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七転び八起きのためのリスクマネジメント

公開日:2017.01.05

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中小企業にとってのリスクマネジメント

ほとんどの会社は中小企業として創業します。
中小企業は中小企業基本法によって、業種別に従業員数と資本金の金額に応じて定められています。例えばサービス業の場合は従業員数100人以下または資本金5千万円以下が中小企業と定義されます。そして中小企業の動向と課題は、毎年、中小企業白書としてまとめられます。

昨年2016年の中小企業白書では第2部第4章でリスクマネジメントが採り上げられています。ここでは、実態調査に基づき、自然災害と情報セキュリティに関するリスクへの中小企業の認識が、大企業のそれに比べて見劣りしていることが指摘されています。
自然災害の対応策としてはBCP(事業継続計画)の必要性が説かれています。BCPは、日本国内で2011年の東日本大震災後、注目度が高まっており、自然災害の被害をなるべく小さく食い止めるための対策、災害発生後の事業を再開するための対策で構成されます。

リスクマネジメントの基本は、PDCAのサイクルを回すことです。これについては中小企業と大企業で異なるところはありません。基本計画を立て、対応策を実施して、モニタリングを行い、是正と改善を行う流れで進めていきます。
リスクマネジメントの特徴は基本計画にあり、計画の要素にはリスクの洗い出しとリスクの評価が含まれます。そしてリスクの評価に基づき、リスクへの対応策を準備します。

 

リスクの洗い出し

リスクを洗い出すためには、まず「リスクとは何か」を明確にすることが必要です。例えば、パナソニックの創始者である松下幸之助は、「リスクとは経営における失敗の原因である」と定義しています。
この洗い出しには、SWOT分析(自社の内部と外部におけるプラスとマイナスの要素を把握する方法)が役に立ちます。SWOT分析によって洗い出されるリスクは、内部でのマイナスの要素である「弱み」と外部でのマイナス要素である「脅威」です。中小企業にとって情報セキュリティの不備は「弱み」であり、自然災害は「脅威」となります。

こうして洗い出したリスクを、発生可能性と影響力の2つから評価します。費用対効果の視点から、発生可能性が高く影響力も大きいリスクを優先して、対応策を準備します。

 

リスクへの対応

リスクへの対応には「回避」「低減」「移転」「受容」の4つがあります。「回避」とはリスクの発生可能性を引き下げることです。「低減」はリスクの影響力を小さくすることです。「移転」はリスクの影響力を外部に転嫁することで、一般的には保険に加入することです。「受容」はリスクを受け入れることで、発生可能性が低く影響力が小さいリスクが対象になります。

これらの対応のうち中心となるのは、リスクの「回避」と「低減」です。例えば、情報セキュリティを強化してコンピュータウィルスやマルウェアなどからの悪影響を回避すること、BCPを準備して自然災害による被害を低減させることなどが考えられます。

しかし、自然災害を含め、全てのリスクを避けることはできません。つまり経営における失敗は何らかの形で起きてしまいます。起きた失敗にうまく対応するには、失敗の捉え方が重要です。
野球評論家の野村克也は「失敗と書いて成長と読む」という言葉を好んで使います。失敗を通じて成長することができること、失敗を前向きに肯定的に捉えることの重要性を教えてくれる言葉です。

 

失敗の捉え方

失敗を前向きに肯定的に捉えるためには、失敗の活用方法と経営者の心構えが重要です。

失敗の活用方法

失敗の活用方法は大企業に学ぶことができます。
2016年12月下旬に化学業界の大手メーカーが、失敗した実験データを保存して有効に活用する仕組みをつくることを発表しました。 住友化学は2017年4月から、三菱ケミカルホールディングスは今年度中に、失敗した実験データの有効活用に取り組むことを公言しています。

この2社は、既に失敗を活用した商品開発に手応えを感じています。住友化学には装飾用フィルムの「WAPO」、三菱ケミカルホールディングスには浄化器用の濾過膜において成功事例があります。このような失敗した実験データの活用は、小回りが利く中小企業にとって導入しやすい取り組みであるはずです。

経営者の心構え

失敗を有効に活用するためには、経営者の心構えを持つ必要があります。
具体的には、経営者はレジリエンス(心の柔軟性)を身につけることが期待されます。レジリエンスは2013年のダボス会議で話題にされて以来、注目されるようになったキーワードです。

レジリエンスを身につけるためには、いくつかのコツがあります。
まず、①失敗は成功に結びつくとして受け止めることです。
次に、②複数の判断基準を準備しておくことです。判断基準がひとつしかないと、勝ちか負けか、といった二者択一的に物事を受け止めることになり、心の余裕を持ちにくくなるからです。
また、③事実を具体的に捉えること、④他人と比較しないこと、⑤他人の意見の根拠や裏付けを確認すること、がレジリエンスを身につけることにつながります。

レジリエンスを身につけて、七転び八起きの心構えで今年1年、頑張って下さい。

 

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