こんにちは。社会保険労務士の榊です。
起業をするに先立っては、飲食業であれば料理や接客、小売業であれれば扱う商品の知識といったように、自分が起業する分野で必要となる専門性を磨くことが重要なのは言うまでもありません。
経営者は「経営」に関する知識を身に付けるべき
しかし、経営者としてビジネスを切り盛りするためには、本業の専門性だけでなく、経営全般に関する知識を、薄くでよいので、幅広く身に着けておくことをお勧めします。
税務や労務の細かいところは税理士や社会保険労務士に任せるにしても、何もわからないまま「丸投げ」では、正しい経営判断ができなくなってしまう恐れがあるからです。
そこで、今回の記事では、起業家が、起業するまでに取得しておきたい「3つの資格」を紹介をしたいと思います。なお、すべての資格を「3級」で統一していますが、「広く浅く学ぶ」という意味では、3級の知識を身に付ければ十分です。
「簿記検定」で資金繰りに強くなる
第1は、簿記検定3級です。
簿記とは、会社の日々のお金の動きを分かりやすく記帳したり、最終的には1年間の経営成績を「貸借対照表」や「損益計算書」といった財務諸表にまとめたりするための知識です。
記帳や、財務諸表を作成する実務を税理士に任せるにしても、会社の売上や経費が現在どのように流れているのか経営者がイメージできているか否かで、資金繰りに関する経営判断の精度には、天と地ほどの差が生じます。
簿記をさわりだけでも学ぶことで、「今、会社の資金繰りは順調だな」とか「このままではあと半年くらいで資金繰りが厳しくなるから、早めに手を打たねばならないな」といったようなことが、ある程度はイメージできる素養が身に付きます。
「FP技能士検定」で財務や税務のイメージを幅広くつかむ
第2は、ファイナンシャルプランニング技能士検定(以後「FP技能士検定」という)3級です。
FP技能士検定は、①ライフプラン(公的年金等)②保険③金融④不動産⑤税金⑥相続・事業承継という6つの領域から出題されます。
この資格を勉強することで、従業員を雇ったらどのような公的保険に入らなければならないのかとか、事業のリスクをヘッジするためにはどのような保険に入れば良いのかとか、金融機関から借り入れをするとその利息や元本はどのように返済していくのかとか、社用車を買ったらどれくらいの節税効果が期待できるのかとか、経営をしていて日々起こりうる「お金」に関する問題(「資金繰り」より幅広い意味で)を考えるための基礎知識が身に付きます。顧問税理士とのコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
また、会社を経営していると、保険や投資などの営業も色々受けるようになりますが、「おいしい話」には裏があることも少なくないので、相手のペースに流されることなく、自分の頭で主導権を持って判断したり、怪しい話に気が付く感性が身に付くという意味においても、FP技能士検定を勉強しておくことはおすすめなのです。
法律面は「ビジネス実務法務検定(R)」がおすすめ
第3は、ビジネス実務法務検定3級です。
ここまではお金の話が中心でしたが、ビジネス実務法務検定は、ビジネスを行うにあたって必要となる法律の知識を効率的に身に着けるための検定試験です。
具体的には、民法、会社法、労働法などが出題の中心であり、「契約を結ぶときに気を付けなければならないこと」「会社の仕組み」「従業員を雇用するために守らなければならないこと」など、経営者としても最低限知っておかねばならない法律を網羅的に学ぶことができます。
複雑な案件や事業に与える影響が大きい案件については、弁護士や行政書士といった専門家のサポートを受けるにしても、やはり「丸投げ」ではなく、「自社としてはこうしたい」という方向性を共有するためにも、経営者は基礎的な法律知識は持っておくべきだと思います。
以上、3つの資格を紹介しましたが、仮に合格に至らなかったとしても、「勉強をした」という過程が大切です。起業の成功率を高めるためにも、是非、財務や法務の知識を、基礎的な部分だけでも身に付けてみて下さい。