こんにちは。司法書士の田中あゆ美です。
前回の記事では、機関設計の概略についてご説明しました。機関設計の基本ルールは、「全ての株式会社は、株主総会及び取締役を置かなければならない」ということでした。
今回は、「非公開」かつ「大会社以外の会社」について取り得る機関設計についてご説明したいと思います。
「非公開」かつ「大会社以外の会社」
まずは、以下の表をご覧ください。
機関 |
取締役 |
取締 役会 |
監査役 |
監査 役会 |
会計 監査人 |
監査等 委員会 |
指名・報酬・ 監査委員会 |
会計参与 |
1 |
○ |
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△ |
2 |
○ |
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○ |
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△ |
3 |
○ |
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○ |
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○ |
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△ |
4 |
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○ |
○ |
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△ |
5 |
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○ |
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○ |
6 |
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○ |
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○ |
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△ |
7 |
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○ |
○ |
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○ |
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△ |
8 |
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○ |
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○ |
○ |
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△ |
9 |
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○ |
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○ |
○ |
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△ |
10 |
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○ |
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○ |
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○ |
△ |
※△は任意に設置できることを意味します
※会計参与とは、取締役と共同して計算書類等を作成する会社の機関のことです。会計参与には、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人のみが就任できます。
ここで表にあげた様に、「非公開」かつ「大会社以外の会社」では10通りの機関設計があり得ます。ここでは、まず各機関について見ていくことにしましょう。
各機関
まずは皆さんもご存知、会社の基本となる取締役から見ていきましょう。
取締役
取締役とは、対内的には会社の業務を執行し、対外的には会社を代表する者です。取締役会非設置会社(表の1、2、3に当たる)において複数名取締役がいる場合、各取締役が同時に代表取締役でもあります。ただし、定款に定めることで取締役から代表取締役を選出することはできます。
それでは、取締役には誰でも就任することができるのでしょうか。
会社法では、「取締役になれない者」が定められています。
①法人、②成年被後見人・被保佐人、③会社法など一定の法律上の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者、④一定の法律以外の法令に違反し、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者、などがあたります。
ここでいう「一定の法律」というのは、会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法のうち該当する箇所を指します。この規定を見れば、未成年者でも取締役になることができることがわかります。ただし、親権者などの法定代理人の許可が必要です。
では、「一定の法律」に破産法が含まれているため、破産した者でまだ復権していない者は取締役になれないのでしょうか。実は、単に破産したからと言って、取締役に就任できないわけではありません。旧商法の規定では、破産手続開始の決定を受け復権していない者が取締りの欠格事由とされていましたが、現行の会社法では、欠格事由から外されました。
また、「非公開会社」においては、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができるため、(「公開会社」の場合はできません)そのように定めたときは、株主でなければ取締役に就任することはできません。
次回は取締役会以降の機関について見ていきたいと思います。