春になったら新しい事業を立ち上げますから、その時に取材いただけますか
昨年の暮れ、旧知の起業家に取材を申し込んだところ、そうお返事をいただいた。
果たしてその新しい事業とは、就労移行支援事業所の運営だった。
竹井 弘二(たけい こうじ)氏
1971年生まれ。愛知県出身。
大手資格予備校にて、宅建試験及び不動産鑑定士試験講師を歴任。
その後、金融系システムベンダーに勤務。総務・法務担当バイスプレジデントとして契約法務、株式実務等の総務・法務分野を担当。
2011年1月、株式会社ルミノーゾ・パートナーズ設立、代表取締役社長。
2016年10月、一般社団法人ルミノーゾ設立、代表理事。
就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所とは、障がい者の就職・就労をサポートする施設である。
運営母体は、社会福祉法人、株式会社、そして今回お邪魔したルミノーゾ町田のように一般社団法人と、さまざまのようだ。
ルミノーゾ町田の運営方針について、竹井氏はこう語る。
事業所の運営はバランスをとることが大事だと考えています。あまりに福祉に偏ると就労支援という本来の趣旨から外れかねませんし、営利の追求に偏るのも望ましくありません。
全事業所のうち約3分の1が「就労実績ゼロ」という話もあります。就労移行支援事業は、就労というゴールを期待されて都道府県の指定を受けるわけですから、利用される方々のケアをしつつ適切かつ可及的速やかな時期に就労を目指すべきです。
ルミノーゾ町田の特徴
まずは週1からでも、定期的にここに通うのに慣れることから始めていただきます。
慣れてきたところで、「何を強みにして就労を目指すか」という観点から、個別プログラムを組みます。
資格取得をサポート
このプログラムを組む際に強みとなるのが、ルミノーゾ町田の各スタッフが就職に有利な資格を熟知していることである。
竹井氏ご自身も行政書士、宅建士、FP(ファイナンシャルプランナー)、マンション管理士等、実務的な資格を複数保有しておられるプロフェッショナルだ。
この他にも、簿記、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)、ビジネス実務マナー検定、秘書検定など、さまざまな資格の取得をサポートしている。
学習スタイルは、大人数で行う集合プログラムは多くなく、専用デスクでDVD教材等を用いて自習するのが中心。就労後は、各自で仕事をこなす必要があるため、その自立を見据えてのことだという。 教材は、竹井氏の運営する株式会社シープや、提携している検定実施団体の、本格的なものを用いる。
昼食の無料提供
利用者は無料で昼食の弁当をいただけるというのも魅力の1つだ。
栄養摂取の内容に偏りがあったり回数がまちまちだったりと、食生活が乱れている利用者の方も少なくありません。
就労のためには、食習慣を安定させることも大切ですから、その改善もサポートしています。
ルミノーゾ町田の開所に至るまで
資格試験予備校、IT企業での勤務を経て、2011年に株式会社ルミノーゾ・パートナーズを設立、起業した竹井氏。起業の理由を伺った。
企業の中で働くのも楽しかったのですが、全てを自分で決める方がよりおもしろいだろうと思い、独立する道を選びました。
もっとも、40才になると踏ん切りがつかなくなるだろうとも思いましたので、30代で起業したというのが経緯です。
株式会社ルミノーゾ・パートナーズは、創業支援・バックオフィスサポートを主事業としている企業である。そこからどのようなきっかけで福祉業界へと参入したのだろうか。
直接的なきっかけは、福祉業界で働いている知人からお話をいただいたことです。
障がい者の方々の就労が拡大するということは、その方々が、福祉サービスを享受するだけでなく、自己実現と社会貢献を果たすことができるということでもあります。この点に大きな社会的意義があると感じ、事業所を運営することを決めました。やると決めたからには早く進めようと思い、昨年11月にスタートアッププロジェクトを立ち上げ、2ヶ月後には施設の場所を確定させました。それから準備を進め、4月3日に無事開所の運びとなりました。
ルミノーゾ町田のこれから
開所して約2ヶ月。見学や体験利用等、滑り出しの反響は上々だというルミノーゾ町田。今後の展望を伺った。
現在、障がい者手帳をお持ちの方は増加しています。一方で障がい者の方の法定雇用率の上昇、加えて、東京都は小池知事の旗振りのもと、障がい者雇用をより積極的に行うと聞いていますので、さらなる雇用の拡大が期待できます。
町田は、私にとって縁のあるJR横浜線沿線で、障がい者福祉に非常に手厚い街です。市役所でも頻繁に福祉イベントも開催されています。
ルミノーゾ町田は4月に開所したばかりで日が浅いですが、状況的にみて私たちのような事業所のニーズが高い街だと思いますから、まずは地域の皆さんに喜んでいただけるようにしたいです。
編集後記
在職期間の重複はないものの、竹井氏は私の前職における先輩にあたる。
本編とは脱線して共通の知人の話にも花が咲き、懐かしさを覚える取材でもあった。
一度お会いした方とどこでどう繋がって再会するかはわからない。出会いは大事にしないといけないな、と改めて感じている。