雇用をしたら、対象者1人につき57万円(生産性要件を満たせば72万円)が支給されるという大型の助成金です。

利用しやすい助成金ではありますが、不正受給の防止のため、審査が年々厳しくなっています。

そこで、不支給となることを防ぐために、私が実務の中で体験したり、話を聞いたりしたことの中から、とくに注意しておきたいポイントを4点紹介します。

 

残業代は完璧に支払うこと

1つ目は、残業代の支払漏れが無いようにすることです。

キャリアアップ助成金の申請の際には、正社員に転換した日の前後6ヶ月(合計12か月分)の出勤簿と賃金台帳を提出しなければなりません。

変形労働時間制をとっている会社の場合は、都道府県によってはシフト表の提出を求められることもあります。

そして、労働局のほうでは、出勤簿やシフト表と賃金台帳を突き合せ、残業代の払い漏れがないか、目を皿のようにしてチェックを行っています。

払い漏れが発見された場合、直ちに不支給が決定するという可能性は低いですが、逆に、差額の残業代を精算しなければ審査がストップして、支給決定がされることもありません。

また、固定残業代を支払っている会社の場合は、その固定残業代に該当する金額が特定されていることは勿論ですが、それが何時間分の残業代に相当するかなど、細かい質問を受けることが多くなっています。

ですから、残業代の計算には細心の注意を払って下さい。前述したよう、残業代の支払が漏れていたことだけで直ちに不支給になる可能性は低いですが、労働局が「この会社はきちんとした労務管理がなされていない」という印象をいだくと、さらに審査が厳しくなる恐れがあります。

なお、出勤簿を不正に操作して残業が無いように見せかけても、不審な点があれば突っ込んで調査をされますし、書類を偽装して助成金を獲得するのは不正受給になりますから絶対にやめましょう。

 

手当や賞与の払い過ぎもNG

2つ目は、正社員にしか支給されないはずの手当や賞与を支払わないようにすることです。

雇用契約書や就業規則で、契約社員にも支払われることになっている手当が支払われていない場合は、賃金の不支給があるになりますから、助成金の審査で指摘を受けることは誰もが理解できるでしょう。

ところが、雇用契約書に書かれていなかったり、就業規則では正社員にしか支払わないことになっている手当や賞与を支払ったりした場合にも、助成金が不支給になるリスクがあることにご注意ください。

私も「プラスで払っている分には問題ないんじゃないか」と思っていたのですが、「この会社の就業規則では、家族手当は正社員にしか支払われないことになっているのに、正社員転換前から家族手当が支払われているので、この人は、実はもともと正社員だったのではないのですか?」と指摘をされ、冷や汗をかいたことがあります。

そのときは、特段の事情があり、会社が任意恩恵的に支払ったいたということが明確に説明できたので、労働局に申立書を差し入れることで無事に支給決定を受けることができたのですが、会社が良かれと思ってしたことでも、助成金の審査上は裏目に出てしまうということがありますので、ご注意ください。

助成金を利用する会社は、たとえ社員に有利なことであっても、雇用契約書や就業規則と異なる待遇はしないようにして下さい。

どうしても異なる待遇をしたい場合は、雇用契約書を結び直したり、就業規則を改定したりした上で行うようにしましょう。

 

試用期間は有期契約期間ではない

3つ目は、試用期間を有期契約と勘違いしないようにすることです。

私は、ある事業主の方から、「もうすぐ社員が6か月の試用期間が終わるので、本採用をするから、キャリアアップ助成金を申請したい」という相談を受けたことがあります。

しかし、この案件は、残念ながら申請をすることができませんでした。

その理由は、雇用契約書の期間が、「入社当初から期間の無い雇用契約を結んでいて、当初6か月を試用期間する」という定めになっていたからです。

「試用期間」=「有期契約期間」ではないことに気を付けなければなりません。

試用期間とは、「何か問題があれば少し会社都合で解雇がしやすくなる期間」という意味であり、契約期間そのものが有期か無期かとは関係が無いのです。

ですから、入社から一定期間を試用期間とすること自体はキャリアアップ助成金の申請上も問題ないのですが、必ず「有期契約を結んだうえで、その契約期間の一部を試用期間にする」という形を取るようにして下さい。

逆に、雇用契約期間について何ら定めをせず、単に「入社後6か月は試用期間とする」とした場合は、キャリアアップ助成金の対象外となりますので、ご注意ください。

 

就業規則に記載する正社員転換条項でミスしない

4つ目は、就業規則の作成ミスをしないようにすることです。

キャリアアップ助成金の支給申請の条件の1つとして、「就業規則に基づいて正社員転換を行ったこと」がありますので、就業規則を作成することは必須です。

厚生労働省が出しているリーフレットには、その就業規則に盛り込む正社員転換条項の記載例が紹介されているのですが、そのまま真似をしただけでは不支給になる恐れがあります。

というのも、厚生労働省の記載例では、「正社員の転換日は毎年4月1日とする」というように、年度のはじめということなのでしょうが、4月1日に正社員転換をすることを決め打ちするような内容になっていますので、4月1日以外の日付で正社員転換をしてしまった場合は、就業規則のルールと異なるということで、不支給になってしまうのです。

ですから、自社の対象者が転換するタイミングの実態に合致した形で正社員転換条項を定める必要があるのです。いつ転換するかはっきり決まっていない場合は、「随時転換する」というような、玉虫色の書き方にしておくのが無難でしょう。

また、正社員用の就業規則と、契約社員用やパート社員用の就業規則が分かれている会社では、契約社員用やパート社員用の就業規則に正社員転換条項を定めることが必要です。

正社員に転換したい旨の希望を出したり、正社員昇格試験を受けたりする時点では、身分は契約社員やパート社員なわけですから、そのときに適用されている就業規則に正社員転換条項が定められている必要があるのです。

また、私が聞いたことのあるミスの例では、就業規則は事業所単位で適用されるものですが、本店の就業規則には正社員転換条項を入れていたのに、支店の就業規則には正社員転換条項を入れ忘れていたため、支店所属の契約社員のキャリアアップ助成金を逃してしまったという話を聞いたことがあります。

このような就業規則の作成ミスには充分注意をしましょう。

 

まとめ

一昔前は「助成金は要件を満たせば必ず支給されます」という宣伝がされることも多かったですが、昨今のハローワークや労働局の対応を見ると「書類に怪しい点があれば私たちが納得するまで支給決定はしませんし、不支給とすることも躊躇しません」という温度感になっているという気がします。

受給できると思っていた助成金が、勘違いや書類作成のミスで受給できなくなってしまうのは非常に残念ですから、今回紹介した4点に限らずですが、細心の注意を払ってキャリアアップ助成金の申請手続を進めるようにして下さい。

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投稿者について
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榊裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。

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