中小企業の代表取締役兼中小企業診断士の小松です。
サラリーをもらっていた時代と違って、開業したり会社を設立すると、保障の面で違ってくることが結構多いと思います。例えば雇用保険に入れないとか、生命保険に入りづらいとか、個人事業主の方ですと、厚生年金ではなく国民年金になるから老後の不安が・・・とか。
そんな小規模企業の経営者・個人事業主が会社を辞める時や廃業する時にお金を受け取れる退職金制度で、いざというときのセーフティネットにもなる制度があるのです。
その名を小規模企業共済と言います。運営しているのは独立行政法人・中小企業基盤整備機構(通称:中小機構)で、独立行政法人中小企業基盤整備機構法に基づき国が全額出資して設立された、中小企業の強い味方です。
小規模企業共済の特徴
さて、この小規模企業共済ですが、一言でいえば「小規模企業経営者の退職金制度」です。
具体的には、
- 掛金が毎月1,000円~70,000円の間で自由に選べて、全額所得控除の対象になる。
- 加入途中に急に事業資金等が必要となった場合、共済契約者は、払い込んだ掛金合計額の範囲内で、事業資金などの貸付け(担保・保証人不要)が受けられる。
- 個人事業を廃業したり、会社等の役員を退任した場合などに、事由に応じて共済金(解約手当金)が支払われる。
- 共済金(準共済金)を一括で受け取る場合は退職所得扱いに、分割で受け取る場合は公的年金等の雑所得扱いになる。
- 共済金・解約手当金の受給権は、国税等滞納の差押え以外は差押禁止債権として保護される。
といった特徴があります。
1と4は税制面でダブルに有利ですね。かけたお金は将来共済金として返ってくるのに、毎年の掛金は費用扱いができます。さらに受け取る際の税金も優遇されています。
2の共済金の受取方法には、①一括、②分割(10年、15年)、③一括と分割の併用、という3種類があり、老後のライフプランにあわせて自由に選ぶことができます。
分割の場合、2か月に1度の支給となるのですが、その支払月は1月、3月、5月、7月、9月、11月と奇数月。公的年金が偶数月に2か月分振り込まれるので、公的年金のカバーになります。
また、万が一事業が立ちいかなくなる事態になっても、小規模企業共済は差押え禁止ですので(上記5)、いざというときにもセーフティネットとして機能します。
加入できる方
加入できるのは、
- 製造業等、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員や常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
- 上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
に該当する方です。くわしくは、中小企業基盤整備機構のホームページをご確認下さい。
おわりに
小規模企業共済には、平成28年3月末現在128万人が加盟しているとのことです。実は私も2年ほど前から利用を始めています。
加入は、中小機構に直接頼むという方法の他、商工会・商工会議所経由や金融機関等で受け付けてくれます。起業される際にはぜひ頭に入れておいて損はないですよ。