会社を設立する際に、潤沢な資金とともにスタートできる方はそう多くはないと思います。あと○○万円準備できればもっと余裕を持ったスタートが切れるのに!と思いながら、ギリギリの資金でスタートされる方も少なくないでしょう。
私も仕事柄、起業される方の事業内容や展望をお伺いすることが多く、目指すものがイメージできればできるほど、確かにもう少し資金があれば安心ですね、と共感することも良くあります。そしてそんなとき「お金を出してくれる人が見つかりました!」という報告を聞くと、私も一瞬「良かったですねー!」と大喜びしそうになるのですが・・・
ちょっと待ってください!そのお金は何のお金なのでしょうか?
お金を出してもらう方法
お金を出してもらう方法には、2種類あります。
1つは「出資して」もらう方法で、もう1つは「貸して」もらう方法です。もちろん何の見返りも期待しない贈与(寄付)という可能性もゼロではありませんが、通常は考えにくく、2つのうちのどちらかになるでしょう。
もしもそのお金が「出資」なら、会社はそのお金を「資本金」として組み込み、その方を「株主」として迎えることになります。一方、そのお金が「貸金」なら、会社はそのお金を「借金(負債)」として組み込み、その方を「債権者」として迎えることになります。
もう少し端的に言えば、「出資」なら、そのお金は返さなくて良いお金となり、「貸金」なら、そのお金は返す必要のあるお金で利息の支払いも必要になります。また、「出資」なら、お金を出した人は「株主」となって株主総会での議決権を持つことになり、「貸金」なら、お金を出した人は「債権者」となり会社の経営に口を挟むことは原則ありません。
このように「お金を出してもらう」という事実は同じでも、どのような性質のお金として出してもらうかによって、会社側もお金を出す人も、対応が変わってくるのです。
お金の受け取りは慎重に!
ここに、会社側とお金を出す人とでその認識が異なり、後に大きなトラブルになってしまったというケースがあります。
その起業家の方は、出してもらったお金を「借りた」と認識しており、お金を出した人は「出資した」つもりだったのです。さらにその出資者は、「過半数の株を持てることを前提にお金を出して」いました。そのため、私が起業家の方に、「これでは過半数の株を出資者が持つため、もはやあなたの会社ではなくなってしまいますよ」とお伝えしたところ、それは困るとあわてて交渉しました。しかし、出資者も引き下がらず、結局その起業家の方は、解決するために、出してもらったお金を全額返した上に多額の違約金まで支払うことになってしまったそうです。
会社を設立して自分が代表取締役に就いていると、その会社は「自分の会社」だと感じると思います。しかし、他人が過半数の株を所有した時点で、もはやそれは「自分の会社」ではなくなったと言っても過言ではありません。ある日突然、別の人を代表取締役に選ばれて、あなたが解任されてしまえばそれきりなのです。自分の会社かどうかは、株をしっかりもっているかどうかにかかっているのです。株の意味を理解しないままに、安易に過半数を超える株を他人に持たせてしまうことは避けましょう。
起業をすると、友人や知人、親戚や最近出会ったばかりの人などから「お金を出すよ!」と言われることもあるでしょう。まだ実績がない設立時のうちであっても、事業内容が魅力的であれば将来への期待がふくらみ、個人的な支援を申し出てくれる人は案外いるものです。そして、借金より出資の方が、返さなくて良い分会社としてはありがたいものです。しかし、それに伴うリスクもしっかりと理解して、後々トラブルにならないよう、慎重にお金を受け取るようにしましょう。